ITソリューション企業総覧2014Web
NEC

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09_社会インフラ/農業 ITソリューション企業編

独自の分析技術により
事故や故障の予兆を検知する
大規模プラント故障予兆監視システム


NEC

www.nec.co.jp/


 工場や発電所など大規模プラントにおける故障トラブルは、一歩間違えば大惨事にもなりかねない。このため、各施設では数多くのセンサを設置するなど、対策が講じられている。NECでは、こうしたセンサ情報からのビッグデータを分析することで、専門知識や複雑な設定がなくとも、いわゆる正常な運転状態とは異なる“いつもと違う振る舞い”を自動的に発見し、プラントの予防保全を可能とする「大規模プラント故障予兆監視システム」を開発した。

高まる故障予兆監視のニーズ

 NEC交通・公共ネットワーク事業部第三事業推進部マネージャー山本敬之氏によると「これまでプラントの診断は、設備保全をはじめ故障診断、故障履歴参照、故障率算出、早期発見への取組みが中心でした。しかし最近では、これらに加えて予兆監視に対するニーズが高まってきています」という。

 予兆監視は、現状では、多くの事前データ、すなわち圧力や温度、流量、電圧、電流などプラントデータを登録しておき、これをもとに専門家が分析して判断するというものであった。しかし、この方法は、故障が発生してからの対応であったり、過去の故障に基づく予想で、しかもそうした大量データの関連性を把握するための高い専門性が必要とされるものであった。また「今後、世代が進んでいくに従い、そうした専門知識を次の世代へ継承し、育成することも大きな課題となってきます。したがって、事故を未然に防ぐためのハードルは極めて高いといわざるをえません」と、山本氏は現状の問題点を指摘する。

 以前にこのようなことがあった。ある化学プラントにおける火災・爆発事故が発生したが、これは、事故の原因となる発端から十数時間経過後の爆発事故であったが、センサ情報の分析をし、事故の予兆を発見できれば、被害を抑えることができたかもしれなかった。NECでは、この例に限らず、予兆検知により回避できるかもしれない事故は今後も十分想定されることであり、本システムが活かせると考えている。

ユーザの既存システムに巧みに入り込める故障予兆監視システム

 山本氏は「NECはもともと、膨大なセンサデータの中から設備の健全な運用状態を自動的に定義する技術を保有していました。また、定義したデータと常時収集するセンサデータを比較・分析する技術もありました。そして、故障が発生する前の不健全な状態を、通常とは異なる“故障の予兆”として、いち早く検出可能な技術開発に漕ぎついたのです」と説明する。

 NECが開発した、故障予兆監視システムのシステム構成イメージを図1に示した。これまでのプラントのシステム環境は主に、ターゲットシステムを始めプロセスコンピュータ、そして監視制御システムから構成されていた。そして、もともとターゲットシステム(既存)である監視対象機器類に設置されていたセンサからの計測データをプロセスコンピュータが演算して、それらの結果を監視情報として利用していた。

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図1 故障予兆監視システムの構成

 

 それを、「NECの新システムでは、ターゲットシステムの計測データとプロセスコンピュータで演算されたデータを故障予兆監視システムに送り、分析した予兆に関する結果を監視画面で可視化できるようにしました。監視画面も見やすく理解しやすいインタフェースとして提供します。もう一つ、新システムにおいてお客様が享受しうるメリットは、プラントに既設されたセンサを、増設しなくても、新システムを利用可能という点です。既存センサ数のままでも、故障予兆について気が付きにくいところにまでアプローチ可能となったということです」と山本氏は強調する。

 なお、監視画面について、もう少しふれておくと、熟練技術員が、たとえば発電機の振動音や回転軸の揺れ、温度などから総合的に設備状況を確認するプロセスと同様の解析手法を導入しており、微小の変化も捉えるため、その変化推移を視覚的に確認可能だ。また、“いつもと違う状態”が発生したらアラームを発報するようになっている。

「インバリアント分析技術」が実現させる大規模プラントの故障予兆監視

 それでは、具体的にどのような故障予兆のための技術が、新システムに導入されているのであろうか。実は、NEC独自の“インバリアント分析”と呼ばれる技術が採用されているのだ。前記のように、これまでは、専門家による知識に基づいて分析されていた。ところが、インバリアント分析技術は、専門知識や複雑な設定なしに分析が可能だ。図2を参照されたい。左の図は、一目見ただけではわかりにくいが、システムからの様々なセンサデータを表している。プラントによって異なるが、たとえば発電所の場合、3500以上のセンサ及びそれらに基づくグラフがあるという。

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図2 インバリアント分析技術の仕組み

 

 インバリアント分析技術を用いると、中央の図にある毬藻のような塊に変わる。この状態は、各センサ同士の関連性を表している。つまり、塊の中の数多くの点が各センサで、線で結ばれた点すなわちセンサ同士は関連性があるということだ。センサ数が3500とすれば、3500×3499通りの関連性の総組み合わせ数が存在することになる。この時、センサ同士の関連性はなにも一つの塊の中だけとは限らず、当然隣の塊との関連性もありうる。

 この図中央が一つの通常の安定した状態を表すモデルとなり、これを故障予兆監視システムに覚えこませ、センサからの計測データがモデルと比較して“いつもと違う”状態(グラフ1本1本に閾値を設定してあり、閾値を超えてしまったら異常検知となる)になると、異常検知として自動的に監視画面で知らせてくれる。

 上記一連の流れを、わかりやすく表したものが図3だ。

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図3 インバリアント分析技術を用いた異常検知の概念

 

中国電力で行われた実証実験

 このように、新しい故障予兆監視システムは、実に膨大なセンサ情報の中から、設備の健全な運用状態、すなわちモデルを自動的に定義してくれる、という強みを備えている。また、常時収集するセンサデータとの比較や分析を可能としている。そして、故障が発生する前の不健全な状態を、通常とは異なる「故障の予兆」として、いち早く検出が可能だ。

 こうしたことをふまえて、センサデータを収集・分析し、データの通常のモデルを把握することで、異常があった時に検知可能という画期的な技術をNECは開発したのである。

 この故障予兆監視システムは、これほどインテリジェントで現場担当者にとって負担のない自動的かつ実践的な運用を行うことができるものであるが、実はそれほどパワフルなコンピュータがバックに潜んでいるわけではない。

 山本氏は「通常の汎用的なサーバで構築可能です。NECは点(センサ)と点(センサ)の関連を、極めて簡単な数式で表すことを実現しました。スーパーコンピュータなどによるシミュレーションを行えば、確かに予測値の精度は向上するでしょう。しかしそれでは一方で、演算処理時間がかかってしまいます。極力シンプルな形ですとセンサ数も増やせますし、私たちはこのシンプルさの中で、どうすれば高精度かつ演算速度を向上させうるかを追究してまいりました」とアピールする。

 NECは、故障予兆監視システムの有効性を確認するために、中国電力と共同で、島根原子力発電所で実証実験を行った。まず、2011年8月から2012年11月まで、過去の設備状態監視用センサの情報を解析し、過去の不具合事例の情報をもとに予兆の検出を行い実証することができた。また、2012年10月からは、島根原子力発電所の点検訓練用施設に、新システムを試験的に導入、様々な故障を発生させてみて、設備の故障予兆検出を実施できた。

 今後は、さらに中小型プラントや道路・橋、港湾、ビルなど、社会インフラ全体に向けて拡大を検討中だ。

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