ITソリューション企業総覧2014Web
東芝クラウド&ソリューション社

東芝クラウド&ソリューション社

07_クラウドコンピューティング/ICT基盤 ITソリューション企業編

スマートコミュニティづくりを支援する
クラウドソリューション


東芝クラウド&ソリューション社

www.toshiba.co.jp/cl/


 東芝のクラウド基盤は、エネルギーやストレージ、ヘルスケアなど3つの事業そしてICTとともに、スマートコミュニティの実現を支えている。そこでは、クラウドにおけるビッグデータ利活用を支える“集めないビッグデータ”の概念に基づく「統合ビッグデータプラットフォーム」をも生み出した。

スマートコミュニティを支えるクラウド

 東芝が目指す針路は、スマートコミュニティだ。これを支える事業が、これまでのエネルギー及びストレージに加えて新たに仲間入りしたヘルスケアの3本柱だ。これら3本柱で共通して取り組むべきものが、ICTであり、そしてクラウドである(図1)。

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図1 スマートコミュニティを支える3つの事業(ICT:Information and Communication Technology, HEMS:Home Energy Management System, BEMS:Building Energy Management System, FEMS:Factory Energy Management System, MFP:Multifunction Printer, HDD:Hard Disc Drive, SSD:Solid State Drive)

 

 だが、スマートコミュニティの実現はICTソリューションさえ整備すれば容易に実現可能なものではない。さまざまなビジネスの中で同社は、サーバやストレージ、PC、スマート端末、パッケージアプリなどを活用した個別最適なシステムやソリューションを投入してきた。近年では、インターネットやクラウドなどの進展に伴い、個別システムやソリューションどうしが互いに接近し重なるようになり、業界ソリューションへと発展してきた。さらに、これから本格的なスマートコミュニティ時代を迎えるに当たり、業界横断ソリューションのステージを迎え、各ソリューションは進化、そして業界同士が融合するスマートコミュニティが築かれていくことになる。

クラウドの事業展開とスマートコミュニティをめざす実証実験

 東芝が取り組むクラウド及びソリューション事業はどう展開されていくのか。クラウド基盤で支えられる電力・社会インフラをはじめヘルスケア、エンタープライズ、リテール、オフィス、ライフスタイル各事業分野では、多彩なソリューションで実現するアプリケーションが築かれている。これらソリューション群は東芝発のものばかりではなく、他社の各事業と連携した関連ソリューションが欠かせない。そうした企業と共にスマートコミュニティをめざしたいという東芝の強い思いがあり、クラウド基盤の門は開かれているのだ。

 その証が、神奈川県・川崎市を起点にグローバル展開をめざすスマートコミュニティ構想である。2013年10月に東芝川崎スマートコミュニティセンターをオープンし、東芝グループの関連部門が集結した。グローバルクラウド基盤上で、防災はじめエネルギー、ヘルスケア、コマースや各ビジネスソリューションを提供し、SNSや気象・交通・エネルギー・水・コマース分野などのデータを活用した市民への各サービスの提供を目指している。中でも地域住民の生活に密接するサービス環境の代表例がコマースソリューションだ。これは“Kawasaki Grand City Mall(川崎グランドシティモール)”と呼ぶ構想で、1日あたり約30万人が利用する駅周辺の巨大ショッピングモールを想定している。ここで、店舗情報やカメラ画像などのビッグデータを活用したサービスを提供したり、混雑解消や非常時の避難誘導にも活用可能としている。こうした店舗情報の一元化や地域ポイントなどの複合サービスにより街全体としてのさらなる集客力向上をめざしたい考えだ。

東芝がめざすクラウドの条件

 東芝では、汎用的なクラウドを利用したCloud TVや電子書籍、医療画像データ保管サービスなどの各種サービスを投入ずみである。当然、ここではセキュリティの強化や国の法規制対応なども配慮している。それでは、スマートミュニティを実現するクラウドは、汎用的なクラウドと特性的にどのような違いがあるのであろうか。汎用的なクラウドは、巨大なデータセンタのもと一個所で集中した形態となっているので、スケールメリットを利用して低価格なサービスを提供できる。ここでのサービスは誰が利用しても同じという単一SLA(Service Level Agreement)であり、テナント単位に分けて提供される。

 これに対してスマートコミュニティは、世界中に広域分散するし、利用者はコンシューマから企業、官公庁などに及ぶのでマルチSLAであり、したがって実現する側もコンシューマコミュニティや巨大企業、官公庁なのでマルチステークホルダに支えられる。こうした汎用的なクラウドにはみられない特性で展開していくには、複雑化するシステムへの対応を可能とする仮想化はじめ、パターン化や部品化へ対応する標準化、グローバル安定運用へ対応する自動化といった諸課題をクリアする必要がある。ここに汎用的なクラウドとの差別化を東芝では、念頭においている。

東芝のクラウド基盤を実現する上での3つの特性をどうクリアするか

 スマートコミュニティをめざす東芝のクラウドを、上記3つの特性(太字)という視点から具体的に掘り下げてみよう。

(1)広域分散

 2020年には、世界中で300億台の機器がネットワーク接続され、扱うデータ量は400億テラバイトに達するという。こうした状況では、クラウドはもはや“雲(クラウド)”の中のものだけではすまされない。

 まずは、センタからローカルあるいはエッジまでの広域サポートが不可欠となり、大量データや複雑なアプリケーションへの対応も重要だ。そこには、アプリケーションやデータの分散配置、並列分散/リアルタイム処理、高速・大容量ストレージなどの技術が求められる。そのような中でも、必要なとき必要なだけ利用したいニーズにも応えなければならない。そのためには、水平分散に加えて垂直分散の要素も関わってくる。そして広域分散に備えるために、北米はじめ欧州、中国、アジア、日本など世界5地域の東芝グローバルデータセンタを備えている。

(2)マルチSLA

 スマートコミュニティは、国や地域によってニーズや優先度が異なり、さらには変化や進化が伴う。適切なスピードやコストでの対応のためにシステムの自動配信・自動運転などの技術も伴う。また、様々なシステム形態・処理形態への対応も必要で、たとえば問合せ型やイベント型、ストリーム型の各処理、バッチ型やリアルタイム型、安定制御型の各性能、そしてアプリケーションやシステム、データについて、オープン仕様によるパターン化・部品化の推進が望まれる。さらに、対応すべきリスクや脅威の違いへの対応のためBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)や高可用性など、サステナビリティの確保も重要だ。これが、それに合わせた雲(クラウド)の形や高さもフレキシブルに対応できなければならないゆえんでもある。

(3)マルチステークホルダ

 スマートコミュニティは、共同事業により、システムを互いにつなぎながら、しかも堅牢にノウハウを守る仕組みが重要である。たとえば、システムをつなぐには、SOA/ESB(Service Oriented Architecture/Enterprise Service Bus)やオープンクラウド仕様、マーケットプレイスによる開発アセットの流通が必要となる。またノウハウを守るには、認証サービス・暗号化ライブラリなどセキュリティルールと共通サービスに加えてスマートコミュニティに対応したSOC(Security Operation Center)などが欠かせない。

“集めないビッグデータ”がもたらす「統合ビッグデータプラットフォーム」

 上記課題をふまえ、スマートコミュニティでのビッグデータ利活用を支える高速かつ大容量そしてスケーラブルなクラウドベースの処理基盤を図2に示した。とくに、図2でエンドポイント処理に注目されたい。ここに“集めないビッグデータ”という聞き慣れないコメントが付されている。これが最近、東芝が開発した注目の「統合ビッグデータプラットフォーム」だ(図3)。

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図2 ビッグデータの利活用を支える高速・大容量・スケーラブル処理基盤

 

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図3 集めないビッグデータ「統合ビッグデータプラットフォーム」

 

 “集めないビッグデータ”とは何か。これまで、ネットワーク関連/クラウド関連の各ベンダは、ビッグデータをすべてクラウド側データベースに集め分析・処理するという取組みであった。これを限りなく続けていくと、データベースは膨大にふくれ上がり、かつネットワークにも大きな負荷がかかって、結局システム全体のパフォーマンスに支障を来たしてしまう。

 そこで、東芝ではまず、センサからの膨大なデータを現場で集約し判断した後、クラウドに送るのである。この結果、クラウドのストレージ容量やネットワークに対する負荷も著しく軽減され、さらに成形されて送り込まれたデータによって、効率的な分析が可能となり、相関分析や原因分析から、検知ルールを生成できる。この検知ルールを現場側に設定することでクラウドと連携した協調分散型の仕組みを実現する。これにより、すばやい検知ときめ細かなアクションを実行、“集めない”ことによる、さらに高品質なアクションを速やかに起こせるのだ。

 実際には、例えば異常発生時のデータのみをリアルタイムでクラウドに送ったり、現場のデバイスに保存したデータをクラウド側で必要な時に圧縮送信する。そのためには、クラウドの一歩手前にインテリジェント性をもたせて、高速かつ高精度な検知及び判断を実現させる。「統合ビッグデータプラットフォーム」は、即時性が必要な処理と、蓄積されたデータからの総合的判断が必要な処理をトータルで実現し、ビッグデータの活用範囲を広げてくれることになる。

 なお、このようなプラットフォームでのソリューションは、横浜市、フランスのリヨン市など国内外におけるスマートコミュニティ実証実験に採用されている。

 

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