ITソリューション企業総覧2014Web
アレイ・ネットワークス

アレイ・ネットワークス

05_ネットワーク・通信 ITソリューション企業編

機能性とコスト面のバランスに優れたアプリケーション・デリバリ・コントローラ(ADC)の利用価値を訴求して存在感を高める


アレイ・ネットワークス

www.arraynetworks.co.jp


 いつでも、どこでも、どんな端末でも、アプリケーション(応用ソフト)を安全・快適に使用したい。このためには、通信のパフォーマンスやレスポンスを向上させ、セキュリティを強化する技術が欠かせない。これらの要求に応えるのがアプリケーション・デリバリ・コントローラ(ADC)だ。多くのメーカーがADCを成長市場ととらえて参入する中、ADCの黎明期から市場を支え続けてきたアレイ・ネットワークス(横浜市中区)は、機能性とコスト面のバランスに優れたADCを提供し、その利用価値を訴求することで、存在感を高めている。

顧客数は全世界で累計5000社以上

 アレイ・ネットワークスは2001年に米Array Networks, Inc.の日本法人として設立された。米国本社はコンピューター技術などのハイテク産業が盛んなシリコンバレーの一角に位置する米カリフォルニア州ミルピタスを拠点とし、2000年に創業。10年以上にわたってアプリケーション・デリバリ・ネットワーキング技術を開発・提供しており、現世代のADC「Array APV シリーズ」を中心に、その顧客数は全世界で累計5000社以上にのぼる。

 ADCは、いわば高機能化したロードバランサといえる。各サーバに要求を均等に配分する負荷分散機能に加えて、コンテンツの圧縮やキャッシング、プロトコルの最適化などの機能を併せ持つ(図1)。例えば、インターネットやイントラネットで提供されている各種サービスを止めない、利用者が不満を感じたり業務に遅滞や問題が生じたりしないようレスポンスを確保する、安心できるセキュリティを提供する、といったことが挙げられる。つまり、多数のサーバとネットユーザとの間に立ち、より速く、より確実で、安全に通信ができるよう交通整理する役割を担っている。

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図1 ADCの機能と役割

 

 スマートフォンやタブレットPC(携帯型情報端末)の普及で誰もが手軽にネットワークに接続できるようになる中、オンラインバンキングやオンラインショッピング、SNS(交流サイト)といったサービスの拡大でデータトラフィック(通信量)は急激に増大している。総務省の試算によると、国内のブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラフィックは2013年5月時点で毎秒約2.5テラビットと推定されている。これは前年の同じ月と比べて約30%の増加。4年前の2009年からは約倍増となっており、いかに情報量が増えているかがわかる。

 今後もクラウドサービスやモバイル機器の市場拡大が予想されるため、SSL負荷の増大や、大規模災害に備えた複数サイト間での負荷分散といった課題への対処が求められる。また、インターネット上の住所を示すインターネット・プロトコル(IP)v4アドレスの在庫が枯渇し、次世代規格「IPv6」の普及が加速していることも最先端ADCの需要を押し上げる。こうした状況を受け、サーバのサービスを適切に配信するためにはロードバランサだけの機能では不十分になる。一つの装置でロードバランサ以外にもさまざまな機能を持つADCの国内市場は年間30%の拡大が続く成長市場。アレイ・ネットワークスはクラウドや通信事業社、データセンター(DC)に対応した機能・性能の開発強化を進めてきた。

性能・機能と価格のバランスの良さ

 同社の製品の特徴は、性能・機能と価格のバランスの良さにある。

 性能面では、最上位モデルでは毎秒120ギガビットの最大スループットを誇る。これは、同社独自のコア技術である「SpeedCore」アーキテクチャ(図2)によりもたらされており、最新のハードウェアを最大限活用できる拡張性・柔軟性を備え、継続的な性能向上が図られている。

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図2 Array SpeedCoreアーキテクチャ

 

 また機能面では、サーバ負荷分散、SSL高速化、Webセキュリティ、メモリキャッシュ、コンテンツ圧縮などの機能を標準搭載しており、他社のように複数の装置を購入する必要がない。なかでも、複数のWANリンクを使い分けることが可能なリンク負荷分散(LLB)や、地理的に離れた複数拠点間でのロードバランサを実現するグローバルサーバ負荷分散(GSLB)の機能も1台で提供できる点は優位性が高いといえる。回線の遅延や、災害や障害が発生した際も安定してサービスを提供できることから、DCや通信事業者のニーズが高まっているが、一般的には専用の装置を購入しなければならなかった。

 このように、優れた性能を提供し、1台でさまざまな機能を備えるため、専用の機器を個別に導入する場合に比べて導入コストや電力消費、設備スペースなどを減らせるほか、複数機器の運用の手間やコストの大幅削減にも貢献している。しかも、製品価格では、SSLTPS(1秒間に処理することが可能なSSLトランザクション数)で割ったTPS単価は「最安」になる。コスト面で大きな優位性を持ちながら、卓越した性能と、ADCに必要な機能をほぼすべて標準搭載している。

 このようなバランスの良さこそが、多くの企業や通信事業者にとって、ADC製品の選択の際に重要なポイントとなるのではないだろうか。

多彩な提供形態

 主力製品の「APVシリーズ」はラックマウント型装置としてエントリーモデルからミドルレンジ向け、大規模環境向け、ハイエンドモデル向けまで合計8モデルを取りそろえる。最上位モデルの「APV10650」(図3)は2Uの大きさで、毎秒120ギガビットの高いスループットを実現。DCや通信事業者などのニーズに応えている。

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図3 最上位モデル「Array APV10650」

 

 従来はこうしたラックマウント型での提供が中心となっていたが、近年ではAPVシリーズの豊富なADC機能をそのまま仮想化環境で利用できるように設計した仮想アプライアンス「vAPV」の提供も始めた。サーバが非仮想化の環境や高負荷環境などではラックマウント型のAPV、負荷が変動する環境やテスト・開発環境などでは仮想アプライアンスのvAPVのように、環境に合わせた導入が想定される。さらに、マルチテナントに対応したラックマウント型装置の投入に向け、現在開発準備を進めている。2Uの大きさに複数台分のADCを仮想的に搭載。装置1台で複数の顧客に対応できるようになり、ラックスペースの節約やDCの省エネにもつながる。

4つの分野でADCの導入と利用を推進

 今後、アレイ・ネットワークスは大きく4つの分野でADCの導入と利用を推進していく。SaaS、IaaS、SSL、業務アプリケーションだ。IaaSについては、新たに追加するマルチテナント対応アプライアンス(図4)を導入すればコスト削減の効果が大きく、高い優位性を発揮できる市場になりそうだ。また、従来から高い導入実績を誇るSSLでは、クライアント証明書認証で競合他社の10倍を実現する特許技術などを生かし、引き続き需要を取り込んでいく。

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図4 マルチテナント対応アプライアンスの概念図

 

 受注獲得に向けて、パートナーとの協業の強化にも取り組む。具体的にはクラウドサービスプロバイダといった通信事業者との協業に力を入れていく。同社はもともと代理店を通した販売網を敷いているが、こうした状況でも顧客の要望をいち早くくみ取り、機能や改良といった具体的な形で反映していくといったきめ細かい対応を心がけてきた。同社は、これからも引き続きサポート体制の充実を図り、性能の向上を追求していくためにも、顧客とのコミュニケーションを密にし、顧客でもあるパートナーと一緒に成長していく。

 また、差別化を訴求するマーケティング活動を強化していくために、およそその価格帯では実現し得ないような、エンタープライズ~クラウドクラスの機能や性能と、その利用価値をこれまで以上に追求していく。顧客に売り込む際に、これまで他社と比べた優位性のアピールが十分だったとは言えない。このため、今後は製品の価格性能比や価格機能比などのコストパフォーマンスだけでなく、利用価値の高さを積極的に打ち出していき、同社のポジショニングを明確にしていく構えだ。

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 スマートフォンなど高機能なモバイル端末の普及でデータトラフィックが急増する中、ADC市場の成長は今後も右肩上がりが期待される。だが、同時に競争が厳しい分野でもある。他社の機能向上やコスト競争力の強化は避けられない。今後は、同社独自の付加価値をつけたバリューを出し、顧客の立場でニーズをきめ細かくくみ取る姿勢を貫くことで、いち早い開発を継続し、市場での存在感を高めていく。

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