ITソリューション企業総覧2014Web
インタビュー 日本アイ・ビー・エム 湯本敏久氏

インタビュー 日本アイ・ビー・エム 湯本敏久氏

特集 特集2 IT利活用が創出するビジネス新潮流

ビッグデータ本格利活用時代と
操り師「アナリティクス」


日本アイ・ビー・エム マーケティング・マネージャー 湯本敏久氏に聞く

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日本アイ・ビー・エム
www.ibm.com/

聞き手:ITソリューション編集部


 企業のビジネス展開上、蓄積されたデータとそのアナリティクス(分析)は、いまでこそビッグデータ本格利活用時代においてキーソリューションになるが、これら二つは、歴史的にも早くから取り組まれてきたものだという。

 顧客と企業との関係において、データとアナリティクスは、使われる技術がいかに高度になっても、“顧客理解の重要な手段”として利用されることに変わりはない。

 ここでは、日本アイ・ビー・エムソフトウェア事業インフォメーションマネジメント事業部マーケティング・マネージャー湯本敏久氏にビッグデータとそのアナリティクスについての実情を聞いた。

顧客と企業の接点におけるデジタル技術が加速させたビッグデータとアナリティクス

 いま、ビッグデータと並んでアナリティクスに企業の大きな関心が集まっている。

 しかし、「この二つのトレンドワードは今に始まったことではないのです」と湯本氏はいう。確かに企業は、すでに数十年前からDMS(Data Management System:データ管理システム)やDSS(Decision Support System:意思決定支援システム)、SIS(Strategic Information System:戦略情報システム)などに取り組み、この頃から企業が、たゆまぬ努力のもと蓄積してきた多くのデータを駆使してビジネスにいかそうと尽力してきた。そしてこれら取組みは、「企業が、ただただ顧客をより理解したい一心から行ってきたことであり、最近のビッグデータやアナリティクスも実は、この延長上にあるのです」という。

 湯本氏は「とくに、最近は顧客と企業との接点である取引においてデジタル化が進んできて、企業は取引前の行動も含め顧客情報をデジタル情報として入手可能になりました。このデジタル化のおかげでデータ量はめざましく増大しました。同時にデータの種類も多様化し、データ入手の頻度まで短縮化されてきています」と昨今の異常とまでいえるデータの変貌ぶりを指摘する。

 そうなると、こうして生まれたビッグデータを今後どう活用するのかが重要なポイントとなる。

構造化データと非構造化データの出会いがもたらした顧客のさらなる理解

 昨今、データ量が増えたためにアナリティクスによって状況を理解できるレベルは飛躍的に向上したといえる。だが、忘れてならないのはデータの多様化だ。湯本氏は「これまでの企業における顧客データは保管しやすく整備された構造化データでした。ところが最近では、Webサイトを何時何分にクリックして希望の商品を購入する、などに関連したデータも加わってきました。またFacebookやツィッターなどこれまでになかったソーシャルデータや、さらには車のセンサなど機械が生み出すデータなどまで、デジタル化によって入手しやすくなってきました。従来の顧客データに、こうした非構造化データを統合化させて新たに起こることは、格段に深く顧客や潜在顧客を理解可能な環境が誕生するということなのです」と、企業にとってより大きなビジネスチャンスをつかめるキッカケやヒントが出てきた新たなステージを説明する。

 ビッグデータ創世記の頃は、構造化及び非構造化データの統合で生まれた膨大なデジタルデータを、本当にビジネスに利活用可能すべきか否かが、アナリティクスのいわば分水嶺ともいえた。しかし、そのような思慮の時期は過ぎ去った。すなわち、利活用しなければ始まらない時代なのである。これは、まさに企業間競争に勝てるか否かを占うものでもある。「ですが、顧客を理解する手段でなければ、到底ビジネスにはいかせません」と湯本氏は念を押す。ここに本格的なビッグデータ利活用時代におけるアナリティクスがみせるデータの“操り師”たるゆえんがあるのだ。

データアナリティクスの仕組み

 アナリティクスにおける仕組みを見てみよう(図1)。湯本氏は「ビッグデータに関わる諸技術は、一つの技術だけの対策で何かが変わることはありません。様々な処理プロセスの中で、その目的に応じて複数の最適な技術を組み合わせることが重要です」という。

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図1 IBMのビッグデータアーキテクチャ(提供:IBM)

 

 たとえば企業が取引を行うと、業務系システムに関するデータが蓄積される。しかし取引が進む中、潜在顧客は、WebやSNSを通じて評判等を調べにいくかもしれない。コールセンターを利用するかもしれない。そうすると、そこに業務系システムの構造化データに加えて、WebやSNSによる非構造化データも加わり、実に多種類の「データソース」が発生し、「データ取込エリア」に取り込まれていく。

 取り込まれたデータソースのうち、とくに非構造化データ部分には、現顧客のデータが含まれているかもしれない。そこで、さまざまなデータの整理や統合が必要だ。だがいまのコンピュータでは、それら構造化・非構造化データを統合するのは簡単なことではない。したがって分析しなければならないが、それにはデータを加工して取り込んだり統合化を行う技術が必要になる。IBMでは、その関連製品に「InfoSphere Information Server」を用意している。これはデータ発生源まで確認できる。すなわち、アナリティクスの下ごしらえを行うのだ。

 これと並行して、やってくるデータを取り込まずに流すのみ、ということも行う。たとえば、機械に関わるデータは、稼働中データを発生し続けている。これらデータは蓄えないで、流しながら分析するのである。機械に付いたセンサで、過去のデータから、ある種の振動波形が発生すると故障するというナレッジを把握しておくとする。モニタリングでこの振動波形を検知して機械を止めるという予防策もとれるのだ。近いものでは、気象・地震データがありリアルタイムアナリティクスとして注目されているが、IBMでは「InfoSphere Streams」と呼ぶソリューションを用意している。

 さらにビッグデータはあまりにデータ量及び種類ともに膨大なので、まずはアーカイブするエリアが必要になる。しかし、単に保存だけではなく、簡単に分析かつ集計可能な機能も望ましい。企業によっては、1~2ペタバイト保存する場合もある。あくまで使うための保存であり、そうした向きにHadoopが利用される。Hadoopは構造化・非構造化データともに扱えるメリットをもつ。

 そしてより高度分析かつ探索が必要なデータのためにデータウエアハウスのエリアも用意されている。統計解析や予測分析、データマイニングなどを行う。IBMの「PureData System for Analytics(Netezza)」はこのエリアの代表的なソリューションだ。

ビッグデータとアナリティクス成功のカギはまずは自社業務の理解から

 湯本氏は「ビッグデータとアナリティクスの推進には、デ-タと技術のみで実現するというものではありません。これら以外に重要な要素があります。それは、ビッグデータやアナリティクス文化の認識や理解、スキルなどヒューマンウェアの部分なのです。それは、企業トップの理解力がきわめて重要です」と、肝の部分を強調する。

 もう一つ、「いまデータサイエンティストがもてはやされています。アナリティクスでは統計解析や方法論も重要ですが、自社ビジネスや業務の理解、そして課題の把握がもっと重要なのです。こうした条件をクリアして初めて、アナリティクスは有効なのです。この点を見落としますと、アナリティクス実現はとても厳しいでしょう」とアドバイスする。

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