ITソリューション企業総覧2014Web
インタビュー システムサポート 小清水良次氏

インタビュー システムサポート 小清水良次氏

特集 特集2 IT利活用が創出するビジネス新潮流

地方都市からシリコンバレーへ
~国境を越えて羽ばたく独立系ITベンダー~


システムサポート 代表取締役社長 小清水良次氏に聞く

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システムサポート
www.sts-inc.co.jp/

聞き手:ITソリューション編集部


 地元「金沢から世界に発信したい」という一心で、会社創設時から独立系ITベンダーの起業スピリットを持ち続け邁進するソフト企業がある。石川県金沢市に拠点を構えるシステムサポート(STS)だ。同社は、いわば日本の中堅・中小企業では珍しくない大手メーカーの下請け的ビジネスに、決して依存しないという強みを武器にビジネス展開し、売上げ2桁成長を堅持。最近、米国シリコンバレーにも子会社を設立させた。

組織崩壊の危機を乗り越えた独立系のスピリット

 「1980年、会社設立当初の入社時は、収入面ではきわめて厳しかった反面、仕事は非常に面白く、いずれ組織を自分で運営したいと思っていました」と、代表取締役社長の小清水良次氏は述懐する。同社の代表取締役社長に就任したのが1994年、そのとき会社はとても安泰とはいえず小清水氏は、会社再建計画の重責を負う羽目になった。とにかく「累積損失を5年以内に解消させねばならない」との必死の思いで再建に邁進した。

 実は、日本のIT業界はメーカー系の強さが顕著だ。そんな中でもベンチャー系は数多く誕生、だが結果は、メーカー系が強いために多くのベンチャーが、下請け的役割のビジネスを続けざるをえない状況が続いてきた。小清水氏は、そんな状況から脱却した形態でのビジネスにこだわり続けていたのである。

 「昨今、メーカーも経営環境の厳しさの煽りを受けて様々な経営統合などを余儀なくされていますし、顧客(ユーザー)もより自らの環境に最適化されたシステム構築・運営をめざすため、従来のように単にメーカー系にはこだわらずに、自社向きのハードやソフトを選択するようになってきたのです。こうした情勢変化も追い風となって、いま当社は2桁成長を維持できるようになりました」と、会社再建の成就を語る(図1)。

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図1 システムサポートグループの売上高推移

 

ビジネスの成功、すべての源泉は3つの経営理念にあり

 会社再建が成就し黒字転換したとき、小清水氏は今後の会社の行く末を見据えた針路を明確にするためには、経営理念の必要性に気づいたという。「いまシステムサポートのビジネスは、3つの重要な経営理念に支えられています」という。

 第一が、“社会への貢献”で、コンピュータシステムによる情報技術の推進を通して、豊かな社会発展に貢献することだ。具体的には「地元へ貢献できる雇用創出と、いかに多額の税金を納められるかです」という。「ふつう企業は税金納入の抑制に知恵をしぼるでしょう。当社は赤字からのスタートでしたから、いかに企業が繁栄し多くの利益を創出しているかを世間にアピールする必要がありました。それが税金を納めることなのですよ」とサラリ。

 第二が、“顧客サービスの向上”で、顧客ニーズにすばやく対応し、ベストソリューションの提供及びサービス向上を通して、顧客との間に信頼関係を築くというものだ。「だからこそ下請け的でなく、顧客との直接やりとりで顧客満足度を高め、直接の仕事を増やさなければなりません。これで顧客満足度を当社社員も体感でき、働きがいも生まれます」。

 たとえば、顧客がSIerにシステム構築を発注するとする。しかし発注自体にもかなりのスキルを要する。そこでSTSでは、顧客サイドにそこの社員と同等な役割をもって常駐し、無事システム構築にこぎ着けたケースがある。これは、いま同社がめざす顧客目線でのビジネスであり、今後の主力ビジネスに位置づけられるものだ。まさに、“システムサポート”というその社名を彷彿させるではないか。

 そして第三が、“価値の共有”で、株主と価値を分かち合いながら社員の能力を十二分に発揮可能な環境と幸福で豊かなライフステージの創出に努めるというものだ。IT業界は、その人の技術力やノウハウがすべての決め手であり、市場価値に基づく評価となる。したがって、評価があればどこの企業でも働けるはずだ。それだけに、STSでは、社員がいかに楽しく有意義に働けるか、結果、ここで幸せな人生をおくれるか、を重視している。

成長続ける独立系ソフト企業のビジネス

 STSの具体的な事業を紹介しておこう。同社は、金沢市に本社オフィスとアウトソーシングセンターを構え、東京及び名古屋、大阪にオフィスを擁する。事業概要は、システムインテグレーションが主で、コンサルティングから企画・開発・構築、運用・保守、教育まで、ICTを通じて顧客ビジネスを支援する。図2は、ソリューションプロダクト別でみたSTSの売上げ比率だ。システムインテグレーションなど、同社の強みが如実に現れていることがうかがえる。小清水氏は「実は今後さらなる成長を遂げるために3カ年計画をたてました。その大きな柱は5年かけて100億円企業に到達することです」と抱負を語る。

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図2 ソリューションプロダクト別の売上げ比率
注)各ソリューションプロダクト項目は図右上から時計回りに対応。

 

 こうした計画の礎になるのが、“連邦経営”であり、“いいね!やってみまっし制度”と呼ばれるユニークな取組みだ。


 前者は、いわゆる事業部制のことで、基本的に各事業部は一つの会社扱いであり、事業部長が社長のマネジメントを行い、新ビジネスにチャレンジする。もちろん各事業部における社員の給料等まで決定する権限をもつ。

 しかし、一事業部内にとどまらず全社あげての大規模なプロジェクトの場合は後者が活躍する。この“やってみまっし”は金沢の方言で、社員がビジネスコンセプトを考え提案・実行できる制度だ。小清水氏は「当社2桁成長の背景には、冒頭にふれた内容のほか、もう一つ重要な要素があります。それは、これまで入社してきた優秀な社員みずからがビジネスを創出、売上げに貢献してきた点です。もちろん失敗もありますが、総合的には会社成長に大きく寄与しています」とアピールする。

 また、“いいね!やってみまっし制度”から誕生した組織が、東京支社設置の大学事業開発室だ。これは、国から与えられる命題に対し、体力がない大学に対しては、この新組織が支援解決するというサービスを行う。

これからの注力分野は3つ

 STSの注力分野は次の3つだ。

 第一が、オリジナルプロダクト。具体的には、「建て役者○R」と呼ぶ建設業界向け工事情報管理システムがあり、日本全国200社以上(OEM込み)で導入済みである。最近では学校や流通業など建設業界以外にも形を変えて導入が進みつつある。また「クラウド工房powered by AWS○R」はアマゾンとのパートナープログラム契約に基づきクラウドコンサルティングや運用支援ほか7つのサービスを提供する。

 第二が、オラクルのデータベースにおける技術力や豊富なノウハウだ。STSは、オラクル製品のハイレベルな技術者育成に貢献したパートナー企業を表彰するORACLE Certification Award各部門でここ数年上位入賞している。STSではこのORACLE MASTER Platinum保持者による無料セミナーを、社会貢献のために、東京支社にて開催している。

 第三が、産学官連携だ。これは、STSが東京大学先端研究所及び石川県産業創出支援機構と連携してゲノム情報データ解析システムのクラウド環境における導入・運用サービス事業化を調査するため共同研究を行っているというものである。

 また海外含めて5つの関連会社をもつ。注目すべきは売上高推移だ(図1参照)。図1では1996年から記載してあるが、1994年から年率20%の成長を遂げ、この間子会社を設立させた。2008年及び2009年にはリーマンショックの影響があったが、2010年から再び2桁成長のペースに返り咲きここでも子会社を追加した。

地元金沢から世界に発信するためシリコンバレーに子会社を設立

 小清水氏の地元金沢は、人口の割にIT関連企業が占める比率はきわめて高い。現在約120社あり、起業するケースが多い割に、顕著に成長を遂げるケースは少ないが、撤退するわけでもない。やはり、大手メーカー系が強いのだ。ここに小清水氏の独立系スピリットは燃える。小清水氏はなにが起ころうと、金沢を捨てる気は毛頭ない。やはり、この地でしっかり踏ん張り、日本中にそして世界に発信することにこだわりをもち続ける。こうしたことから2013年10月、シリコンバレー、すなわち米国カリフォルニア州サンタクララに、STS Innovation, Incを設立、営業を開始した(写真1)。ここでは、とくに最新ICTの技術動向及び市場動向リサーチ並びに、ターゲットを日系企業にフォーカスしたコンサルティングやシステムインテグレーション、アウトソーシングなどのITサービス提供を行い、OUT―IN、IN―OUT、OUT―OUTの3本柱に基づいたビジネス展開をめざす。OUT―INとは、米国のサービスを日本の顧客に提供し、IN―OUTは日本のサービスを米国に提供、そしてOUT―OUTは米国のサービスを米国の顧客へ提供することだ。いま、社員の中から現地での業務に就きたい希望者をスタッフとして募っているところだ。

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写真1 シリコンバレーで稼働を始めたSTSInnovation, Inc.

 

 「当面は、日系企業のIT化を支援します。ビジネス地域はシリコンバレーを中心に、やがてはニューヨークやロスアンゼルスに広げ、同地域の顧客ニーズにあわせアジア地域にも徐々に広げていきたいですね」と小清水氏はいう。こうした海外に向けた発信は、確かにシリコンバレーでは、アップルなりグーグルといったベンダーたちが牛耳っているが、日本の独立系ITベンダーだからこそ自由になせる技もある。「いまプロ野球も、IT企業が球団経営をしていたりしていますね。しかしこれらの企業は意外に知られていません。このように、メーカーにはこだわらない独立系ベンチャーの日本及び海外に向けた進出はもっと増えてきそうです」と期待する。

まずは一つだけ強みをもつこと、そして目標を思い続けること

 独立系ベンダーにむけて、小清水氏は「まずは強みをもつことが肝要です。当社はオラクル関連の資格で、全国1位など上位を獲得できました。これは強みと確信しています。これは、技術力や人材、資格、コンテンツでも構いません」という。さらに「人は自らの目標は、常に思い続け連続思考しておくことが大切です。思い続けていないと、突然、千載一遇のチャンスが訪れても見逃してしまいます」と、実体験からきわめて貴重なアドバイスをする。

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