ITソリューション企業総覧2015Web
NTT東日本

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09_電子政府・自治体 ITソリューション企業編

 

“回復力(レジリエンス)”とこれからの災害対策
「被災者生活再建支援システム」


NTT東日本

www.ntt-east.co.jp/


“予防”から“回復力(レジリエンス)”へ

 過去の災害を教訓とした耐震設計基準の強化等に見られるように、災害時に被害を発生させない、あるいは、被害を軽減させる“予防”の災害対策は、これまでも各所で積極的に取り組まれてきた。一方、最近の災害に関するニュース等では“想定外”という言葉とともに、深刻な被害の様子を目にする機会も多い。想定外を想定すべきという厳しい声もあるが、相手は自然の脅威である。災害に対して完璧な予防的措置を講じることは、現実には非常に難しい。

 そこで注目されているのが“回復力(レジリエンス)”の災害対策だ。災害時に被害が発生しても速やかに元の状態へと戻すことを目指すものであるが、これに関しては自治体が果たす役割が大きい。生活基盤を失った住民が生活再建へと向かうには、自治体によるり災証明の発行と被災者台帳の整備・活用が欠かせない。

 り災証明によって、被害を受けた住民は正式に被災者として認められ、義援金・税の減免・仮設住宅等の支援を受ける。被災者台帳によって、自治体は被災者や支援の状況等を記録・活用し、効率的に支援する。その先に復興が見えてくるのだ。

 災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成25年6月21日公布・施行)でも、自治体による速やかなり災証明の発行が義務付けられ、被災者台帳の整備・活用による効率的な支援も正式に推奨されることとなった。現在の日本における災害対策は“防災・減災”だけではなく“復興・被災者生活再建”にも比重を置くよう方向転換しつつある。被災者生活再建支援業務の整備を図るといった、“回復力(レジリエンス)”の観点から災害に備える体制作りが、いま、全国の自治体に求められているのだ。

 

公正公平で迅速な被災者生活再建支援業務

 自治体による被災者生活再建支援は、公正公平かつ迅速に提供することが重要だ。2つのうち一方でも欠いてしまうと、住民の不安と不満が膨らみ、自治体に対する厳しい評価にもつながる。しかしながら、過去に大規模災害を経験した自治体は、業務の各段階で大きな課題を抱えていた。

 NTT東日本が提供する「被災者生活再建支援システム(以下、本システム)」は、京都大学と新潟大学をはじめとする研究者チームの被災地における研究成果を基に開発・製品化されている。災害対応の第一線での実証により実現されたのは、現場の実態に即して設計された以下の4つのサブシステムと、それらを支える被災者生活再建支援業務全体のマネジメントだ。

 これらの全てを含む本システムは、被災地の自治体が抱える課題に対抗する強力な打ち手となる(図1)。

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図1 被災者生活再建支援業務の流れとボトルネック

 

(1)建物被害認定調査

 膨大な調査量に加え、調査員の実務経験により判定結果にばらつきを生じやすい点が課題となる。本システムではフローチャート化した建物被害調査票等により、専門知識の無い職員でも公正な建物被害認定調査をできるように調査手順や調査員の訓練が標準化されている。

(2)調査票自動データ化

 膨大な調査結果のデジタルデータ化に要する莫大な時間と費用が課題となる。本システムでは、調査票に記された文字や位置情報を自動的に読み取ってデジタルデータ化することで調査業務の情報処理を飛躍的に効率化できる。

(3)り災証明発行

 それぞれが個別に管理されている住民基本台帳・家屋課税台帳・被害認定調査データの照合に要する膨大な時間が課題となる。本システムでは位置情報を共通のキーにして各データの連携をはかり、住民と職員が窓口での対話を通じて合意形成することで、り災証明発行業務を大幅に効率化できる。また、窓口に来た住民の快適性確保を目指した職員対応・空間配置等のノウハウも提供している。

(4)被災者台帳

 支援を受けられるはずの被災者を漏れなく支援することが課題となる。本システムでは被災者支援の状況を一元的に管理し、支援が行き届いていない被災者を積極的に見つけ出すことで、自治体からアプローチを行う“攻めの被災者支援”が可能となる。

 

被災地における実績

 被災地における活用実績は本システムの特徴の1つである。近年の事例としてまず紹介すべきなのは、平成25年10月の台風26号による大島町(東京都)の水害だ(図2)。

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図2 被害の様子:大島町(東京都)

 

 災害直後の混乱の中、障壁となったのは被害の調査だった。土砂崩れによる甚大な被害が出た地区のほかにも島の各地に被災家屋が点在しており、短期間に全てを調査するには、自らも被災していた現地職員だけではあまりにも人員が不足していたため、他自治体からも応援職員が駆けつけた。

 本システムは東京都に推奨されており、都内の自治体には本システムに習熟する職員も多い。駆けつけた応援職員の中には本システムを初めて使う職員もいたが、簡易な調査手法等により、短時間の講習で調査を行えるようになった。応援職員の派遣や受け入れをスムーズに行える点は、本システムが強みとするところである。

 およそ3週間にわたる840戸以上の調査を終え、り災証明発行が開始された。通常、初日は窓口の混雑が予想されるが、それに加えて大島町では、遠方に住む家屋所有者が週末に集中することによる混雑も予想されていた。その点でも、会場内の空間配置等といった円滑な運営につながるノウハウを盛り込んだ本システムは有効だった。

 今まで経験したことのないような災害から約1ヶ月で、大島町は本格的に被災者生活再建支援をスタートさせることに成功したのである。

 翌年夏には、平成26年8月豪雨による水害が広島市(広島県)や福知山市(京都府)等をはじめとする地域を襲った。この時、本システムは大島町等でのノウハウを反映した本格的な水害対応を実装しており、福知山市でも活用されることとなった。

 ここでも本システムの有用性が立証された。福知山市の被害は広範囲に及んでおり、2500戸にも上る家屋が浸水等の被害を受けていたが、8月15日の災害発生以降、警報が解除された翌日の8月19日には建物被害認定調査が始まるという迅速な対応に続き、9月3日にはり災証明の発行が開始された。災害が起きてから約3週間弱という短期間で、り災証明の発行まで漕ぎ着けたのである。

 災害発生からり災証明発行までに要する時間の、これ程の大幅な短縮に成功した意義は大きい。実運用を通じて本システムの強みに更なる磨きがかかることで、一連の被災者生活再建支援業務を更に飛躍的に効率化することが可能だと、改めて裏付けたのである。

 

“進化する”システム

 研究者チームは被災地支援等を通じて現在も継続的に研究を重ねており、今後得られる新たな研究成果もバージョンアップにより随時本システムへ反映する意向だ。これは本システムの最大の特徴でもある。

 バージョンアップのメリットは研究成果の反映だけではない。法改正等により、全国の自治体で共通的に対策が求められる場合にも有効だ。本システムを導入することで、災害対策基本法に定められた各種被災者生活再建支援業務の標準化を実現できるのである。

 平成26年度には、これまでのクライアントサーバ型に加え、人口15万人未満の自治体をメインユーザ層とするクラウドサービス「Bizひかりクラウド被災者生活再建支援システム」がリリースされた。人口規模に合わせた料金体系で導入しやすく、システム運用や資産管理等のICTマネジメント負荷も軽減できる。総合行政ネットワーク(LGWAN)を利用したセキュアなサービスだ。

 また、同年度秋には、クラウドサービスを含む本システムが、実務に即した機能・被災地での実績・社会貢献度の高さ等を評価され、グッドデザイン賞を受賞した(図3)。

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図3 Gマーク

 

 今後もNTT東日本は、他に類の無い“進化する”「被災者生活再建支援システム」で災害に負けない街づくりを強力にサポートし、日本の“回復力(レジリエンス)”強化に寄与していく。

 

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