ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 神長 慎マネージャー

インタビュー/フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 神長 慎マネージャー

特集 特集2 社会生活から国家施策までを支援するICTソリューション

IoT本格期に向け活発化する
ワイヤレス給電ソリューション


フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 神長 慎マネージャーに聞く

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聞き手:ITソリューション編集部


 ワイヤレス給電は、着実に浸透しつつある。スマートフォンやタブレット用、車載用など、コードレス充電で使われている。普及はさらに本格化し、ウェアラブル機器用やディスプレイオーディオなど、IoT時代に向け新たな利活用が期待されそうだ。

 ここでは、関連ソリューションを投入するフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン マイクロコントローラグループ ビジネス・デベロップメント マーケティング 担当マネージャー 神長 慎氏に最新動向を聞いた。

 

スマートフォンやウェアラブル機器普及とともに
IoT本格期に支援するワイヤレス給電

 ワイヤレス給電の普及は、身近ではスマートフォンや車載用などがある。その他、タブレットやPC、ポットやミキサなど台所用品そして産業機器などへも対応が期待されており、米国ではかなりの浸透ぶりという。

 ワールドワイドにおけるワイヤレス給電用機器の普及は、2013年2600万ユニットに対して2014年4600万ユニット、そして2020年には10億7000万ユニットまでの急成長が見込まれる。一方、給電器(トランスミッタ)と受電器(レシーバ)との比率は2020年には2対5の割合と予測されている。

 

ワイヤレス給電の仕組みと標準化

(1)ワイヤレス給電の仕組み

 ワイヤレス給電の仕組みは電磁誘導および磁界共鳴の2方式に分けられる (図1)。

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図1 ワイヤレス給電の代表的な2方式

 電磁誘導方式は片方のコイルに電源を接続して給電側(送信側)とし、もう一方のコイルを受電側(受信側)とする。そして、給電側に交流電流を流すと磁束が発生、受電側コイルにも磁束が誘導発生し起電するというものだ。この方式は、送・受電側システムを接触させて給電する。一方、磁界共鳴方式は、給電側のコイルに交流電流を流すとその周波数に応じて磁場が振動し、受電側コイルにもいわゆる共振の原理でその振動が伝搬して電気が流れる。この方式では、送・受電側はある程度距離をおいても給電できる。

 具体的な給電電力でいうと、スマートフォン5W、タブレット10~15W、ウェアラブルが1W、PCが30Wなどとなっており、その給電効率は約80%弱となっている。

(2)ワイヤレス給電の標準化

 これら代表的な2方式に関係して、ワイヤレス給電の標準化は、次のような3つの大きな団体で取り組まれている。

 第一の団体が「WPC」(Wireless Power Consortium)と呼ばれ、給電方式は電磁誘導および磁界共鳴の2方式を対象としている。参画メンバには、レギュラーメンバのフリースケールをはじめ、ボードメンバであるマイクロソフトやサムソン、そしてクアルコムなど合計200社以上の顔ぶれだ。とくにフリースケールは、仕様策定にも参画している。給電電力は120Wまでのスケーラビリティをもつ。

 第二は、「A4WP」(Alliance for Wireless Power)と呼ぶ団体で、給電方式は磁界共鳴方式を対象としている。クアルコムおよびサムソンらによって設立され、インテルも加わり、メンバ数は130社となっている。設立以来、2年になろうとしているが、まだ製品は市場に投入されていない。そして第三が、「PMA」(Power Matters Alliance)と呼ぶ団体で、給電方式は電磁誘導法式および磁界共鳴方式が対象だ。約70社のメンバを抱えるが、フリースケールやサムソンも入っている。最近、上記A4WPとPMAは統合する見込みという発表もなされ今後が注目される。

 なお、上記3団体規格のうち、WPCとPMA仕様の製品はすでに市場投入されている。とくに、WPCには、「WPC Qi(チー)」という規格があるが、このロゴが付いた製品であれば、メーカは異なっても互換性が維持されている。WPC Qiには200社以上が参加しており、11%が日本企業である。具体的には、Google Nexus 6で採用されており、自動車メーカ(トヨタ、ホンダ、クライスラー、アウディ、ダイムラ)も採用、すでに約600の対応製品が投入済みという。今後WPC Qiは、新しいコイルタイプ採用による送信タイプの追加や磁界共鳴方式への拡張仕様の策定、そして15W仕様への拡張として高速充電、さまざまな機器への対応拡張、5Wとの上位互換など、仕様のアップデートに取り組んでいる。

ワイヤレス給電の具体的なソリューション製品

 ワイヤレス給電に向けたソリューションはフリースケールの場合、送信機制御に適した高性能コアと周辺機能などハードウェアをはじめ、ワイヤレス給電用ファームウェアやワイヤレス給電用パラメータのプログラム可能なソフトウェア、そして量産への移行が可能かつ最小限設定およびカスタマイズで開発可能なリファレンスデザインなど3分野で開発に取り組んでいる。とくに、リファレンスデザインは、一般には「部品も変更せずこの通りに作るとよい」という形式がとられるが、フリースケールの場合は、開発環境やカスタマイズのためのプログラミング環境なども用意し、自由なデザインを可能としている。この点が競合とは異なる強みとしているところだ。

 最近のホットな話題は、コンシューマ向け15Wシングル・トランスミッタであろう。仕様策定中のWPC―Qi medium powerに準拠し、双方向通信が可能である。高速充電や高容量電池に対応し高機能スマートフォンやタブレット向けとなっている。目下、15Wクラス製品は同社のみが発表している(写真1)。

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写真1 15Wワイヤレス給電用リファレンスボード。
下が送信システム(トランスミッタ用)で上2つが受信システム

今後期待されるワイヤレス給電の利活用分野

 今後期待されるワイヤレス給電は、前記の車載用にますます期待が高まる。実は、車の中でスマートフォンにワイヤレス給電する車種は既に投入されているが、将来的に期待されるのは、スマートフォンと連携したディスプレイオーディオと呼ばれる分野だ(図2)。

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図2 車載用ディスプレイオーディオの仕組み

 すなわち、車専用ナビにこだわらず、スマートフォンのカーナビ機能をディスプレイオーディオに送り、その映像ファイルを再生して利活用しようというものだ。通常マイクロUSBのような専用ケーブルを使用してスマートフォンの映像をディスプレイに映し出せるよう接続できるが、それだと車のような振動が多い環境では故障しやすくなる。そこで振動にも耐えうるWi―Fiでスマートフォンとディスプレイ間を接続して、かつワイヤレス給電を利用してスマートフォンに給電しつつ、スマートフォンからのナビ映像やラジオ、オーディオなどを快適なカーライフの手段として取り込もうというものだ。今後、車メーカも採用していくという。

 ワイヤレス給電のうち、WPC方式などは車や飛行機、病院などでも使用できる、いわばお墨付きをすでに手中に収めているという。今後、本格的なIoT時代を迎えるにあたって、実に多彩な機器がネットワーク接続されるが、なんといってもそこには電力確保を欠かせない。そうなると、いつでもどこででも、しかもコードレスで、容易に給電可能になることは必然的に伴うユーザニーズであろう。

 

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