ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/アマゾンデータサービスジャパン 片山 暁雄部長

インタビュー/アマゾンデータサービスジャパン 片山 暁雄部長

特集 特集2 社会生活から国家施策までを支援するICTソリューション

セキュリティ対策やビッグデータ解析などで
ユーザ層を拡大させるクラウドサービス


アマゾンデータサービスジャパン 片山 暁雄部長に聞く

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聞き手:ITソリューション編集部


 企業のシステムは、オンプレミスからクラウドへの移行および積極的な移行検討への気運が、これまでとは少し異なる形で盛り上がりつつある。というのも、よりユーザメリットを引き出せる開発・調達のスピードアップや新機能・サービスの追加、そしてセキュリティへの信頼感向上、あるいはビッグデータ対応の利活用性が向上してきたことなどがあるからだ。こうした追い風がますます、クラウドユーザのビジネスを結実させつつある。

 ここでは、アマゾンデータサービスジャパン技術本部エンタープライズソリューション部部長ソリューシションアーキテクト 片山暁雄氏に、クラウドサービス導入がもたらすユーザ企業へのメリットなどを中心に聞いた。

 

新機能・サービス追加時やバージョンアップ時にも
ユーザ負担がないクラウドのメリット

 企業システムは、従来のオンプレミス型から、SaaSやIaaSなどいわゆるXaaSを利活用するクラウドサービス型への移行が顕著になってきた。これにより、オンプレミス時に必要であったシステム運用・管理の企業負担がなく、それを事業面に注ぐことが可能だ。

 一方で、クラウドサービス事業者も、多彩な機能整備や値下げほかのサービスなどで、こうしたニーズに応えようとしている。アマゾンウェブサービス(AWS)は代表的な事業者で、2006年からクラウドサービスを提供し続けているが、その事業規模も急成長、そのリソースは同社以外の同業14社を合わせても5倍以上であり(2014年現在、ガートナ調べ)、こうしたリソースをバックに豊富なサービス機能を備えて企業ニーズに応えている。

 とくに2014年には454の新機能/サービスが追加された。同時に、こまめな値下げも敢行、その回数たるやこれまでの7年間にすでに45回に及ぶ。ユーザ数もワールドワイドで、100万以上、日本でも数万以上の顧客を擁している。

 

ERPなどクラウドサービスの利活用で、
企業はどのような成果をあげているか

 ERPなどクラウドサービスを利活用して、企業は具体的に、どのようなビジネス効果を生み出しているのであろうか。最近のAWSユーザの一例でみてみよう。

 ソニー銀行では、詳細なセキュリティを確認後、銀行業務システムや社内業務システム、一般向けシステム基盤にクラウドサービスを採用した。ここで、ドキュメント管理などのシステムの移行を終え、今後管理会計やリスク管理などのシステムの移行を予定している。

 この結果、従来はシステム変更のつど、ハードウェアの増設などが必要であったが、クラウドによりコンソール上で、銀行業務としての銀行系ネットワークをはじめ、一般社内業務としての一般系ネットワーク、情報提供向けWeb系ネットワーク、開発系ネットワークなどの論理ネットワークを自由に構築して、事実上のデータセンタ増設として利活用できるといった大きなユーザメリットを得た。同銀行は、5年間で約40%弱のコスト削減を引き出したという。

 またHOYAでは、グローバル展開を目的とした連結子会社約100社分の財務・連結会計を中心とする基幹業務を支えるSAPシステムをクラウドに移行させた。SAP環境の移行およびDR(ディザスタリカバリ)環境の構築は約2カ月で完了させた。プライベートクラウドと比べると、初期投資で約50~60%コスト削減、従量課金保守サポートの利用で実際のCAPEX(設備投資)削減効果は約80~90%を実現した。特に、同社は定期的なバックアップを行っており、データはそのつどシンガポールに送り、非常時にはシンガポールでのサーバ立上げを可能としている。通常のDRはDR先にもハードウェアシステムを構築するが、クラウド環境により同社の場合、データ保存費用だけでDR構築を可能とした。

 

ビッグデータも利活用しやすくなったクラウドサービス

 

 最近、企業がよくあげるクラウドサービスのメリットの一つに、ビッグデータの利活用のしやすさがある。

 たとえば、スカイラークでは、ビッグデータ解析にAWSの分析用データベースサービスを導入している(図1)。同社は、国内3000店舗、年間来店客数4億人分のPOSデータ分析システムを1カ月で本番稼働させた。クラウド利用により仮説検証や施策投入サイクルが飛躍的に向上したという。レシート単位の売上げ分析や商品の併売率をはじめ、バスケット粗利、販促施策の費用対効果、時間ごとの店舗稼働率、潜在時間等を分析している。

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図1 クラウドにおけるPOSビッグデータ分析システム

 

 また、回転寿司チェーンの「あきんどスシロー」でもビッグデータ解析に取り組んでいる。回転中すべての寿司皿に埋め込んだICチップ情報を、センサが検知するごとにリアルタイムにAWSにアップグレードし、これまで収集できなかった詳細なデータを分析に活用している。たとえば若い男性客が来店すると、空腹であろうからこの銘柄を回転させれば売れるし、廃棄率も削減できるといった具合だ。こうした分析を繰り返していって、廃棄率を70%下げたという。

 

「クラウドだからこそ安全」の現場実感

 これまでクラウド環境は、その運営・管理上、セキュリティの問題があるのでは、との声があった。しかし最近、「むしろクラウドだからこそ安全」といった声に変わってきている。その理由は、こうだ。

 クラウドサービスを利用しても、ユーザによるセキュリティ対策、たとえばOSのログインアカウント管理やファイルアクセス制御、アンチウイルスソフト対策などは従来どおりユーザ企業で行える。一方で、アプリケーションやOSが稼働するインフラが設置されるデータセンタやネットワーク、仮想化部分はクラウド側が提供する(図2)。とくに、AWSは前記のように大規模なリソースを所有しており、セキュリティ投資も当然大規模だ。またインフラは第三者認証にも数多く対応している。たとえば「PCIDSS」は、VISAやマスターカードが作った規格で最上級のレベル1である。カードビジネスに取り組む企業は、こうした規格すべてが必要であるが、AWSのシステム基盤を構築すれば、インフラ部分における取得の必要はない。

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図2 ユーザからの信頼感高まるクラウドサービスにおけるセキュリティ

 

 またクラウドERPの場合、会計部分への対応も必要となるが、「SOC1レポート」は外部に会計システムを預ける場合の外部委託先が所有すべきシステム管理基準を会計監査人がチェックした内容である。仮に「IFRS」(国際会計基準)対応という会計監査人の商標が必要であれば、SOC1レポートを会計監査に組み込めば済む。このようなセキュリティへの安堵感が、“クラウドはむしろ安全”という考え方の元となっている。

 大手食品会社の担当者は、「自社にサーバルームがあると安心かもしれないが、どのサーバにどんな重要情報が入っているか社員が知っており、却って危険といわざるをえない。しかし、クラウドはどこに何が収容してあるか一切把握できないので、権限の分離ができ安全」という。前記ユーザのHOYAも、クラウドサービスを採用してみて、確かなセキュリティ担保を認識したとの実感だ。

 

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