ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/ソフトバンクテレコム 小林 広明担当部長・葭葉 敦史氏

インタビュー/ソフトバンクテレコム 小林 広明担当部長・葭葉 敦史氏

特集 特集2 社会生活から国家施策までを支援するICTソリューション

クラウドやネットワークを利活用した
医療介護従事者向け非公開型SNS
および健康・医療情報プラットフォーム


ソフトバンクテレコム 小林 広明担当部長/葭葉 敦史氏に聞く

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聞き手:ITソリューション編集部


 クラウドおよびモバイル環境が医療関連のサービスを進化させ、その利活用範囲が広がりつつある。ここで紹介する代表的な二つの医療サービスはその典型例として、いま業界で注目を集めているところだ。  

 一つが、医療介護従事者に限ってサービスする、情報を共有可能な完全非公開型SNS「MCS(MedicalCareStation)」で、もう一つが病院やクリニック、検診センターなどの医療情報を収集し利活用するための地域健康・医療情報プラットフォーム「HeLIP(Healthcare Local Information Platform)」である。ここでは、ソフトバンクテレコム ヘルスケアプロジェクト推進室 担当部長 小林広明氏(写真左)および同マネジャー 葭葉敦史氏(写真右)に、これら二つのコミュニケーションサービスにみられる医療サービスの新たなステージを聞いた。

 

所属を超えた多職種連携コミュニケーションを実現するMCS

(1)二つのタイムラインから成るSNS

 MCSは、2013年7月からサービス開始した医療介護従事者だけのまったく新しいコンセプトに基づくSNS(Social Network Service)だ。医師をはじめ看護師、薬剤師、ケアマネージャー、ヘルパーなど多職種間において、患者に関する情報を、クラウドやスマートフォン、タブレット、ノートPCなどモバイル環境によってSNS共有できるというものである。ここには、患者や家族の参加も可能な部分も用意されている(図1)。

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図1 MCSおよびHeLIPを中核にすえたヘルスケア戦略

 このコンセプトによるサービスをわかりやすくいうと、“医療介護専用のセキュアなLINE”のようなイメージだ。医療介護従事者のみのコミュニケーションを行うタイムラインと、医療介護従事者と患者・家族との間でコミュニケーションを任意に行えるタイムラインの二つが提供されており、これがMCSの大きな特長となっている。

 このタイムラインというのは、MCS上で共有するメッセージを時系列に並べたものである。医療介護従事者や患者・家族ごとに作成されたタイムラインをみたり、メッセージを書き込んだりするだけで、簡単に情報共有や連携が行えるコミュニケーションサービスだ(図2)。なお、医療介護従事者のみのタイムラインから、患者・家族参加タイムラインへの移動時は、メッセージ送信内容に注意する旨のアラートが表示され、かつ二つのタイムラインを別々のデザインにすることで、誤送信を二重に防げるようになっている。

図2 MCSにおける二つのタイムラインの役割

 

(2)完全非公開型SNSが獲保するセキュアな環境

 医療関連サービスの場合とくに重要なことは患者情報の守秘であるが、MCSは他SNSとは異なり完全非公開型による運営が行われている。したがって、サービスの利用を開始する場合も既存の医療介護従事者から招待されるか、事務局への直接申請を行わなければならない。これがSNSであってもMCSのセキュリティ性が確保されているゆえんである。またアクセスコントロール機能の実装により、医者や患者などの管理権限者が情報共有の対象者を完全に管理できるので、管理権限者の関知しない人物のアクセスを防ぐことができ、不用意な情報拡散を防ぐことも可能となっている。

(3)地域包括ケアで期待されるMCS

 とくに、今後広がりをみせるであろう在宅医療のような地域包括ケアをみた場合、病院のような一つの医療施設における患者対象のケースとは異なり、そこにはさまざまな法人が関与することになるので、多職種の情報を共有する必要がある。また、患者宅に医師や看護師、ヘルパーたちが同時に訪れることはまずないので、彼らが共有すべき情報をデジタル化しクラウド上で管理できれば、モバイル機器によってリアルタイムに共有が可能になるというわけである。

 MCSは現在、約2000施設で導入されており、利用者は約4000人となっている。医療・介護従事者向けのアプリケーションや各種サービス提供の募集も積極的に進められている。

 

地域健康・医療情報プラットフォーム「HeLIP」と
予防医療推進へ向けた展望

(1)地域健康・医療情報をクラウドに集積・管理することが生み出す多くのメリット

 HeLIPは、地域の医療機関はじめ検査・健診センター、保険者、自治体などが所有する健康・医療に関する情報をクラウド上で集積・管理し、共通インタフェースや認証基盤を通じて、各医療機関・施設で異なる医療情報システムを連携可能なプラットフォームサービスだ(図1)。

 すでに、多くの地域で健康・医療情報プラットフォームとして利活用されている電算の“HARMONYsuite”をクラウドサービスで提供している。このサービスは、いつ、どこからでも簡単そして安心して個人医療情報を確認可能で、通常時は市民の健康管理に、また緊急災害時には迅速な個人医療情報の確認や診察を可能とする最適な市民健康情報プラットフォームとなっている。とくに、日本医師会のHPKI(Health Public Key Infrastructure)認証基盤を搭載しているので、医師の個人認証を行うことができ、緊急災害時などは、たとえ自分の患者でなくとも診察・治療が可能だ。なお、関連情報の集積・管理を行う心臓部であるストレージは、SS―MIX2標準化に対応している。

 また、実績豊富なテクマトリックス社の画像管理クラウドサービス“NOBORI”によって、医療機関が蓄積している画像データのセキュアな管理が可能となっている。

 HeLIPはクラウドサービスとして提供可能なため、多大な初期投資やシステム更新費用も不要であり、補助金に頼らない持続可能なシステムとして期待されている。

 現在、茨城県医師会で導入を進めている医療情報に関し情報交換・共有するシステム”いばらき安心ネット”では、HeLIPをバックアップサイトとして採用している。HeLIPは、地方自治体や地区医師会、医療機関などに提供するとともに、広くパートナを募って、健康医療情報としてのさらなる普及をめざしているところだ。

(2)PHRプラットフォームとしての期待

 今後はPHR(Personal Health Record)として診療情報の保全や共有にとどまらず、利用者の同意をふまえて、たとえば活動量や血圧など個人の健康データなどをも統合した形でプラッフォーム化し、各種健康産業や健康サービスなどと連携することをもめざしている。そうなると、利用者の遺伝情報と生活状態をみて、将来罹患するかもしれない病気を予測でき、その際はこのような治療を施すことでこのような結果が得られるなどといういわば横串データの確保により、昨今注目される個別化医療など、予防医療の実現にも結びついてくることも期待されている。PHRは、現在、自治体で管理するような動きが始まってはいるが、このまま推移しても閉じた世界の域を脱しにくいかもしれない。PHRをさらに広域レベルで展開させるには、公の力のみに拘泥するのではなく、やはり民間の力で臨むことが推進力を増すものと思われる。

 

クラウドとネットワークが加速させる医療サービスの発展

 ソフトバンクテレコムのヘルスケア戦略は、クラウドとネットワークを意識した上記二つのコミュニケーションサービスに最大の力点をおいている。医療データから健康データまでを対象とした統一プラットフォームを提供して、ビッグデータビジネスに結び付けていくというスタンスだ(図1)。

 今後は、まずMCSを通じて医療・介護従事者をカバーし、HeLIPを通じて医療側データの蓄積を推進、そして次のビジネス展開をめざしている。

 

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