ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/内田洋行 青木 栄太部長

インタビュー/内田洋行 青木 栄太部長

特集 特集2 社会生活から国家施策までを支援するICTソリューション

教育現場に革新をもたらす
フューチャークラスルーム


内田洋行 青木 栄太部長に聞く

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聞き手:ITソリューション編集部


 教育現場で、新たな変革が起ころうとしている。未来の学習空間をイメージさせるコンセプト「フューチャークラスルーム」の登場だ。この空間では、新しい授業形態“アクティブ・ラーニング”を実践するため最新のICT設備が採り入れられている。

 ここでは、内田洋行公共本部コンテンツ企画部部長青木栄太氏にこれからの教育現場におけるICT化は、フューチャークラスルームによってどう変貌するのか聞いた。

 

授業に革新をもたらすアクティブ・ラーニング

 これからの教育は、“アクティブ・ラーニング”と呼ばれる新しい形態がクローズアップされることになりそうだ。たとえば、従来は一つの授業の中ですべて、教師が児童・生徒に対して一方向的に知識を講義するという形態であった。しかし、アクティブ・ラーニングでは、最初は課題をつかむため一斉指導の講義形式であっても、個人の思考で課題に取り組む個別学習に進み、その後はペアやグループで互いに学びあう協働学習に展開し、その学習内容・結果をプレゼンし共有するといった双方向の授業となる。このように、アクティブ・ラーニングは、従来には見られないフレキシビリティ性を備え能動的な学習方法になっている。教育の21世紀型スキルは、自らが課題を見出して、協働学習でディスカッションしつつ各自アイディアを出し、他児童・生徒の意見も採り入れて、自らのスキルを高めることがキーポイントになる。

 

通信機能ほか最新ICT機能がもたらす
教育革命“フューチャークラスルーム”

 こうした新しい授業形態ではICTの利活用はますます重要だ。特にアクティブ・ラーニング化で主役のICTは、“C”、すなわちコミュニケーションの部分である。いま小・中・高そして大学などで、俄然注目を浴び導入顕著なのが、アクティブ・ラーニングを実践する内田洋行の“フューチャークラスルーム”と呼ぶコンセプトだ(写真1)。代表的機能を紹介しよう。

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写真1 フューチャークラスルーム

 

(1)モバイルおよび無線LANがICT教育を大幅に変革

 まずモバイル技術が挙げられる。ルーム内どこでも、あるいは教室を移動しても、教師や児童・生徒は端末であるタブレットPCを持ち運ぶことができ、効果的な利活用を期待できる。同時に無線LAN(IEEE802.11n、伝送速度300Mbps)も象徴的だ。このおかげで、教師や児童・生徒のタブレットPC画面を電子黒板やマルチスクリーンに複数投影でき、リアルタイムに双方向の授業ができる。その結果、児童・生徒が課題に取り組む経過や結果を、教師や児童・生徒たち全員が確認できるので互いの比較や共有も可能になる。授業に自分の発想が生かされ、学習意欲が向上する。このようなことが、いとも簡単に実現可能になったことは、従来にはみられない、教育における大きな変革といえよう。

(2)デジタル教科書の大型表示がもたらす授業進行の効率化

 プロジェクタによる教室内の白壁を利用した大型表示も効果的だ。教科書で授業を進行する際、児童・生徒が教師の指示しているページに追従できているか、そのページを開いているか、などの確認に教師はかなり時間を要していた。しかし、デジタル教科書の場合は、開くべきページを教師が指示した場合、開いたページが大型表示されているので、ページ自体を目視により児童・生徒は即理解できる。こうした、従来の授業では困難であったことが、やはりいとも簡単にできるようになったことも、授業進行のパフォーマンス向上に大きく貢献している。

(3)フューチャークラスルームにおけるその他のICTソリューション

 フューチャークラスルームにおけるICTは、上記以外にも豊富だ。実は、写真2のように、ICT空間構築ツール「SmartInfill」で既存の教室に枠を組み、この枠にたとえばプロジェクタや遠隔授業用カメラなど最新のICT機器を取り付けることができる。このツールにより、教室のプロジェクタの数を増やしたり、位置を変えたりすることが容易になり、教室全体をフル活用できる。LED照明やロール型スクリーン、ディスプレイなども用途に応じて取り付けできる。

 またタブレットPC使用後、児童・生徒はPC充電保管庫に収納し充電しておくことができる。充電保管庫には学校の環境を考慮し、15アンペア以上の電流が流れた場合を想定した電源制御なども備えている。

 一方、デジタル教科書は、データセンターからクラウド配信するが、多くの自治体の学校通信インフラは地域イントラネット環境にあり、データセンターから直接配信するには帯域が狭く困難なのが実情だ。そこで内田洋行では、エッジサーバを自治体側に設置し、購入したデジタル教科書を一旦、データセンターからエッジサーバに配信し、イントラネット環境において、各学校は潤沢な回線状態での利用が可能な手法をとっている。これまでに約230自治体、約4000校が利用しているという。

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写真2 フューチャークラスルームの全景。天井部にICT空間構築ツールの枠がみえる

(4)デジタルに頼らずアナログも

 重要なことは、ICT装備とはいっても、すべてデジタル技術に依存するのではない。教室の白壁全体をホワイトボードとして利用できるので、通常のホワイトボードと比較して、たとえば証明問題で数式が長くなっても、スペース不足を気にせず、壁全面にゆとりをもって書き込んでいける。もちろん、壁全面に書いたものを記録するカメラも用意されている。このとき天井部に取り付けたカメラは、壁に対して斜め上から撮影するので読みにくい画像になるはずだ。しかし、あたかも正面から撮影したような補正機能の開発が既に進んでおり、投入も間近という。

 このようなアナログニーズ対応も、フューチャークラスルームで重視された機能だ。なお、ICTおよび照明、空調など全機能のコントロールは写真3のタブレットPCで行う。

 

フューチャークラスルーム導入の効果

 いま日本政府では、デジタル教科書・教材の導入に関する研究開発・検討を実施し、2020年度までに児童・生徒1人に1台の情報端末を整備、他にも学校の高速ブロードバンド接続や電子黒板、無線LAN環境の整備などICT導入により、初等教育から教育環境のICT化を進め、児童・生徒の学力向上とICTリテラシの向上を図るとし、国をあげての教育への取組みが活発化しているところだ。

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写真3 手にするタブレットPCがフューチャークラスルームにおける
ICTおよび照明・空調等の全機能コントローラ

 こうした趨勢をふまえ内田洋行が開発したフューチャークラスルームには2014年だけでも、学校関係をはじめ教育委員会、文部科学省、総務省など約1000組・3万人が訪問した。また近隣の韓国や中国、台湾をはじめ、サウジアラビア、トルコ、パプアニューギニア、米国、欧州圏など海外からの訪問者が後を絶たないそうだ。その後実際にフューチャークラスルームのさまざまな要素を導入した小樽商科大学、筑波大学附属小学校などの事例もある。1人1台PCの最新事例では、東京・荒川区が全国に先駆け、全区の小中学校に1人1台PCのICT環境を導入している。

 教育施設での導入が急ピッチで進んでいる。実際に、フューチャークラスルームを導入した学校サイドの声を聞いてみても、協働学習や児童・生徒同士の学習成果を比較してディスカッションするアクティブ・ラーニングの効果を肌で感じているといった感想が顕著であり、着実に結実しつつある。

 

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