ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/日本航空 野口 雄一郎グループ長・渋谷 直正氏

インタビュー/日本航空 野口 雄一郎グループ長・渋谷 直正氏

特集 特集2 社会生活から国家施策までを支援するICTソリューション

Webログとアナリティクスで
顧客サービスレベルの向上をめざすJAL
― IBM製データマイニングソリュ-ションなどを駆使 ―


日本航空 野口雄一郎グループ長/渋谷直正氏に聞く

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聞き手:ITソリューション編集部


 ビジネス戦略にデータ分析を利活用する企業が、増え続けている。しかし、そこで用いられるデータアナリティクスや統計学理論は一般企業にとっては、それほどハードルは低くない。ところがJALでは、操作性の良いデータマイニングソリューションなどを駆使してWebログを分析、一般企業にとっても、それほどハードルが高くないデータ分析環境を実現、業界の注目を集めているところだ。

 ここでは、日本航空旅客販売統括本部Web販売部1to1マーケティング グループ長野口雄一郎氏(写真左)および同アシスタントマネージャー渋谷直正氏(同右)に、実践的かつそれほど専門的知識を必要としなくても利活用可能なデータ分析環境のキーポイントについて聞いた。

 

Web販売部の設置

 JAL にWeb販売部が設置されたのは、2010年12月のことだ。

 Webサイト自体はこれより以前からあった。しかし、もっぱらWeb制作に比重がかかり、Web販売の戦略や実績管理は各部門に分散している状態であった。

 分散している機能を集約しWebにおける販売機能を強化すべくWeb販売部の設置に踏み切ったのである。

 

“なぜ買ったのか”ではなく
“なぜ買わなかったのか”に潜むビジネスチャンス

 コンビニなどでは、陳列された商品を一旦手にするが、またもとに戻すことをよく目にする。実は、JALでも、このことが気にかかっていた。自分たちのWebサイトに来訪する顧客は多いが、必ずしも顧客のサイト内の行動、状況を把握できるデータは存在していなかった。すなわち、まずは顧客がどのページをみたのか、具体的にどのような情報を探そうとしているのか、を知りたかった。

 ここで重要なのは、顧客が購買に到らなかった情報だ。コンビニなどで客が手にとって購入しレジに行けばPOSデータとして残っている。だが、購入せずもとに戻す商品のデータはない。実はこのデータが重要で、なぜ気に入らなかったのかを分析し次の販売戦略にいかせば、売上げ向上の重要な手掛かりになるのである。

 ところがWebはよくできたもので、購入しなくてもページをみればログが残るので、そうした未購入に関するデータまでとれるようになっているのである。どのような顧客がこのページに興味を持っているのか、このページをよくみてはいるがなかなか購入してくれないのは迷っているのか、などがWebログの収集および分析で把握できるようになる。そうすると、この顧客はこのような商品を購入したいのだ、ということがわかるはずだ。

 たとえば、ある顧客がWebをみていて、本当は国内の沖縄方面の商品が欲しいのに、北欧方面の商品ばかり紹介しても顧客ニーズを満たすことができない。しかし、Webログの分析に基づいて、沖縄方面の商品を提案すれば、購入に到る可能性が極めて大きくなってくる。そうすると、顧客にとっても、JALにとってもWin―Winの関係を築くことができる。こうして、顧客のWebでの検索・閲覧等の行動から顧客ニーズを見出せるのである。

 

Webログに基づいたデータ分析による
顧客サービスシステムのしくみ

 JALでは図1に示すようなシステムを構築した。図から明らかなように、Webログの取得には、アクセス解析ツールが必要になり、これで顧客の動向分析はある程度まではできる。しかし、前記のような細かい分析には限界が伴うので、データウェアハウスが必要だ。JALでは、社内データウェアハウス(DWH)に、膨大なWebログを日々集積させている。

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図1 Webログによるデータ分析に基づいた顧客サービスシステム

 このデータウェアハウスに対して重要な役割をもつものが、JALが採用したデータマイニングソリューション「IBM SPSS Modeler」だ。これによって、きめ細かなデータマイニングが行えるようになる。ここでデータマイニングすれば、分析担当者によって、このような傾向を持つ顧客には、このような商品がオススメということがPCサイトやメールで紹介できる。まさに、「IBM SPSS Modeler」の役割が、顧客への“おもてなし”にとって重要な役割を果たすことになる。

 

おもてなしの肝ともいえる「IBM SPSS Modeler」

 ではJALは、なぜこのソリューションを選択したのであろうか。データマイニングソリューションを検討する中で、使いやすさを考慮した結果、「IBM SPSS Modeler」に行き着いたそうだ。多くのユーザたちからも、操作性の評価は高いという。概ね半年も使えば、ほとんどのユーザがスムーズに使えるようになるそうだ。しかも、統計学やプログラミング言語のような専門知識はそれほど必要ではない。

 こうした一般企業のマーケッタでもデータ分析できる操作性のよさに加えて、ビッグデータに対応している点、さらに一般企業でよく使われるような手法が一通りバンドルされオールインワンになっている点も選択理由にあげられる。そして、ユーザ数が非常に多いことも外せない。このため、ヘビーユーザが結集する場においても、現場ユーザどうしの情報交換が行いやすいという。

 このように、一般企業におけるマーケティング部門の担当者が分析を行って効果を引き出せる、という事例は、データ分析が業界で重視される中、これからのビジネス展開上、キーポイントになるのではなかろうか。

 実は、JALにこのような例がある、という。大学ではまったく数学や統計学とは縁もゆかりもない学部を専攻して、マーケティング グループに配属されてきた人がいる。しかし、そこでこの操作性のよいデータマイニングツールを使って、現場感覚でWebデータを分析して顧客動向をある程度、把握できるようになってきた。すると、今度は自分自身でなぜこのような結果がでてくるのか、どのような分析プロセスを経ているのかにも興味がわき統計学の勉強を始めたそうだ。最初から難解な教科書にかじりつくのではなく、まず目の前のビジネス課題を解決して、それからバックグラウンドに潜むロジックに取り組む。一般企業の場合、この点がキーポイントになる、とJALでは確信している。

 

今後は顧客のライフスタイルがみえるような
予測分析がキーポイント

 今後、JALがめざすのは、さらなる予測分析の利活用だ。たとえば温泉旅行にでかけたい顧客にこのような商品をお薦めすれば購入してくれるであろう、といったことを追究するための手段だ。もう少し掘り下げると、顧客のライフスタイルや興味、嗜好などがみえてくるような予測であろう。そのためには、Webログ以外のデータ収集法、あるいはデータ分析結果の自動化処理ほかの課題にも取り組まなければならないかもしれない。

 JALのこうしたWebデータ分析による顧客サービスの品質は格段に向上している。ある事例の場合、オンラインで購入する顧客がおよそ10倍に増加したという。JALのような一般企業で、こうした分析を行い着実な成果をあげている例は、他ユーザ企業にとっても朗報ではなかろうか。

 

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