ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/丸紅情報システムズ 丸岡 浩幸課長

インタビュー/丸紅情報システムズ 丸岡 浩幸課長

特集 特集1 日本の「モノつくり力」を向上させるICTソリューション

3Dデータから直接モノづくりができる
革新の3Dプリンティング


 

丸紅情報システムズ 丸岡 浩幸課長に聞く

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聞き手:ITソリューション編集部


 3Dプリンティングが、俄かに騒がれ始めたのはこの数年だ。しかし製品は既に、20年以上前から販売されていたという。とにかく3Dデータから3Dプリンタによって直接モノを作ることができる、というモノづくり史上、革新的な機能(DDM:Direct Digital Manufacturing)を備えているのだ。

 ここでは、丸紅情報システムズ 製造ソリューション事業本部 モデリングソリューション技術部 DDM推進課長 丸岡浩幸氏にICTの発展かつ拡大とともにクローズアップされてきた3Dプリンタのモノづくりにおいて果たす役割を聞いた。

 

新たなモノづくり革命を引き起こす3Dプリンティング

 今でこそ、3DプリンタはICT業界最前線テーマとして注目されているが、実はその歴史は意外に古い。丸紅情報システムズでは、既に22年前から市場シェアNo.1のストラタシス(Stratasys)社製3Dプリンタを販売し続けている。この間、何度か3Dプリンタブームが起こりかけたがおさまった。しかし、昨今のブームはこれまでの技術的な積上げに伴い、機械的性能および材料品質ともに向上し、いよいよ本格的な普及期に入ったとの見方だ。その主な理由は、二つある。

 第一が、なんといってもICTの発展および拡大、性能向上に負うところが大きい。モノづくりの設計においても、手による図面作成から2DCADそして3DCADへと移行したこと、3Dスキャニングの普及、エンタテイメント分野でも3DCGなどの発展、医療分野ではCTなど断層画像を3D化しての活用が広がった。そしてこれら関連データがインターネットを介して大量にやりとりもされ、3Dプリンタが利活用されるに至ったのである。

 第二が、初期に3Dプリンタが市場投入されてから20年以上経った今、当初の技術的基本特許も期限満了を迎えることとなった。そこで、誰でもがこれら技術を使えるようになったのである。この点もブームのトリガとなり、新たな3Dプリンタの開発が進み、“モノづくり革命”を引き起こすに至った。

 すなわち、これまでのモノづくりは大企業がモノを大量に生産して販売していく、というパターンであった。しかし、21世紀型のモノづくりは、欲しいとき、欲しい所で、欲しいだけ生産するというニ-ズに合わせたモノづくりの仕方が比重を占めてくると思われる。このようなニーズを支援するソリューションの一つが、3Dプリンティングだ。

 

3Dプリンティングのしくみ

 ストラタシス社製3Dプリンタの出力機能2方式を図1および図2に示した。図1がFDM(Fused Deposition Modeling)と呼ばれる方式である。これは、ABSやPCなど熱可塑性樹脂を熱で溶融し積層することでモデルを造形する。すぐれたX―Y軸の精密な昇降制御で、寸法精度のよいモデル造形を行える。強度や耐熱を要する機能テストや形状確認に使用でき、FDM方式によるFORTUSシリーズ上位機種では、スーパエンジニアリング・プラスチックに対応し、実部品や型、治工具の直接製造(DDM)を可能にする。モデル色も原色以外に白、黒、その多数色の材料から選択できる。

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図1 FDM方式の仕組み

 図2が、Polyjet(ポリジェット)と呼ばれる方式である。これは、液状の光硬化性樹脂をインクジェットプリンタのようにドットで吹き付け積層すると同時に、UVランプで露光し硬化させモデルを造形する。最小積層厚0.016mmという微細な積層により、滑らかな表面をもったモデルの造形が可能。ハイエンド機種の一部は、材料の混合により100種類以上の材料パターンを可能にした世界でも初のデジタルマテリアル機能を搭載し、異なる材料を組み合わせたモデルを単一モデルとしてプリントできる。モデル色は透明色を出せるのが特徴だ。

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図2 Polyjet方式の仕組み

 

 写真1に、2014年11月に投入されたストラタシス社製の最新鋭3Dプリンタを示した。

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写真1 ストラタシス社新製品「Fortus450mc」。従来機種よりも約15%アップの高速造形

 

モノづくり現場で3Dプリンタが引き起こす革命とは。新たなビジネスも誕生

 

 では、3Dプリンタはモノづくりの現場でどのように役立つのであろうか。

(1)モノづくり工程上における試作例

 一時期、コンピュータでモノを設計しシミュレーションすれば、試作の必要はない、一気に量産できるといわれていた。しかし、コンピュータでモノづくり工程すべてを実行すると、逆に要所ごとに現物の必要性が発生する。実際にモノをみて、これはおかしい、あるいは部品が干渉しているなどを判断しなければならない。完全なコンピュータ処理で対応し、工程終了の段階でおかしい、と気づいたのでは手遅れである。

 このとき、従来のように別の部署で材料から削って作ってもらうと、時間もかかりパフォーマンスも向上しない。そこで、3Dプリンタで素早く作ってみて、現場で担当者どうしのコミュニケーションやデザインレビューをすれば実に効率よく実行できるのである。やはり終局的には、人の目で立体物から得られる感覚を重視しなければならないのだ。

(2)20年前には想定外のモノづくり革命

 もう一つ例をみよう。いま個人ベースでも3Dプリンタは急ピッチで普及している。前述の自分が欲しいとき、欲しい所で、欲しいだけ作りたい、ニーズにこたえるものだ。自作のものを多くの人たちに使ってもらうために共有サイトに関連3Dデータを載せる。それを見た人は画面上で楽しむことや、手持ちの3Dプリンタで出力して実際にモノを作ることもできる。いわばSNSの道具として注目されているのだ。

 また、「クラウドファンディング」と呼ぶインターネット上に自分のアイディアを公開して、賛同する人たちから資金を集められれば起業し、商品を開発するビジネスにも大きな関心が寄せられつつある。たとえば同じ形のものを100個作ることや、すべて異なる形のものを100個作ることもできる。すなわち、PCと3Dプリンタ、設計するソフトさえあれば試作品や、小ロットベースの商品を容易に作れるというわけである。これまでは、金型の投資だけで大変な費用が必要であったが、3Dプリンタのおかげで個人ベースでも容易に試作品や小ロットベースでの生産が可能となる。従来みられなかったビジネスの誕生だ。

 

ICT発展とともに最前線ソリューションで活躍する3Dプリンティング

 2014年初頭には、経済産業省のWebサイトで、3Dプリンタが生み出す付加価値および今後のモノづくりの方向性を考察した「新ものづくり研究会」の報告書が公開された。ここでは、3Dプリンティングの世界における概況やわが国の現状、将来どう利活用すべきかの方針等が提言されている。

 モノづくりは今後、そのすべてが3Dプリンティングで対応しうるものでは、もちろんない。従来の工程技術とも上手に融合させてより効果的なモノづくりを行うことが肝要だ。

 また、昨今注目されるさまざまかつ大量なデバイスやセンサがインターネット接続されるIoTやM2M環境でも3Dプリンティングは重要な役割を担う。デバイスやセンサなどを機器に取付けるために必要なケースは、デバイスやセンサがあまりに種類が多く、おそらく市販のものでは間に合わないからである。そこで用途に合わせて3Dプリンタでまずは少量作ってみて適合すれば量を増やす方法だ。3DプリンタはICT最前線のソリューションとしても利便性が期待されており、新たなビジネスチャンスとも相まって、新しいステージに入ってきたことを予感させる。

 

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