ITソリューション企業総覧2015Web
インタビュー/日立ソリューションズ 堀田 匡哉本部長、勝田 光弘氏、山崎 典之氏

インタビュー/日立ソリューションズ 堀田 匡哉本部長、勝田 光弘氏、山崎 典之氏

特集 特集1 日本の「モノつくり力」を向上させるICTソリューション

組込み技術が向上させてきた
わが国モノづくりの技


日立ソリューションズ 堀田 匡哉本部長、勝田 光弘氏、山崎 典之氏に聞く

s-1_05_01_1 s-1_05_01_3 s-1_05_01_2_2

聞き手:ITソリューション編集部


 わが国モノづくりを支える主要な技術の中で、組込み技術が果たす役割を除外して語ることはできない。工場の工作機械をはじめ半導体製造装置、ロボット、カーナビ、家電ほか、実にさまざまな分野で、組込み技術は活躍、産業競争力の強化に重要な役割を果たしている。

 組込み技術の中でも、最近注目すべきは、M2MやIoT、ビッグデータなどICT最前線技術などとも相まって、とくに組込みソフトウェアが果たす役割だ。

 ここでは、組込みソフトウェアの機能や役割のプロフィールを、組込みソフトウェアのトップベンダである日立ソリューションズプラットフォームソリューション事業本部ITプラットフォーム事業部本部長(社会インフラ基盤事業開発担当)堀田匡哉氏(中央)、社会インフラ基盤本部第2部グループマネージャ勝田光弘氏(右)、社会インフラ基盤本部第2部エンティアグループグループマネージャ山崎典之氏(左)の各氏に聞いた。

 

組込みソフトウェア誕生秘話とEntierの魅力

(1)組込みソフトウェアの誕生

 経済産業省によると、わが国組込み関連産業生産額は、約70兆円で国内総生産の13.5%にまで成長し、組込みソフトウェア開発費も4兆円を超えるという(2009年)。なかでも、自動車をはじめカーナビ、携帯電話、DVDレコーダなどは、規模が大幅に拡大し、これら製品の性能を決定づける重要な要素といわれるまでになってきた。

 組込みソフトウェアは、昔から、職人的立場の人たちによる手作りが多かった。しかしこのような組込みソフトウェアの場合は生産性に難があるし、品質上からみても、必ずしも安定したものにはならなかった。そこで、汎用性をもたせたソフトウェア部品を用意し、利活用できないものかと考えられてきた。そうすれば、生産性も向上するし、品質面でも安定性が得られるというわけである。

 こうした背景をもとに開発された代表的なソフトウェアが、日立ソリューションズの「Entier」(エンティア)だ。投入後、10年近くになるが、実は開発のキッカケが、“カーナビ”の発展と密接に関係しているという。


(2)カーナビ普及とともに組込みデータベース「Entier」を投入

 10年前、カーナビがDVDからHDDに切り替わったが、それまでは、年度更新時に、ユーザはDVDの買いなおしを強いられていた。それが、HDDに切り替わったことで、読み書きができるようになったのである。そうなると、ユーザはより早く新しいデータが欲しくなる。そこで更新が必要になるが、そうなるとデータベースを欠かせない。

 こうした2004年頃、“ハードディスクナビ”の構想が生まれた。日立ソリューションズではこのとき、ハードディスクナビ向けデータベースがまぎれもなくビジネス展開上の“勝機になる”と読んだ。そして2005年にリリースすると、実に数多くのカーナビメーカが採用していったのである。業界初の本格的な組込みデータベース「Entier」の誕生だ。

 たとえば、アプリケーション開発時など、ユーザは、データ管理ロジックによる開発コストの増加を無視できないはずだ。長期連続運用をはじめ性能、セキュリティ、同時アクセス、リソース見積もり、データの整合性などを加味すると、データの種類や量も増大してしまう。こうした際、Entierを利活用すれば、領域再利用をはじめインデックス、マスク化/暗号化、マルチスレッドモデル、開発機によるSQL検証、トランザクション管理など、機能・性能・信頼性を考慮したデータアクセス管理を容易に実装できるのである。一方で、大量の操作マニュアルやオフィスでしか作成できない報告書、無制限に発生する稼働データなども、組込みデータベースによるデータ管理で、閲覧や検索なども容易に実現可能だ(図1)。

s-1_05_02

図1 Entierが実現するスマートなデータ管理例

 

新たな「M2M組込み基盤スイート」でM2Mニーズを支援

 日立ソリューションズでは、2014年11月に、昨今のICT最前線技術の一つであるM2MやIoTのニーズに応えこれを支援するソリューションとして、「M2M組込み基盤スイート」を投入した。これは、各種センサなどからのデータをサーバへ収集するほか、データの見える化、ビッグデータ分析そしてセンサの遠隔管理までM2Mを支援する基盤をワンストップで提供する、というものだ。組合せにおける動作を保証した製品群で構成されており、ユーザが検証する必要がなく、即利活用できるようになっている。

 図2を参照されたい。ここで、機器・センサ群からのセンサ情報は「センサ接続」に送られる。これはPLCやセンサとの接続モジュールにおけるフレームワークを提供しており、開発効率を向上させるのである。具体的な製品には、M2M遠隔施設管理システム「M2M Remote Factory Manager」がある。

s-1_05_03

図2 M2M組込み基盤スイートの機能

 

 その後データは、「データ蓄積・加工」に送られるが、ここでは収集規則に基づいて、データを抽出し加工する。必要に応じて長期間の保存も行う。具体的には、組込みデータベース「Entier」とM2Mデータ抽出・加工ソフトウェア「Entier Stream Data Aggregator」がある。ここではEntierで培った組込み機器でのデータ処理ノウハウを生かして、省リソース環境下で高速データ処理が実現できる、というわけである。

 また、「アプリケーション実行基盤」では、柔軟で移植性にも優れたJavaベースの開発・実行基盤を提供する。具体的な製品には、OSGi準拠の組込みJava対応フレームワーク「SuperJ Engine Framework」がある。

 そして「軽量通信」では、通信パケット数を軽減して通信コストを抑えるとともに、データのロストが生じない高信頼性の通信処理を実現させる。具体的な製品には、M2Mデータ収集ソリューション「M2M Data Collection Agent」がある。

 「M2M Data Collection Agent」は、「データ受信・格納サーバ」としてデータの受信やコマンドの送信を行い、センタ側システムとのデータ・制御の連携機能と合わせて提供される。ユーザが構築させたいシステムは、ユーザ事情によって必要なパーツが決まっているのであるが、M2M組込み基盤スイートは、「センサ接続」のみですむ場合や、「軽量通信」だけ欲しい、新規なのですべてが欲しいなど、どのようなユーザニーズにも、対応可能としている。

 

組込みソフトウェアの今後の展望

 ICTでは、標準化も見逃せない課題だ。ネットワーク発展の歴史にもうかがえるように、標準化に準拠したソリューションで発展してきたいきさつがある。M2M分野も例外ではなく、今後ますます実にさまざまな機械どうしの接続が要求されてくるはずだ。

 そこで、どのような機械どうしでも接続できるインターオペラビリティ(相互接続性)を保証する国際的な標準規格が重要になってくる。グローバル化時代において、ユーザに採用してもらうためにはこうした規格を組込みソフトウェアにもインプリメントすることが望まれるであろう。たとえば、日立ソリューションズでは、CoAP(Constrained Application Protocol)と呼ぶ通信プロトコルを採用しているが、この通信プロトコルは、同社もその活動に貢献する国際標準化機構oneM2Mの仕様にも採用されているという。

 今後の組込みソフトウェアを展望するとまず、クラウドやサーバなどレイテンシーの大きなICTの世界と、リアルタイム性の制約が強い工場の世界が現存する。この両者を融合させることは、それほど容易なことではない。なぜなら、後者のようなリアルタイム性が強い制御の世界は特殊スキルを擁する世界であり、この世界からICTの世界をみると、いまのサーバ性能は必ずしも高速処理ではなく、把握しづらいといわれる。しかし、こうした二つの世界が融合して、従来にはみられない新しい工場環境の構築をめざすことは、必然的な流れとなろう。注目のインダストリー4.0なども、一つの解なのかもしれない。

 

« »