環境ソリューション企業総覧2015Web
クラレ

クラレ

■環境ソリューション企業編 08_総合ソリューション

「つくる→使う→生かす」の各領域で環境配慮


クラレ

www.kuraray.co.jp


 クラレは、1950年に合成繊維ビニロンの事業化に世界で初めて成功、その後高分子化学、合成化学の独自技術をベースに繊維に加え高機能樹脂など化学品分野でも世界的な競争力を持って発展を続けてきた。

 環境問題に対しても積極的に関与し、問題解決に向けた取り組みを展開している。同社の「企業ミッション」では、「自然環境と生活環境の向上に寄与します」と謳い、2015年よりスタートした中期経営計画「GSSTEP」では、主要経営戦略の一つに「環境への貢献」を掲げている。こうした方針のもとに同社グループは、環境負荷の低減に向けたトータルソリューションの開発と提供に取り組んでいる。

 環境ソリューション分野を大別すると、①製造工程で環境に配慮した領域、②環境フレンドリーな商品領域、③環境改善に寄与する事業領域、④商品の使用後に環境に配慮した領域、に大別される(表1)。その成果である代表的なソリューションを紹介する。

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水処理ニーズにこたえる環境関連事業の拡大

 現在クラレグループでは、ミクロ粒子を除去する高分子中空糸膜〈クラレSFフィルター〉、大孔径膜ろ過システム〈MEGAFLOW〉、微生物固定化担体PVAゲル〈クラゲール〉、余剰汚泥減容システム〈ゼクルス〉、活性炭等、水処理を中心としてユニークな環境事業関連素材を保有し、今後拡大していく重要な事業領域として位置付けている。

 まず2008年4月にクラレと野村マイクロ・サイエンスとの合弁会社「クラレアクア」を設立した2012年3月に子会社化。同社はクラレの保有する水処理関連素材と野村マイクロ・サイエンスの保有する純水製造装置を中心としたエンジニアリング技術を相互補完的に融合し、水のトータルソリューション企業を目指す。

 2009年4月にはクラレにアクア事業推進本部を発足させ、従来の水処理に留まらず、シリコンやクーラント等の有価物回収等にまで対象を広げて、事業開発を進めている。

 2011年10月に、中国におけるアクアビジネスの本格展開に向け、中国現地企業と合併会社を設立した。そして2012年5月には、バラスト水管理システム〈MICROFADE〉の施工前試験合格書(型式承認)を日本国政府から取得、本格的に販売を開始している。

有機汚泥発生量ほぼゼロを実現した〈ゼクルス〉

 この中で〈ゼクルス〉による排水処理は、微生物による排水処理能力を大幅に向上させ、しかも微生物の増殖により発生し、産業廃棄物として処理が必要となる余剰汚泥を大幅に削減できる画期的なシステムとして注目を浴びている。

 〈ゼクルス〉は生物処理槽、汚泥減容槽、沈殿槽から構成されている。生物処理槽には〈クラゲール〉が使用されている。これは、生物親和性の高いポリビニルアルコールを原料とした直径4mmのビーズ状で、20μm程度の無数の細孔による網目状の構造を持つ微生物固定化担体。この細孔に10億個以上の微生物が棲みつくことができるため、従来の方法に比べて有用な微生物を高濃度で保持することが可能となる(写真1、2)。したがって、通常の方法に比べて非常にコンパクトな設備(5分の1)で、高効率な排水処理を実現する。

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写真1 〈クラゲール〉外観

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写真2 〈クラゲール〉の電子顕微鏡写真

 汚泥減容槽では、生物処理槽内で増殖した微生物を受け入れて自己分解を促進し、最終的に消滅させる。〈ゼクルス〉は、〈クラゲール〉による生物処理と、適切な汚泥減容槽の設計および運転管理との組合せで、ほとんど余剰汚泥を引き抜く必要がない。最終的には沈殿槽で固液分離を行うが、沈殿槽の代わりに膜分離(MBR)を採用することも可能で、排水の回収再利用も容易である。

 〈ゼクルス〉はクラレの工場での数年にわたる実績を踏まえ、積極的に国内外での展開を進めている。台湾の納入例では、〈ゼクルス〉とイオンまで除去可能な逆浸透(RO)膜とを組合せ、地域で初めて排水の85%以上を回収再利用することに成功した。さらに、産業廃棄物となる余剰汚泥が発生しないため、排水処理コストの大幅な低減にも寄与している(写真3、図1)。

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写真3 台湾での〈ゼクルス〉施工例

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図1 〈ゼクルス〉フロー図

 バラスト水管理システム〈MICROFADE〉は、高精度フィルターによるろ過工程と低濃度活性物質注入による殺滅工程を複合したシステムである。省電力、省スペース、安定的な性能、船舶への搭載の容易化という特長を有している。

製造工程で環境に配慮した領域

*〈ニュー・エコマジック〉
 面ファスナー〈マジックテープ〉には、留める力の維持や耐久性の低下を防ぐために、裏面に補強用のバックコート剤としてポリウレタン系の樹脂を使用している。この樹脂は溶液粘度などを調整するために有機溶剤を用いる必要があった。同社では開発を進め、この樹脂そのものを使用せずに、熱融着という手法で高品位、高品質なマジックテープの生産に成功した。

*〈クラリーノ・ティレニーナ〉
 人工皮革のトップブランド〈クラリーノ〉の環境対応型素材。水溶性のポリマーである〈エクセバール〉を使用し、製造工程における有機溶剤の排出がなくなった。

環境フレンドリーな商品領域

*ビニロン
 ビニロンは綿、麻などの代替繊維として用途が開発されたが、近年では技術開発によって高機能素材として成長を遂げている。親水性が高く、高強力で耐候性(紫外線による劣化が少ない)に優れ、アルカリや酸にも強い。こうした特徴を生かし、アスベストの代替として繊維強化セメント(FRC)に利用されている。

*〈エバール〉(ガスバリア性樹脂)
 プラスチックの中で最高レベルのガスバリア性を持つ機能性樹脂。酸素を遮断して内容物の酸化(変質、劣化)を防ぐため食品の容器に多用されている。2015年4月には食品包材に使用されるバイオマス由来のバリア素材〈PLANTIC〉フィルムを展開するオーストラリアのPlantic社を買収。バリア素材のリーディングカンパニーとして更なる事業拡大を図る。また、自動車のガソリンタンクへの使用も進んできており、〈エバール〉を他の汎用樹脂に挟んで使用するとガスバリア性によってガソリンから揮発するVOC(揮発性有機化合物)の漏洩も防止する。

*〈ジェネスタ〉(耐熱性ポリアミド樹脂)
 〈ジェネスタ〉は、高耐熱性(融点が306℃)、低吸水性、優れた摺動性(摩擦に強い)などの特色を持つ。近年、電機製品の鉛フリー化が進んでいるが、鉛フリーはんだは融点が高くなるため、電子部品に使用する樹脂にも高い耐熱性が要求される。〈ジェネスタ〉はSMT(表面実装技術)対応の高耐熱材料として高い評価を受けている。 さらに液晶ディスプレイのバックライト光源が省エネ型のLEDに切替わるのに伴い、反射板材料としての需要も増えているほか、金属代替で自動車部材としても採用が進んできており、その燃費向上等に貢献している。

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環境改善に寄与する「工業膜」

 クラレの工業膜事業は30年以上の歴史を有し、多くの実績や経験を備えている。特に最近では産業の高度化に伴い、半導体、太陽電池および液晶・プラズマディスプレイ製造工程などで使用される超純水製造装置の前処理、超純水の回収および有価物の回収などの用途で高い評価を受けている。また、酒、醤油、食酢等各種食品の仕上げろ過や、医薬・医療用水の精製などの用途でも広く使用されている。

 また同社の工業膜で最近注目されているのが、クリプトスポリジウムなどの病原性原虫の除去に特化した大孔径膜〈MEGAFLOW〉。公称孔径は2μmで、通常の膜(0.1μm程度)に比較して10倍以上大きい。細孔を大きくすると膜としての形状を保つのが困難であったが、独自の製造技術によって完成させた。

 〈MEGAFLOW〉は、その孔径の大きさに起因して低い圧力(省エネルギー)での大量処理(通常の数倍のろ過速度)が可能となり、水道向けに納入実績がある。この特性を生かし、引き続き各種産業分野での用途開発を継続している。

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