環境ソリューション企業総覧2015Web
東京ガス

東京ガス

■環境ソリューション企業編 05_省エネルギー

家庭用燃料電池「エネファーム」の
新製品開発について


東京ガス

www.tokyo-gas.co.jp/



開発の背景

 東京ガスでは1998年よりPEFC(固体高分子形燃料電池)を用いた家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの開発に取り組み、パナソニック(株)との共同開発により製作したシステムを用いて国の実証研究や大規模実証事業へ参画して各種評価を実施した後、2009年5月に「エネファーム」の商品名で世界に先駆けてシステムの一般販売を開始した。その後、2011年、2013年とモデルチェンジを重ね、コスト低減、耐久性および設置性の向上といった改良を続け、国を中心とした普及支援策の後押しも受け、着実に販売を拡大してきた。

 この間、震災や気象災害の増加をきっかけとしたエネルギーセキュリティや省エネに対する意識の高まり、都市部に多い集合住宅への販売ニーズの増大に応えるべく、2014年には世界初となる「マンション向けエネファーム」を開発、また系統電力が停止した場合でも都市ガスおよび水道供給が継続している場合に自動的に発電を継続、あるいはエネファームを自立起動させることを可能とする「停電時発電機能オプション」を開発し、いずれも同年に販売を開始した。このような取り組みを通じ、2015年1月時点での東京ガスにおけるエネファームの累計販売台数は4万台に到達した。一方で他のエネルギー事業者やメーカーの努力もあり、全国レベルでは2014年9月に累計導入台数10万台を突破((一社)燃料電池普及促進協会の集計による)するなど、普及拡大が進んでいる。

 2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画において、エネファームを2020年に140万台、2030年には530万台の普及を目指すとの目標が掲げられており、また東京ガスでも2020年での累計販売台数30万台を目指している。このような目標を達成して普及を実現するためには、より一層の機器コスト低減や設置性向上を通じて、エネファームを導入頂けるお客さまの裾野を拡大していく必要がある。このような認識のもと、東京ガスとパナソニックはエネファーム新型機の開発に取り組み、戸建住宅向けとしては第4世代となる新型機を開発し、2015年4月に販売を開始した。本稿ではその商品仕様および特長を紹介する。

製品の概要

 新型機(写真1)は最大発電出力を700Wに変更した一方で、発電効率や排熱回収効率は前世代機と同等の性能を実現している。前世代機からの大きな変更点としては以下が挙げられる。詳細は次項で解説する。

 

s-5_01_01_2
写真1 エネファーム新製品の外観(左:一体型、右:別置型)

・機器コストの低減

 新型機は、システムの簡素化などを通じて、前世代機よりも30万円低価格、初代機に比べると半額以下となる希望小売価格160万円を実現している(税別、設置工事費別、停電時発電継続機能なしの燃料電池ユニット、標準タイプのバックアップ熱源機の場合)。

・停電時発電継続機能の内蔵

 停電時に電気を使いたいというニーズに対応しやすくするため、前世代機では別付けのオプション品であった「停電時発電継続機能」を燃料電池ユニットに内蔵した機種を新たに追加した。この機能により、停電発生時点でエネファームが発電していた場合において、500W以下の電力を最長4日間使用することが可能となる。停電時発電継続機能付きの機種の希望小売価格は167万円である(税別、設置工事費別、標準タイプのバックアップ熱源機の場合)。

・2タイプ(バックアップ熱源機一体型および別置型)の貯湯ユニットをラインナップ

 これまで以上に多様な設置スペースに柔軟に対応するため、貯湯ユニットはバックアップ熱源機との一体型および別置型の2種類を開発した。これにより、設置スペースに制約の多い都市部の戸建住宅などに対して、エネファームをより導入しやすくなることが期待される。

製品の特長

 ここでは、前項で示した主な改良箇所の詳細を説明する。

・機器コスト

 機器のコストダウンは、システム簡素化により燃料電池ユニットの部品点数を前世代機より約15%削減したことや、発電の基幹部品であるセルスタックの内部構成見直しによる白金量の削減、さらに都市ガスから水素を生成する燃料処理機に含まれる貴金属触媒の量を低減することなどにより実現されている。システムの簡素化に伴い燃料電池ユニットの重量も約15%(90kg→77kg)軽量化された。また機器の高さも100mm小さくなっており、これにより軽トラックでの輸送が可能となるなど、機器以外の部分でのコスト低減も期待できる。

・停電時発電継続機能

 停電時発電継続機能は、エネファーム前世代機において別付けオプション品として用意されていた。これは、住宅用分電盤と類似形状の「発電継続用切替ユニット」を屋内に設置し、エネファーム、および室内に設置する「停電時専用コンセント」と配線接続させるものである。これに対し本機では、発電継続用切替ユニットの持つ機能を燃料電池ユニット本体に内蔵させることにより、設置スペース低減や施工性向上を実現するとともに、価格も従来品より低価格となる7万円(ベース機からのアップ分、税別)に抑えることができた。また外観形状は本機能の内蔵有無に関わらず同一である(写真1参照)。

 本機能の配線例を図1に示す。平常時にはエネファームの発電電力は系統電力とともに住宅用分電盤を介して家庭内の各負荷に供給される(停電時専用コンセントには通電しない)。系統電力が遮断した際、エネファームが発電しておりかつ都市ガスと水道が供給されている場合は、発電ユニット内部で回路が切り替わり、発電電力は停電時専用コンセントに供給され、それに接続された機器を使用することが可能となる。発電電力の一部は貯湯ユニットやバックアップ熱源機にも自動的に供給されるため、給湯や床暖房などの温水機器を利用することもできる。これらも含めた最大使用可能電力は500Wであり、停電前の発電開始時刻を起点として最長約4日間(96時間)の連続運転が可能である。

 

s-5_01_02
図1 停電時発電継続機能付きシステムの配線および停電時の動作イメージ

 一方、同じく前世代機に用意されたもう一つの停電時発電機能オプション(バッテリーを搭載しており、停電発生時にエネファームが発電停止中であっても自立起動して発電させることができるタイプ)は、引き続き新型機でも組み合わせ使用が可能である。自立起動が可能なほか、650Wまでの電力使用で最長約4日間、1150Wまでの使用で最長約2時間の運転が可能となっている。

・貯湯ユニット

 第1、第2世代の貯湯ユニットはバックアップ熱源機と貯湯タンクが同一筐体の「一体型」、第3世代ではそれらを分離した「別置型」であったが、今回は一体型および別置型を同時にラインナップすることで、よりお客さまニーズを満足する設置形態を実現することを可能にした。それぞれの設置パターン例を図2に示す。一体型については、専用のバックアップ熱源機を開発して内蔵したことにより、第2世代機の貯湯ユニットに比べて奥行き寸法が80mm小さくなり、この結果、第2世代機や第3世代機と比較して、設置に必要なスペースが約15%削減されている。一方、別置型では、バックアップ熱源機を分離したことにより貯湯ユニットの横幅が一体型より小さくなっており、各ユニットの設置に大きいスペースを必要としない。以上から、一体型は「より省スペースでの設置が可能」、別置型は「設置の自由度が高い」といった特長を有していると言える。

5_01_03
図2 エネファーム新製品(バックアップ熱電源機一体型)の設置例

 

 前述の燃料電池ユニットにおける停電時発電継続機能内蔵の有無と組み合わせ、4種類のシステムバリエーションから商品を選択することが可能となる。

今後の展望

 上述の通り、コストダウンや設置性の向上に主眼を置いた今回の開発の結果、よりお客さまに受け入れられやすい新型機の発売に結び付けることができた。 また、今後想定される電力・ガス小売り事業の全面自由化や、2020年オリンピック/パラリンピックを契機の一つとしたエネルギーシステム変革の議論など、近い将来にも取り巻く環境の大きな変化が見込まれているが、その中にあってもエネファームの提供する価値やサービスが必要なものと位置付けられるべく、商品のさらなる最適化を図っていき、エネファームの普及を通じてお客さまの快適な暮らしの実現と環境・エネルギー問題の解決に貢献していきたいと考えている。


 本件開発にあたり、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務により得られた成果を一部活用しており、関係各位に感謝します。

« »