環境ソリューション企業総覧2015Web
日立製作所

日立製作所

■環境ソリューション企業編 04_再生可能エネルギー

資金調達から高効率メガソーラーの供給、
長期保守を一括提供。
日本の地形に適した
ダウンウィンド方式風力発電システムを供給、
洋上風力の開発にも参加


日立製作所

www.hitachi.co.jp/


 日立製作所は導入量が増えている再生可能エネルギー分野においてメガソーラー(大規模太陽光発電システム)事業と風力発電システム事業を展開している。メガソーラーにはグループの技術力と製品力を結集し、高効率発電システムを設計、納入できる。資金調達から稼働後20年にわたる運転・保守までメガソーラーにかかわるソリューションを一括提供できるのも日立の強みだ。風力発電システムでは日本の地形に適したダウンウィンド方式を展開。「海に浮く発電所」として実用化が期待される浮体式洋上風力発電の実証事業にも参画している。

 日立製作所が丸紅子会社の大分ソーラーパワー(大分市)から設計・調達・製造・据付・調整までを一括で受注したパネル出力82メガワット(メガは100万)のメガソーラーが2014年4月に運転を開始した。敷地は東京ドーム約22個分(約1万平方キロメートル)。使われる太陽光パネル34万枚を1列に並べると東京から大阪間の距離に相当する500キロメートルとなる。年間の予想発電量は一般家庭約3万世帯分に相当する8700万キロワット時。全国各地で稼動や計画されているメガソーラーの中でもトップ級の規模だ。規模の大きさが注目される案件だが、日立はグループの総合力を結集し、より多く発電ができる高効率メガソーラーの建設を進めている。

 日立はメガソーラーに3つのアプローチをしている。1つ目が大分市のようなEPC(設計・調達・建設)。2つ目がパワーコンディショナー(電力調整装置)や変圧器などのメガソーラー関連機器の販売。そして3つ目が運転や保守サービスを提供するO&M(オペレーション&メンテナンス)だ。グループ金融会社である日立キャピタルとも連携し、メガソーラー建設に必要な資金調達の支援もできる体制を整えた。日立は資金からEPC、運転開始後のO&Mまでメガソーラーにかかわる製品・サービスをワンストップで提供できる。

4_02_01
写真1 大分ソーラーパワー株式会社 大分ソーラーパワー

最高水準の変換効率パワーコンディショナー、低損失の変圧器を提供

 EPCでは長年の電力会社向け事業で蓄積した経験や技術を生かす。年間発電量が最大となるように設計段階で日本の気候に合わせた太陽光パネルの容量を検討する。太陽光パネルの設置角度や方向も最適化し、パワーコンディショナーなど関連機器の組み合わせも考慮して高効率メガソーラーを設計する。日本で多い曇りや雨天時など日射量が低い時でも発電量を増やし、発電量の最大化を追求する。

 機器販売では日立グループの技術力を結集した高効率で信頼性の高い製品をとりそろえた。その一つがパワーコンディショナー。パワーコンディショナーは太陽光パネルでつくった電力を系統に送れる品質に整える役割をする装置。太陽光パネルからの直流電力を交流電力に変換する時の損失が小さいほど高効率になる。逆に損失が大きければ系統に送電できる電力が減ってしまい、メガソーラー事業者の売電収入の減少につながる。

 日立のパワーコンディショナーは直流から交流への変換効率で98%を達成しており、これは直流電圧600ボルト機(メガソーラー用)としてトップクラスの効率だ。直流の電圧230から600ボルトの広い範囲で常に最大の出力を出せるのも強み。太陽光パネルの発電は天候に左右されるため、いつも最大電圧になるとは限らない。入力電圧が低い時でも電流を多く引き出し、最大出力になるようにする。

4_02_02
写真2 DC1,000V対応 660kWパワーコンディショナー

 直流電圧1000ボルト対応のパワコンもラインアップに加えた。変換効率98.8%は1000ボルト対応機として最高レベルだ。発電システムが高電圧化されると効率よく電力を送電できるようになるのでメガソーラー事業者のメリットが増える。加えてメガソーラー建設の工数低減の効果もある。発電システムを構築する時、太陽光パネルを直列につなげたストリングを構成する。日本で主流となっている600ボルトの発電システムだとストリング1列を太陽光パネル13から14枚で構成する。1000ボルトに高電圧化されると21から22枚に増やせる。メガソーラー全体としてストリング数が減るため建設時の工数が低減されるのだ。ケーブル全長も短くなり、資材にかかるコスト低減も期待できる。

 機器販売ではアモルファス変圧器も特徴だ。メガソーラーで変圧器はパワコンからの電力を電力会社の系統の電圧に昇圧させる役割をする。

 日立産機システム製のアモルファス変圧器は、電気を通すコイルが巻かれた鉄心素材に電気特性が向上するアモルファス合金を使った。変圧器には電気の使用による負荷の有無にかかわらず発生する無負荷損失(待機電力)がある。アモルファス変圧器は特に無負荷損失を大幅に抑えた。夜間は待機、昼間の大部分は部分負荷運転となるメガソーラーに最適な機器といえる。

4_02_03
写真3 アモルファス変圧器

 通常の変圧器(日立製トップランナー)で発生する損失(負荷損失プラス無負荷損失)を、アモルファス変圧器は24%低減できる。無負荷損失に限れば3分の1程度に抑えられる。日立がEPCを担当する大分ソーラーパワーのメガソーラーにも高効率パワーコンディショナー(容量500キロワット、入力最大電圧660ボルト)とアモルファス変圧器を導入する。

 太陽光パネルの選定ではパネルそのものの発電能力に加え、長期信頼性も重視される。再生可能エネルギーで発電した電力の全量固定価格買い取り制度による売電期間は20年。設置から時間が経過し、パネルの発電量が低下するとメガソーラー事業者の売電収入が減る。最近では高温多湿などの条件が重なると劣化が起きて出力が低下する「PID現象」に関心が高まっており、パネルには長期信頼性が求められている。

 日立は自社でパネルメーカー各社の太陽光モジュールを独自に試験し、信頼性を確認している。中央研究所では温湿度を自由に設定し、疑似太陽光を照射できる装置による加速試験を実施。降雪のある青森県六ケ所村、海外沿いの大みか事業所でもそれぞれ実運転で性能を評価し、長期信頼性の確保に努めている。

24時間365日、全国約600人体制で保守サービス

 O&Mサービスは手厚い体制を整えている。日立グループ各社と連携し、全国約300拠点に第3種電気主任技術者、第2種電気工事士などの有資格者が約600人おり、24時間・365日、メガソーラーで発電量低下などの異常があればすぐに現地に駆けつけて修理できる。

 遊休地の有効活用を目的にメガソーラーを設置する事業者が増えているが、電気の専門家が十分にいない事業者も多い。故障は発電量低下による売電収入の減少につながる。故障の内容によっては火災の原因になるため点検が重要だ。

 日立の保守サービスは電気の専門家の目で太陽光パネルやパワコン、架台、接続箱といった機器の日常的な点検や定期点検を代行し、部品交換も実施する。メガソーラー事業者の要望によるが、買い取り期間中の20年間にわたる保守契約では、何年後にどの部品を点検・交換するといった詳細な長期保守計画も策定する。

 遠隔監視サービスも提供している。クラウドを活用し、事業者にかわってメガソーラーの稼働を遠隔地から常時監視する。電力会社への売電量、パワコンの発電量、日射量や温度など各データを計測し、日報や月報として記録。故障が見つかれば速やかに担当者に連絡する。異常があれば故障発生箇所を特定し、修理にも当たる。電気の専門家が社内に少ない新規事業者にとっては頼もしい。

 2013年6月からは資金調達から20年の運営・保守までを一括で提供するソリューション事業を本格的に始めた。1メガワット以上のメガソーラー建設を計画している自治体・企業・個人向けに機器の提供だけでなく、経済産業省からの「設備認定」、電力会社との連系協議、日立キャピタルと連携した資金調達まで支援する。

風力でも大型受注

 日立製作所は風力発電システム事業でも大型案件の受注を獲得している。2012年12月、青山高原ウインドファーム(津市)が津市と伊賀市に増設する大規模風力発電所向けに発電設備容量(出力)2メガワットの風力発電システム40基を受注した。日立は発電所の造成工事から設計、製造、据え付けまでのEPCを担当する。2016年3月に18基、2017年3月に22基が順次、運転を始める予定だ。青山高原ウインドファームはすでに20基の風力発電システムが運転している。全体の発電設備容量は現在の15メガワットから今回の増設によって95メガワットとなり、日本一の大規模風力発電所となる。

 この他にも受注を積み上げており、現在(2014年8月時点)の受注数は約160基に達する。また2013年に国内に導入された風力発電システムの48%が日立製となっており、2012年に続いて国内シェアトップ(出典 World Market Update 2013,BTM)。今後もシェアトップを継続していくことが目標だ。

 全量固定価格買い取り制度の開始によって風力発電システムの新設の増加が予想される。日立は2012年7月、富士重工業から風力発電システムの事業譲渡を受け、日立事業所(茨城県日立市)での開発、製造を開始し、生産、開発体制を強化した。EPCから保守までの一貫体制もあり、拡大する需要を取り込める体制を整えた。

 また日立は福島県沖での浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業、長崎県五島列島沖の浮体式洋上風力発電実証事業にも参画する。洋上風力は陸上に比べ設置への制約が少ない。また風を遮る物がなく陸上よりも安定的に強い風を得られるため、今後の設置拡大が期待されている。

4_02_04
写真4 ウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所
【写真提供:株式会社ウィンド・パワー】

ダウンウィンド方式、吹き上げる風を高効率に捕捉

 日立の風力発電システムの最大の特徴は「ダウンウィンド風車」にある。風力発電システムの構造を大きくわけると風を受けるブレード(羽根)、ナセル(本体)、タワー(塔)から構成される。ナセル内部にはブレードからの回転を受けて回転数を上げる増速機、発電機などが収納されている。

 一般的なアップウィンド方式では風上側にブレード、風下側にナセルとなる。ダウンウィンド方式はその逆で風上側にナセルがあり、ブレードは風下側になる。アップウィンド方式から見ると背後から風を受けて発電する格好となる。

 また、風車を横から見ると、アップウィンド方式のブレードは風に対して斜め上方向に傾いている。日立のダウンウィンド方式だと風に対してブレードは斜め下向きなる。このため斜め下方向からの風、つまり吹き上げてくる風をブレードは垂直に受け止められる。アップウィンド方式は吹き上げる風だと効率が落ちるが、ダウンウィンド方式は効率良く風を捉えることができるのが強みだ。山岳や丘陵では地形にそって風が吹き上げてくる。日本の地形には山岳や丘陵が多く、ダウンウィンド方式は日本の地形に適した風力発電システムと言える。

 風向・風速をより正確に計測できるのもダウンウィンド方式の長所だ。風向・風速計はナセルに設置するため、アップウィンド方式だとブレードの影響を受けた風を計測することになる。ダウンウィンド方式は風上に風向・風速計が位置するのでブレードの影響がなく乱れのない風を計測でき、最適な運転制御ができる。

 浮体式洋上風力にもダウンウィンド方式の強みを発揮できる。海上に風力発電を設置する洋上風力には浮体式と着床式がある。着床式は海底に基礎をつくってタワーを動かないように固定する。陸上にある風力発電システムと同じだ。

 浮体式は浮かせた構造。水深が50メートルを超えると海底に基礎をつくるコストが跳ね上がるため浮体式が有利とされる。洋上風力の導入で先行する欧州は遠浅なので着床式でいいが、遠浅が少ない日本では浮体式の需要が伸びると見られる。

 その浮体式洋上風力発電システムは風を受けると風圧で風車が傾く。ブレードが風上に対して上向きのアップウィンド方式は、風を受けるとより上向きに傾き、のけぞるような形になって発電効率が落ちる。ブレードが下向きのダウンウィンド方式は風に押されることで風向きとブレードが垂直になるため、効率良く風を捉えることができる。

 着床式洋上風力でもダウンウィンド方式は特徴を生かせる。自然とロータ(回転翼)を風下側に向ける風見鶏効果によって最大風荷重を低減できる。日本では毎年台風が通過するが、この暴風雨時に風力発電システムにかかる荷重を低減するのに有効で、アップウィンド方式に比べ基礎工事コストの低減が期待できる。ウィンド・パワーグループの「ウィンド・パワーかみす第1・第2洋上風力発電所」には着床式のダウンウィンド方式風力発電システム15基(1基の出力2メガワット、合計30メガワット)が設置されている。そのうち7基は東日本大震災による震度6強の揺れと、高さ約5メートルの津波を経験したが運転を継続。信頼性の高さも証明した。

4_02_05
写真5 作業風景

5メガワットに大型化、低風速向けも開発

 新しい風力発電システムの開発にも取り組む。洋上向けに出力5メガワットのダウンウィンド方式の開発にも着手した。ダウンウィンド方式としては世界最大だ。ロータ径は2メガワットの「HTW2.0―80」が80メートルなのに対し、5メガワットだと126メートルまで大型化する。洋上で設置作業ができるよう新技術を投入してナセルなどは軽量化する。2015年度中に初号機の運転を開始する計画だ。

 低風速用の「HTW2.0―86」も開発し、新潟県胎内市で初号機の運転を開始している。従来の「HTW2.0―80」は山岳・丘陵への設置に強みを持つが、「HTW2.0―86」は陸上全般向けとして開発した。従来機に対して低風速での発電量が増えるので風力発電事業者は売電収入を確保しやすい。従来機と同様に山岳地、丘陵地にも設置できる。

 また、高風速用の「HTW2.1―80A」も開発中だ。国際最高基準を超える風速クラスを有していることが特長で、秋田県秋田市で初号機を建設することが決まっている。

 ダウンウィンド方式の強みを生かし、国内の陸上市場から今後は洋上市場で納入実績を積み上げる。そして今後は海外市場への進出も視野に入れている。日本と気象条件が似ているアジア市場が当面のターゲットだ。

 

 

green_s1

機器をパッケージ化、メガソーラーを簡単設計

 日立はメガソーラーに必要な機器を選定し、パッケージ化した「メガキット」を販売している。高効率パワコンとアモルファス変圧器に加え、太陽光パネル、接続箱、スイッチギア、日射計、気温計、監視パッケージなど機器一式をとりそろえた。1.3メガワットまたは2.6メガワットのメガソーラーを構築するのに標準的な機器がそろっている。
 全国各地でメガソーラーの設置が増えているが、設計や建設に不慣れな事業者も多い。新規事業者は「メガキット」を使うことで設計の手間を省ける。
 「メガキット」の活用で必要な手続きの負担も軽くできる。代表的な手続きとして経済産業省から「設備認定」の取得や、電力会社との連系協議がある。「メガキット」の各機器は導入実績が多く、こういった手続きもスムーズにできると期待される。

 

green_s1

浮体式洋上の実証に参画

 洋上風力は「海の発電所」と呼ばれる。海には遮蔽物がなく、陸上よりも強い風が安定して吹く。騒音などの心配も少ない。環境省が2011年にまとめた「再生可能エネルギーポテンシャル調査」によると日本には洋上風力は16億キロワット分を導入できる可能性がある。陸上風力の2億8000万キロワットを大きく上回る。
 浮体式となれば「海に浮く発電所」と言える。未来を連想させるが、実用化が目前に迫っている。
 日立は浮体式洋上風力の実用化を目指す2つの実証研究事業に参画している。一つが経済産業省による「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」だ。日立は丸紅(プロジェクトインテグレーター)、東京大学(テクニカルアドバイザー)、三菱商事など11者からなる「福島洋上風力コンソーシアム」に参加。福島沖に設置される浮体式風力発電システム向けに2メガワットのダウンウィンド型風車1基を三井造船から受注している。2013年11月に運転を開始した。日立は洋上変電所の開発も担当する。
 日立が参加するもう一つの実証は環境省による「浮体式洋上風力実証事業」。戸田建設や京都大学など5者が参加する。五島列島(長崎県五島市)沖に日立製ダウンウィンド方式風力発電システム1基を導入し、2013年10月から稼動を開始している。
 浮体式洋上風力は世界で見ても実証段階にあり、技術などはまだ確立されていない。経産省や環境省の実証事業が順調に進めば、日立製ダウンウィンド式風車を浮体式洋上風力に展開させる足がかりとなる。世界の洋上風力市場をリードできるチャンスだ。

4_02_06
写真6 2MWダウンウィンド型浮体式洋上風力発電設備【写真提供:福島洋上風力コンソーシアム】

« »