環境ソリューション企業総覧2015Web
東レ

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■環境ソリューション企業編 02_水質・土壌対策

世界の“水問題”解決に貢献する
東レの水処理膜技術


東レ

www.toray.co.jp/



地球温暖化や人口増、
新興国の工業化による水不足や水環境汚染がさらに加速

 地球温暖化に関する議論が世界中で繰り広げられる中、地球規模での人口増加や新興国での産業の発展も加わり、直面する大規模な水不足対策、安全な生活用水確保や、下廃水による水環境汚染への対策が急務となっている。たとえば、2012年に国連環境計画が報告した内容によると、今年2015年には世界で8億人が飲料水すら手に入らない状態であり、25億人が衛生環境の悪化に見舞われるとしている。このように世界が直面している水問題に、水処理膜というキーテクノロジーで立ち向かっているのが、東レ株式会社(以下、東レ)である。

東レ 2つの強み、
その1“すべての種類の水処理膜を自社開発し製品化”

 水処理膜が手がける“水”には、河川水、地下水、海水、下水、産業廃水など多種の分類が有り、それが地球規模で様々に存在する。そのため1種類の膜製品で全てを解決出来るものではなく、同時に日本で生産し世界へ膜製品を届けるだけでは解決できない。

 まず、膜という製品について。東レの水処理膜は1968年に研究開発を始めた。80年代の半導体事業の活性化に併せて開発した超純水製造用の逆浸透(RO)膜の供給を皮切りに、RO膜の高性能化にもとづき海水やかん水淡水化のほか、各種工業プロセスで使う水の製造、廃水再利用分野へと対象領域を拡大してきた。同社はイオンなどの水中溶存物質すべてを除去できるRO膜のほか、中・高分子量溶存物質を除去するナノろ過(NF)膜、高分子物質やウイルスを除去する限外ろ過(UF)膜、微粒子や細菌を取り除く精密ろ過(MF)膜など、全4種類の膜を手がける総合膜メーカーとなった。加えて、下廃水を処理し再び水資源とする膜分離活性汚泥法(MBR、メンブレン・バイオリアクター)向けに浸漬膜モジュールを開発し、さらに前述の膜を複数組み合わせて適用するなど、水処理膜製造にとどまることなく、膜を利用した水処理技術の領域も手がけている。

RO膜の全出荷量が生活水換算で1.7億人分を突破

 今ではその名前を知る小学生がいるくらい一般的になった海水淡水化を行うプラント向けRO膜の全出荷量は、水量換算で日量1,060万立方メートル。4,200万人の生活水をまかなう量に相当する。世界の大型海水淡水化プラントでも日々海水から真水を生み出しており、アルジェリア(マグタ)で14年に稼働した規模で世界第2位の海水淡水化プラント(日量50万立方メートル)にも採用された。またシンガポールで13年に稼働したアジア最大の海水淡水化プラント・チュアス(日量31万8,500立方メートル)で使われている。10万立方メートル超の大型海水淡水化プラント向けで東レが初めてRO膜を納入したトリニダード・トバゴ(日量13万6,000立方メートル)は2002年に運転開始していて、実に10年以上もの安定した稼働を続けている。

 かん水淡水化プラント向けRO膜でも、米国や中東、東南アジアを中心に豊富な実績を持つ。同膜の出荷量は水量換算で日量2,200万立方メートル。納入実績では最大規模の韓国(牙山、日量12万8,000立方メートル)を筆頭に、サウジアラビア(サルボク&ボワイブ、日量12万立方メートル)や、中国(寧夏、日量10万立方メートル)などに納めている。また世界で需要が急増する下廃水再利用プラント向けには、耐汚染性に優れた低ファウリングRO膜を市場に投入し、その出荷量は水量換算で日量400万立方メートルにもなっている。とりわけ、世界最大の膜法下廃水再利用プラントのクウェート(スレビヤ、日量32万立方メートル)や、同第2位の規模を誇るシンガポール(チャンギ、日量22万8,000立方メートル)などに納めるまでになっている。

 なお、世界中から水処理技術が集まるシンガポールでは、チュアス(海水淡水化プラント)、チャンギ(下水再利用プラント)などの大型プラント向けにRO膜を納めており、同国でのRO膜シェアは約7割にのぼっている。

 これら海水やかん水淡水化、下廃水再利用などの各プラント向けに出荷したRO膜は、水量換算で合計日量4,230万立方メートル。1.7億人分強の生活水に相当し、世界人口の約2.3%をまかなう規模にまで拡大した。

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写真1 トリニダード・トバゴ(ポイントリア)
    海水淡水化プラント(東レRO膜使用)

RO膜に続き、MF膜、UF膜、MBR用膜を世界で展開

 中空糸を活用したUF膜やMF膜は、飲料水(上水)製造用途でグローバルに需要が拡大している。東レは大型浄水場向けに高い耐久性や透水性を持つポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の大型中空糸膜モジュールを開発し、販売を始めた。国内では最大級の浄水設備、東京都水道局砧浄水場・砧下浄水所(日量8万8,000立方メートル)を始めとする大型案件を受注し、海外では韓国で初の日量1万立方メートル以上規模になったコンジュ浄水場(日量3万立方メートル)に続き、同国最大の浄水設備、ヨス浄水場(日量13万4,000立方メートル)にも採用が決まった。これまでの同膜累計出荷量は水量換算で日量150万立方メートルに達する。現在は北米での浄水処理用途、中東や中国での海水淡水化前処理用途、下水再利用用途への事業展開を進めている。

 環境問題に直結する下廃水処理分野では、微生物などを含む活性汚泥と膜を活用した膜分離活性汚泥法(MBR)が世界中で注目を集めている。処理水の水質が高く、設備の設置面積を縮小できることから、設備更新や処理能力の増強などでも需要が拡大している。捨てる水から使える水へ、東レはMBRに適したPVDF製の浸漬型平膜モジュールを開発し、販売を行っている。同モジュールは独自の製造技術により高い透水性を維持しながら、汚れに強いなど耐久性も両立。欧州でのパイロット実験でも、高い性能を示した。欧州や中国、中東、アジアなどの海外を中心に事業展開を進めており、サウジアラビア(ナジュラン、日量6万立方メートル)やUAE(アル・アイン、日量1万5,000立方メートル)などに納める。これまでの同膜累計出荷量は水量換算で日量60万立方メートルに拡大した。

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写真2 韓国水資源公社 公州浄水場(東レMF膜モジュール使用)

東レならではの水処理膜技術である統合的膜ろ過技術“IMS”

 RO膜、NF膜、UF膜、MF膜、全ての種類の水処理分離膜を自社開発でラインナップしている東レならではの先進水処理技術、それが複数の膜種を組み合わせて、最適な水処理を行う統合的膜ろ過技術“IMS”(Integrated Membrane System)である。

 水処理の対象原水は、例えば海水や河川表流水、下水もあれば産業廃水もあり、そして、処理の目的用途も飲用や再利用、単に汚濁物質の低減など様々である。これら様々な対象原水と用途に対し、全膜種を保有している東レではそれらを組み合わせた膜ろ過利用水処理システムを構築し、最高のパーフォーマンスとコスト削減を実現できる。

 例えば、海水淡水化でRO膜を目詰まりさせないようにする前処理に従来の砂ろ過よりもろ過性能の良いUF膜やMF膜を用いて効率的に濁質成分を除去したり、下水の再利用であればROの前処理に下水をダイレクトに生物膜処理するMBRを配したりと、IMSはこれからの水ニーズに合ったソリューションを提供できる。

東レ 2つの強み、
その2“世界中の拠点による水処理事業のグローバル展開”

 水問題解決のために東レの水処理膜が使われる水処理設備は世界中にある。つまり、その水処理設備を建設する会社も世界中にあり、さらにその設備で処理する対象の水も様々ということになる。水質でいえば、海水でも太平洋とアラビア湾で塩分濃度が異なったり、河川水でも日本の河川と大陸の河川とでは含まれる水質成分が異なったりするのである。

 東レは、前述のような水処理膜が使われる状況を鑑み、継続的なグローバル体制の強化に取り組んでいる。水処理膜の導入がいち早く進んだ米国では、北米・南米の米州地域向けにRO膜エレメントの製造や提案・販売、UFやMF、MBR向け膜の提案・販売を行うToray Membrane USA, Inc.(TMUS)社を06年に設立した。

 アジアでは、急増する中国での水需要の取り込みや水環境改善に精力的に取り組むため09年に製販一体の合弁会社藍星東麗膜科技(北京)有限公司(TBMC)を設立し、中国内の営業拠点を集約した。そのほかのアジアでは、インド他新興国での水需要増や太平洋地区での需要を取り込むため、シンガポールにも販売拠点を構築している。

 欧州ではスイスにあるToray Membrane Europe AG(TMEu)社を設立し、ドイツ、スペインなど欧州への膜販売を積極展開してきた。さらに2013年にはToray Membrane Spain S. L.(TMSP)社を設立し、水処理設備をグローバルに手がける建設会社の多い欧州で、きめ細かい対応が出来るようにしている。

 中東においては水不足対策として大規模な海水淡水化プロジェクトや下廃水のリサイクル利用など需要増加が見込まれることから、電力・淡水化分野でサウジアラビアを代表する戦略的企業グループのアブナヤン・ホールディング・カンパニーとの合弁会社Toray Membrane Middle East(TMME)を2014年に設立し、展開を加速している。

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図1 東レRO膜を採用している水処理プラントの代表例(2015年3月現在)

研究開発もグローバル化

 東レは生産関係部署の他に地球環境研究所、各種技術部署を組織する。また分析や評価を行う東レリサーチセンターや関連会社とも連携して研究開発を推進してする。

 地球環境研究所では有機合成や高分子化学、化学工学、生物工学などの研究者が融合し、新たな水処理膜や微生物処理、先端プロセスなどの研究を進めている。各種高性能な超純水用RO膜や海水淡水化用RO膜、下廃水再利用低ファウリングRO膜、PVDF中空糸MF膜およびUF膜、MBR用PVDF浸漬型平膜などの新製品を開発した。また難分解性成分処理や余剰汚泥減容化、生物汚染抑制、微生物学的水質評価、先端的促進酸化などで微生物やプロセス研究を進め、実績を上げている。

 メンブレン技術部では水処理膜関連の生産技術や品質改善のほか、研究で生み出した新規膜の商品化(モジュール化)や、上水、下廃水、海水淡水化の水処理プロセス開発などの商品・技術開発を進める。ここには化学や化工、機械、衛生工学、生物系の各技術者を投入し、実用化に直結した技術開発を推進する。

 研究開発のグローバル化も推進している。中国では上海にTARC水処理研究所を設置し、中国の水事情に合わせた水処理技術や製品の研究開発を進める。水処理に関する研究や情報が集積するシンガポールには、水処理の研究開発拠点Toray Singapore Water Research Center(TSWRC)を09年に設立。12年に同国で環境関連の研究や実証実験拠点が集積する「クリーン・テック・パーク」内に移転し、研究体制を強化した。従来の膜技術中心の研究開発から、水処理プロセスの管理など、周辺技術や管理ノウハウへと研究対象を拡充した。

 このように全ての膜をラインナップし、高い技術力で、グローバルな事業活動により、世界の“水問題”解決に向けた東レの取り組みが期待される。

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