環境ソリューション企業総覧2015Web
インタビュー JR東日本 白石仁史課長

インタビュー JR東日本 白石仁史課長

■特集 特集2 社会生活に恩恵をもたらす最新環境対策

北陸新幹線に施された沿線と車内の環境対策


JR東日本 白石仁史課長に聞く
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聞き手:環境ソリューション編集部


 北陸新幹線は、JR東日本とJR西日本が共同開発した最先端技術の成果が新型車両E7系に如何なく発揮されている。とくに沿線環境を重視した騒音対策や、乗客に快適な空間をもたらす「和の未来」をコンセプトとした車両デザインは、開発者たちの人びとに対するやさしさを十二分に、感じさせてくれる。

 ここでは、JR東日本 鉄道事業本部運輸車両部車両技術センター課長新幹線車両グループリーダー 白石仁史氏に聞いた。

エネルギー新技術―全行程で3回の周波数変換をどう実現するか

 新型車両E7系で、開発者たちがこだわりをみせたのは、騒音における環境対策だ。

 騒音対策の新技術をご紹介する前に、北陸新幹線ならではの新技術にふれたい。実は、北陸新幹線では、たとえば東海道新幹線が電源周波数60Hzで走行するのに対して、東京―金沢間において50Hz及び60Hzの2種類の電源周波数を巧みに切り替えている。しかも、走行しながらの周波数切替えである。これは、長野新幹線では軽井沢で50/60Hz変換を行った技術をいわばブラッシュアップしたものだ。したがって、北陸新幹線では東京―軽井沢間を50Hz、軽井沢―上越妙高間を60Hz、糸魚川付近を50Hz、そして黒部宇奈月温泉―金沢間を60Hzといった電源周波数のもと走行しており、したがってこの間3回もの周波数変換を行うというプロセスを経ている。実はこの周波数変換は、東京―金沢間において東京電力、中部電力、東北電力、北陸電力の4電力会社が管轄する地域を走行するために行われているもので、このエネルギー新技術は、最近では珍しいものだ。E7系にはこの新技術が導入されており、写真1には異周波に対応した主変換装置を示した。

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写真1 周波数変換のための主変換装置

騒音抑制をめざした環境対策

 北陸新幹線では、とくに沿線の騒音対策には最大限の注力を払っている。

 まずは、先頭車両の形状だ。写真2のようにE7系では、シンプルな流線型形状「ワンモーションライン」が採用された。これは、幾多の風洞実験を経て最高速度260km/hで走行した時に、最も騒音を抑制できることが判明したからである。また、高速でトンネルに入った際にトンネル微気圧波等によってもたらされる出口で発生する音も抑制させる効果を生み出せるようになっている。また、冬期には積雪の中を走行することになるので、いわゆる雪かき機能の装置(スノウブラウ)が不可欠だ。しかし、この装置に正面から風が吹き付けるとかなりの音が発生する。そこで、それを軽減させるための装置も取り付けられた(写真3)。

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写真2 ワンモーションラインの先頭形状

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写真3 スノウブラウ(雪かき装置)による騒音を軽減させる機能。
    車両下部の点が4つ見える部分

 さらに、音を発生する要因として、パンタグラフもあげられるのである。そこで、通常の電車で目にするひし形状のものではなく、写真4のようなシンプルかつ空力特性にすぐれたシングルアーム形状のパンタグラフが採用された。これで、騒音低減を実現させている。これは、先のE5系に導入されたものが採用された。そのほか、ワイパーも騒音を発生させる原因としてあげられるので、これも風洞試験や流体シミュレーションなどを経て、正面から受ける風の量が極力少なくなるよう風の流れに沿って取り付ける設計となっている(写真5)。また台車も走行速度によって騒音のもとになる場合も考えられるので覆うことが行わるが、E7系は最高速度260km/hなので、ほぼ半分覆えばすむようになっている。

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写真4 シングルアーム形状のパンタグラフ

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写真5 ワイパーにも騒音軽減の工夫

快適なのり心地を実現する車内環境への配慮
―インテリアデザインのコンセプト「和」

 E7系では、乗客へ配慮した車内環境対策も随所に施されている。特に“グランクラス”では、快適な乗り心地を実現させるフルアクティブサスペンションが採用されている。図1がそうで、これは動揺防止制御装置と称され、センサで検知された振動レベルを制御装置で処理、アクチュエータに指示し、特に左右の振動を低減させるといった乗り心地向上のための対策がとられている。

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図1 フルアクティブサスペンションの仕組み

 また、E7系は“和”をコンセプトとした価値を、インテリアデザインに反映させているといった、E7系ならではの内装・外観に凝ったセールスポイントが自慢だ。たとえば、“グランクラス”のデッキには、布地の質感をイメージさせるパネルが配置されており、日本の春夏秋冬をモチーフとしたデザインで、おもてなしの心を表現している。また車内は日本建築の美しさや漆塗りの深い色彩などで重厚な空間を実現している(写真6、7)。

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写真6 グランクラスのデザイン

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写真7 グランクラスの社内

 この車内の静けさは格別で、前述のフルアクティブサスペンションによって、たとえばテーブルに鉛筆を立てても倒れないほどであるといい、また外部の景色が見えないようにカーテンをしめていると、いつ発車したのかわからないほど、というエピソードもある。座席は本革シートで電動リクライニング式だ。なお、グリーン車及び普通車も含めて、列車の全座席はビジネスマンにはうれしいコンセント装備であり、かつ全シート手かけ部分には座席番号を点字表記するといった配慮もなされている。そのほか、全車内は新幹線では初めてLED照明による省エネ化を実現させた。この結果、車内照明電力はE2系(長野新幹線E2―0の12両分)に比べて約44%削減した。また、客室はじめデッキ、通路には防犯カメラを、客室、トイレ、多目的室には対話式非常通報装置を設置するといったセキュリティ対策も施されている。

JR東日本・西日本のコラボが実現させたE7系の最新技術

 E7系は、初めてJR東日本及びJR西日本のコラボレーションにより、お互いの納得に基づいて開発された。前述の長野新幹線のほか、概ねは東北新幹線の技術に基づいている、という。東北新幹線の開発期間がおよそ10年なので、要素研究を含めると20年に及ぶ実に献身的な研究開発努力で実現された。万が一の地震発生時にも、極力短時間で停止可能なブレーキシステムがE7系には導入された。こうした東西JRの開発成果のもと、トラブルも僅少レベルになっている。前述した開発技術の最大のキーポイントである騒音対策はまさに、東西JRの開発努力の賜物といえる。現在の12両編成で最高速度260kmの騒音と8両編成で260km/h走行の場合の騒音はほぼ同じという成果をこのたび達成している。また6乗則といって、騒音は走行速度の6乗に比例するという。いまの最高速度360km/h達成をめざすべく、JR東日本によりさらなる精力的な開発努力が続けられているところだ。

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