環境ソリューション企業総覧2015Web
インタビュー 菱熱工業 秋元宏行氏

インタビュー 菱熱工業 秋元宏行氏

■特集 特集2 社会生活に恩恵をもたらす最新環境対策

加速する植物工場構築への取組み


 

菱熱工業 秋元宏行氏に聞く
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聞き手:環境ソリューション編集部


 

 植物工場への取組みが活発化している。ここでは、野菜の発芽から育苗、定植など栽培に必要な全プロセスが整備されているとともに、蛍光灯やLED等人工光照射による光合成及び温・湿度、CO2濃度ほか栽培に不可欠な環境要素の制御とも相俟って野菜栽培を行えるようになっている。この結果、防虫や無農薬等の対策がなされた、栄養豊富な安全かつ安心な野菜をいつでも収穫できるという仕組みだ。

 ここでは、建設業を主業務としてこの分野に新規参入、そしてコンビニエンスストア等に収穫した野菜を納入する実績豊富な菱熱工業冷熱ドメイン技術営業秋元宏行氏に植物工場の最新事情を聞いた。

テストプラントで綿密な植物工場機能をテスト、
福井にて本格的工場をオープン

 植物工場は、大きくは完全人光型及び太陽光型に分けられる。ここでは、この数年、活発に新設が進む前者に焦点をあててみたい。

 工場で野菜を栽培するには、環境制御が重要なキーポイントという。菱熱工業では、福井県に植物工場をかまえて、“ビタミンファーム”事業という名のもと野菜の工場栽培を実現している。同工場では、マルチセンシングネットワークにより環境制御された空間のもと、4つの栽培ゾーンをもち日産最大4400株、常時132000株栽培という生産規模をもつ。この菱熱工業が本格的に、野菜工場の取組みを始めたのは2012年10月のことだ。

 まずは、東京・大田区のオフィスで野菜栽培の社内講習を行い、社内にテストプラントを設置した(写真1)。これは、20m2というスペースではあるが、ここに発芽をはじめ育苗、定植等すべての工程が整備され、蛍光灯やLEDの調光をはじめ温・湿度、CO2濃度、気流、培養液濃度等の制御が可能な実験室となっている。

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写真1 植物工場のテストプラント(東京・大田区)

 菱熱工業はこのテストプラントの栽培設備で、繰り返し養液をはじめ温・湿度管理等の野菜栽培に不可欠な環境制御に関するテストを行ってきた。そして、本格的な自社工場の着工に福井においてとりかかり、2014年5月「ビタミンファーム福井工場」をオープンさせたのである。

植物工場における野菜栽培の機能とは

 「ビタミンファーム福井工場」では、高品質な野菜作りをめざして、次のようなシステム構築のもと野菜栽培が行われている。

(1)植物工場のシステム
 植物工場における野菜栽培では、環境制御が極めて重要だ。福井工場では、マルチセンシングネットワークで環境制御を行っている。温度をはじめ湿度、水質、pH(水素イオン濃度)、EC(Electric Conductivity:電気伝導度)、流速、CO2濃度など各種センサ類からのデータがリアルタイム監視されている(写真2)。

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写真2 本格的な植物工場における管理システム(福井県)

 これらデータ類は、PLC(Programmable Logic Controller)で集中管理されるようになっている。このシステムは、FTPとクラウドサーバなどコンピュータ&ネットワーク・ソリューションにより構築されたインターネット環境において、リモートによる監視や操作も可能としている。たとえば、スマートフォンによって、植物工場を出張先から監視したり、設定調整などシステムの運用を制御できるのである(写真3)。

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写真3
 スマートフォンによる遠隔監視及び操作

(2)野菜栽培の仕組み
 栽培上、具体的な重要要素に光合成もあげられる。光合成は、でんぷん生成等、野菜にとって不可欠な栄養素をつくりだす作用がある。菱熱工業では、光合成で使用する光源として蛍光灯をはじめLEDをさまざまな角度からテストしている。たとえば、LEDの場合、波長450nmの青色及び660nmの赤色の2種類がテストされる。それぞれの波長の光が葉緑素(クロロフィル)に作用し、野菜の栄養を作り、成長を促進させる。しかし、両LEDの中間波長をもち、緑色の波長成分が多い蛍光灯でも十分対応できるという。

 栽培室における具体的な野菜栽培は、種を播いて発芽させる発芽庫で2日、一定の大きさまで苗を育てる緑化棚で3日、株を成長させる育苗棚で14日、そして収穫サイズまで生育させる定植棚で16日の計35日を経て野菜ができあがる、というプロセスだ。この間、野菜は、発芽した段階からしっかりと栄養を含んだ培養液に24時間つかりながら、上記光合成の作用によって、光の照射がある時間だけ養分を吸い上げていくようになっている。

 そして、栽培空間における空気は、外部からの流入がほとんどないので一般生菌数も低く抑制でき長持ち可能な高い鮮度を維持可能で、虫などの侵入もないため農薬の使用を必要としない。この結果、常に根元まで野菜独特の緑の色合いが豊かで、栄養のあるシャキッとした食感をもった野菜の収穫が365日可能なのである。

 いま、この植物工場で生産される野菜は、主に生育期間35日のグリーンリーフとロメインレタス、フリルレタスの3品目である。ほかにもサラダホウレンソウやルッコラ、サンチュ、結球レタスなど10種類以上の野菜を適宜テスト栽培している。

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図1 光合成による養分補給

植物工場のビジネス

 菱熱工業では、植物工場をもととしたマーケティング戦略を次のように考えている。

 第一が、福井工場において育まれる栽培環境技術をベースに様々な品種の野菜を栽培する。いま、ここで栽培された野菜は、大手コンビニエンスストアに納入されていること等、信頼感に支えられている。

 第二に、本社ラボを活用して、テスト栽培を代行したり、その環境の提供を行う等を行っている。また、温度や湿度、調光などの栽培データに関する報告も行っている。実は、この報告書が用意されていると、ビジネス上重要な顧客からの信頼確保に大いに役立つという。

 第三に、顧客のニーズとして、植物工場建設の要請があれば、同社のこれまでの実績及び体験等をベースに建設提案も行っている。

 たとえば、ビタミンファーム・プロジェクトと呼ばれるものがあるが、これは福井工場で野菜の安定供給を実証後、顧客のニーズに応じて施設の建設を行うというものだ。ここでの基本的なコンセプトは、LCC(Low Cost Construction)で、同社がこれまで食品加工工場の建設に携わり設計施工や建設を行ってきた実績に基づき、イニシャルコスト低減及びランニングコスト削減のバランスをとりながら、完全密閉型植物工場の建設支援を行うことである。

 菱熱工業では、これまでに印刷会社はじめ運輸会社、石油関連商社、半導体電子デバイス製造会社、小売り会社などに、同社の企画をはじめ計画設計、施工実績等をもっている。

 天候に左右されずいつでも安定した、そして鮮度を保ったまま消費者に供給可能な植物工場で誕生した野菜は、まさに次世代型”食”のめざすところで、その期待度はますます高まりつつある。

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