環境ソリューション企業総覧2015Web
インタビュー テクノヒル 鈴木一行社長

インタビュー テクノヒル 鈴木一行社長

■特集 特集2 社会生活に恩恵をもたらす最新環境対策

中小規模事業場向けに
化学物質のリスクアセスメントを支援

―1年を切った労働安全衛生法改正の施行までに
事業者が心得えておくべきこと


テクノヒル 鈴木一行社長に聞く

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聞き手:環境ソリューション編集部


 

 有害・危険性をもつ化学物質を取り扱う事業者には、事業規模を問わず全てが新たに化学物質のリスクアセスメント(化学物質管理)及びラベル表示の両義務を課せられることになる。これは、厚生労働省による労働安全衛生法の改正に伴うもので、その施行期日は平成28(2016)年6月1日だ。したがって、各事業者は現行業務を見直し、上記義務に慎重に対応していかないと法律違反に問われることにもなりかねない。

 ここでは、この分野で実績豊富な第一人者であるテクノヒル 代表取締役 鈴木一行氏に施行までの対策に関し各企業、とりわけ中小規模事業場はどう取り組むべきかアドバイスを聞いた。

60000種に及ぶ化学物質と有害・危険要因

 塗装をはじめ印刷、洗浄等で化学物質を扱う作業現場は少なくない。製造業や建設業、電気業、鉱業ほか多々ある。実は、こうした化学物質には有害要因あるいは危険要因が潜むものもあり、一つ使用法を間違えば作業員に予想もしなかった健康被害等が及ぶ。日本には現在、約60000種の化学物質が流通しているといわれ、現場の作業員たちはこうした化学物質が健康へ及ぼす悪影響のリスクと背中合わせの環境にあるといえる。実際、このリスクが現実化し、大阪の印刷所で働く作業員が胆管がんで亡くなった事実が2012年に明らかにされた。原因は、印刷機の洗浄剤に含まれる高濃度有機塩素系化合物に曝露され続けていたことによるものとされた。このような事実は過去に、アスベストやPCB(Poly Chlorinated Biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)に関する問題もあって、世間から注目されてきた。

 こうしたことに対処するための法律が労働安全衛生法で、職場における労働者の安全や健康を守り労働災害を防止するための法律だ。

労働安全衛生法とリスクアセスメント及び
ラベル表示の義務化がクローズアップ

 実は、労働安全衛生法は2014年9月25日に改正され、2016年6月1日から施行されることになっている。この間、2015年6月10日の政令や同年6月23日の省令、そして同年9月中に指針が出されるプロセスを経るが、これに伴い先ごろ出されたパブリックコメント「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針案等」の中で、化学物質を取り扱うすべての事業者が対応しなければならないリスクアセスメントについてふれられている。たとえば、化学物質等による危険性の特定やこれに伴うリスク低減、リスクアセスメント結果の労働者への周知、リスクアセスメントの実施体制ほか多岐にわたっている。

 図1を参照されたい。

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図1 労働安全衛生法改正に伴う化学物質管理の考え方

 これが労働安全衛生法改正の要点を図示したものだ。特に、キーポイントになることとして、大きく二つあげられる。第一が図1右側のリスクアセスメント義務のエリアであり、SDS(安全データシート)の交付義務対象640物質に対してリスクアセスメントが義務化される点である。SDSは事業者が適切な管理及び改善ができるよう該当化学物質の成分や性質取扱い等が記入されているものだ。第二が、同じく図1右側の、譲渡・提供時の容器等へのラベル表示義務が現在の約100物質からSDS交付義務対象の640物質にまで拡大される点である(写真1)。

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写真1 ラベル・SDSの例

 すなわち、各事業者は、施行期日までにとくに重要な上記二つのキーポイントという観点を中心に今一度現行の業務を見直し、しっかりとした対応で臨まないと法律違反に問われてしまう。作業現場における労働安全は、各事業者が、独自に責任をもって管理していかなければならないのである。

中小規模事業場に朗報
化学物質のリスクアセスメントを支援

 たとえ法律だからとはいっても、中小規模事業場にとっては、話はそれほど容易なものではないはずだ。そこで、彼らにとって朗報ともいえる、とくに中小規模事業場を主に対象としたリスクアセスメント支援を行う企業のことを紹介しておこう。テクノヒル社のケースの場合は、化学物質管理においては多大かつ方法な実績をもち、厚生労働省の委託事業として、中小規模事業場を対象にリスクアセスメントを主軸にすえて支援することを受託している。

 委託事業の主な内容は、「中小規模事業場におけるラベル・SDS記載内容の推進」そして「ラベル・SDS記載の危険有害性情報を活用してリスクアセスメントを普及させる」ことである。

 その具体的な事業の柱は次のとおりだ。

 (1)化学物質管理に関する無料の電話相談窓口を開設

 (2)中小規模事業者へ専門家を派遣しリスクアセスメント実施の支援を無料で行う

 (3)リスクアセスメントへの更なる普及をめざして日本全国でセミナを行う

 上記事業を通じて、中小規模事業場は、リスクアセスメントの具体的な方法をはじめリスクアセスメントを行うためのラベル・SDSの読み方、リスクアセスメント調査結果内容の説明、リスクを低減させるための措置の考え方等、あくまで具体的な方法及び対策のアドバイスが受けられる等の支援を得られるのである。

 なお、リスクアセスメントを実施するに際しての簡易手法があることも念頭においておくとよいのではなかろうか。それは厚生労働省のホームページにおいて、コントロールバンディングの提供紹介が行われているのである。このコントロールバンディングというのは、もともとILO(International Labour Organization:国際労働機関)が発展途上国の中小規模事業者向けに、簡単にリスクアセスメントが可能な手法を提供しているソフトウェアである。日本の厚生労働省ではこれを導入し、このソフトウェアを利用することによって、有害性のある化学物質を使用する際、どのような措置が必要になるのか、等といった把握が可能となっている。

いよいよ2016年6月1日の施行日を控えて

 日本における化学関係メーカは、5000社以上あるという。これにプラスチックやゴム関係の分野までを加えれば、実に10000社にも及ぶ。そして、化学物質を事業において利活用する業者まで含ませると、実に数十万事業所という大変な数になってしまう。

 そして、前記の日本で流通している60000種類の化学物質のうち、有害性の評価を終えているのはまだ約10000種類といったところだ。残りの50000種類は、過去の経験に基づく判断で使用しているのであるが、使い方次第で有害及び危険性が生ずることもありうるので、慎重かつ適正な使い方が重要になる。そうしたことから、リスクアセスメントは、まずは自社従業員の健康安全管理や命を守るために取り組まなければならないであろう。そのためにも、ラベル・SDSの入手が必要になってくるし、中小規模事業者にとっては、化学物質を理解することが不可欠である。2016年6月1日の施行日はそれほど先のことではなく、安穏としてはいられない。一方で前記、テクノヒルにおける3本目の事業の柱にもある(3)のセミナーは、2015年8月14日から10月8日まで、東京や大阪、札幌、仙台、名古屋、広島、福岡など全国7か所で開催されているが、東京は申込み満員で、世の関心はここへきて急速に高まってきた。

 いまテクノヒルでは、こうした中小規模事業場を支援する使命感で様々な活動に取り組んでいるところだ。

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