環境ソリューション企業総覧2015Web
インタビュー 川崎市 南誠担当課長/小林昭一担当係長

インタビュー 川崎市 南誠担当課長/小林昭一担当係長

■特集 特集2 社会生活に恩恵をもたらす最新環境対策

ゼロ・エミッションで築く川崎エコタウン構想


 

川崎市 南誠担当課長/小林昭一担当係長に聞く

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聞き手:環境ソリューション編集部


 

 神奈川県・川崎市は、製造業や情報・サービス業を主要産業に多数の世界的企業が立地し、しかも多数の研究開発機関を擁した実に人材豊富な国際都市だ。しかし、活気あるこの都市もかつては、あの大気汚染など甚大な公害に見舞われた。公害問題解決に向けた経験が、こんにちの川崎市の飛躍的な成長をもたらしている。川崎市は、1997年に政府からわが国第1号のエコタウン地域の認定を受け、資源循環の促進など、エコタウン構想の実現をめざして取り組んでいる。

 ここでは、川崎市経済労働局国際経済推進室環境産業担当課長南誠氏(左)及び同担当係長小林昭一氏(右)に聞いた。

わが国でもまれな人材に恵まれた川崎市

 人口約147万人の川崎市は、近隣の羽田空港の急速な国際化を背景に、同市に数多く立地する世界的企業の事業展開とも相まって国際化色を強め、ますます活況を呈している。

 主要産業は、鉄鋼や電子・通信、精密機械等の製造業及び情報・サービスで、最大の強みは、極めて人材に恵まれた都市であるといった点だ。大都市比較統計年表(平成25年/大都市統計協議会)でみても、人口自然増加率が第1位で、生産年齢人口の割合や従業員1人あたりの製造出荷額も第1位となっている。さらに学術・開発研究機関における従業員の割合も第1位を誇り、その機関数は200を超えるなど、まさに研究開発拠点のメッカといえるまでになっている。

公害対策の技術・ノウハウをもとにエコタウン構想を推進

 いまでこそ、国際性豊かな産業を中心に成長を遂げてきた川崎市であるが、この地もつらく苦しい日々があった。いうまでもなく、あの大気汚染や水質汚濁、ゴミなどの公害問題だ。しかし、川崎市はこの公害問題に立ち向かうために、事業者をはじめ、市民、そして行政が一体となって取組みを進め、三者の地道な努力の中で非常に優れた環境対策技術やノウハウを蓄積してきたのである。これらの環境対策技術やノウハウがその後の川崎エコタウン構想の実現に向けて重要な役割を果たすことになる。

 1997年、川崎市は「環境調和型まちづくり基本構想」(川崎エコタウン構想)を策定、当時の通商産業省(現経済産業省)から、国内第1号のエコタウン地域の認定を受けた。これは、ゼロ・エミッション構想をもとに、地方自治体での産業と環境の調和した地域(エコタウン)づくりを政府の支援を受けて推進するエコタウン事業に基づくものだ。川崎市のエコタウン地域は、約2800ヘクタールにも及ぶ臨海部全体が対象エリアであることが大きな特徴である。

 川崎エコタウン構想の基本方針は、次の4つの柱から成る。第一が、「企業自身がエコ化を推進」し、先進的なリサイクル施設の整備や企業の特徴・強みを活かした資源循環の取組みの促進を図ること、第二が、「企業間で連携し地区のエコ化を推進」して、川崎ゼロ・エミッション工業団地をはじめ、地区での共同リサイクルを図ること、第三が、「環境を軸として持続的に発展する地区の実現に向けた研究を行う」ことで、エネルギー有効利用の研究やリサイクルの高度化に向けた研究等を行うこと、そして第四が、「企業・地区の成果を情報化し社会や途上国に貢献」することだ。

川崎エコタウンにおける具体的な取組み

 1997年にエコタウンの認定を受けた川崎市は、臨海地区に立地する既存企業の取組みを資源循環型生産活動へと転換するよう促すことで、排出物や副生物を原料として有効活用することを進めるとともに、新たな資源リサイクル施設の整備を進めた。また、川崎エコタウン構想のモデル施設として「川崎ゼロ・エミッション工業団地」を整備した。

(1)川崎エコタウン構想を推進させる原動力「資源循環型リサイクル施設」
 川崎エコタウンの代表的な資源循環型リサイクル施設は次のとおりだ。
 JFEプラリソースは、年間4万2700トンの廃プラスチックを処理し高炉原料化やコンクリート型枠のボードを製造している。またJFEアーバンリサイクルは、年間40~50万台の使用済み家電製品を処理し再資源化している。昭和電工は、年間5万7772トンの廃プラスチックを処理しアンモニア製造用合成ガスを製造している。三栄レギュレーターは、年間7万トンの古紙を処理しトイレットペーパーを生産している。さらにペットリファインテクノロジーは、年間2万3000トンの廃ペットボトルを処理しバージン原料と同品質のペットボトル用樹脂を製造している(図1)。

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図1 川崎エコタウンの代表的リサイクル施設

(2)川崎ゼロ・エミッション工業団地
 川崎ゼロ・エミッション工業団地は、川崎エコタウン構想のモデル施設として2002年に操業を開始。同団地は、排出物や廃棄物を可能な限り抑制し、再生利用・再資源化やエネルギーの循環活動等をはかり、環境負荷の最小化を実現することをめざしている。
 敷地面積は7万7464m2で、金属加工業や製紙業、メッキ業等16企業が入居している。これら企業の主な取組みには、水資源はできるだけ循環利用し排水処理設備の負荷を低減することや、工場内における水力発電の実施、近隣企業の自家発電の共同受電による有効利用などがあげられる。また、難再生古紙のリサイクルや、廃液を場外に排出しない循環型メッキシステム、焼却灰をセメント原料として再利用することなども行われている(写真1)。2005年3月には、団地全体でISO14001の共同認証を取得した。図2には、ゼロ・エミッション工業団地を含めて、川崎エコタウンにおける資源循環フローを整理した。

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写真1 ゼロ・ミッション工業団地の全景

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図2 川崎エコタウンでの資源循環フロー

 

川崎エコタウンがこれからめざすもの

 川崎エコタウンは、全国26のエコタウン認定地域の中でも最高水準のリサイクルを展開し、いまでは世界的にも資源循環のショーケース的役割を果たしている。毎年2月には「川崎国際環境技術展」を開催、海外からの来場者も顕著になり、2015年には33か国から220名が訪れた。川崎市は、公害問題をどのように克服し、環境技術やノウハウをいかに蓄積してきたのか、同じ悩みを抱える世界の国々の最大関心事だ。

 さらに川崎市は、従来、環境産業の振興と資源循環型経済社会の構築を目的として推進してきたエコタウンをはじめとした環境産業の政策を、さらに一歩前に進めるため、2014年5月に「川崎市グリーン・イノベーション推進方針」を策定するとともに、2015年度からは、その推進体制として、グリーンイノベーションクラスターを設立している。グリーンイノベーションクラスターは、川崎市とともに環境面で優れた取組みを行う市域内外の企業、NPO、大学、学識者、支援機関、行政など多様な主体で構成し、新たな取組みの創出と価値の向上、社会に貢献をするネットワークをめざしている。公害問題に取り組む過程において企業と行政等が蓄積してきた知見・ノウハウを活用し、優れた環境技術を国内外に広く普及し、環境配慮の仕組みづくりを進めようとさらに意欲的なところをみせる。

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