環境ソリューション企業総覧2015Web
インタビュー 一般社団法人日本壁装協会 中尾亮係長

インタビュー 一般社団法人日本壁装協会 中尾亮係長

■特集 特集2 社会生活に恩恵をもたらす最新環境対策

わが国主流の塩ビ系壁紙と
そのリサイクル率向上めざして


 

一般社団法人日本壁装協会 中尾亮係長に聞く
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聞き手:環境ソリューション編集部


 わが国の壁紙はほとんど内需指向型で、国内で生産され、国内で消費されている。それも塩化ビニル樹脂系壁紙の生産量が突出しており、壁紙総生産量の約87%を占める。そしてそのリサイクル率は12%弱と数字のみでは小さくみえるが、ここまでくるには業界の弛まぬ努力があった。いま、さらにリサイクル率を向上させるため積極的な取組みが展開されているところだ。一方でこの塩ビ系壁紙も環境面からみた誤解に悩まされてきたことも否めない。ここでは、一般社団法人日本壁装協会業務部係長中尾亮氏に聞いた。

内需指向が顕著なわが国の壁紙―塩ビ系が突出したニーズ

 多用される壁紙は、上から張るだけで下地を隠し表面の化粧が可能という装飾性及びスピーディな工事を実現可能という経済性を兼ね備えた内装材料だ。

 日本壁装協会の調べでは、わが国の壁紙は圧倒的に内需指向型といえる。2014年度の壁紙生産・出荷量は約6億9200万m2であるが、うち内需が約6億8000万m2、輸出が約210万m2とその傾向には極めて顕著なものがある。一方、壁紙の種類も紙系はじめ繊維系、プラスチック系、無機質系などが代表的なところであるが、実はその種類もワールドワイドで7.9~8.5万点あるのではないかとみられている。中でもわが国では、塩ビ系が5億9900万m2と実に約90%を占めている。

 また、一部の住宅やホテル等で高価な壁紙が重宝されているようであるが、わが国で主流の塩ビ系はリーズナブルなものとなっている。海外では自分で壁紙を張ったり剥がしたりの習慣があるようであるが、日本ではほとんどが業者まかせという。したがって、そのサイズも海外ではゴージャスかつ後で剥がしやすい50~70㎝幅が多用され、日本では無地で業務能率重視の点から90cm幅が多用されている。わが国で主流の塩ビ系壁紙は、なんといっても、加工しやすく物性的にも優れ、印刷技術やエンボス技術によって、リーズナブルな価格でありながらも様々なデザイン性高い製品を生み出せる特徴が自慢だ。

誤解に悩まされてきた塩ビ系壁紙

 実は、わが国で圧倒的ニーズに支えられている塩ビ系壁紙も、幾多の誤解に悩まされてきている。

 その第一が、「火災が起こると塩ビから塩素ガスが発生して危険」というものだ。しかし、火災での犠牲者の多くは、塩化水素ガスではなく、一酸化炭素中毒と火傷がその原因で合わせて86%に達するという。塩化水素の毒性は一酸化炭素と同レベルであるが、火災現場のガス分析では一酸化炭素5万ppmに対し塩化水素は50ppmと発生濃度ははるかに低い(平成21年度版消防白書及び東京消防庁調査)。

 第二が、「塩ビを燃やすとダイオキシンが発して危険」というものだ。その主な排出源はゴミ焼却であるが、製鉄用電気炉やタバコの煙、自動車排出ガスなども発生源となり、適切な対策及び管理を行っていれば塩化ビニルなど塩素を含むゴミの影響は相対的に少ない。ただし特に塩ビに限らず物質を空気中で不完全燃焼させるとダイオキシンは発生しやすくなる。また量にもよるが1999年のダイオキシン類対策特別措置法制定により、その排出量は1997年当時の1/35以下に激減、大気中濃度も環境基準値の1/10以下になっている。

 第三が、「塩ビに使用の可塑剤が環境ホルモンとして人体に影響する」というものだ。環境省調査研究では、塩ビの可塑剤には明らかな内分泌攪乱作用が認められないことが判明し、産業技術総合研究所の膨大な調査によるリスク評価でも、塩ビの可塑剤DEHPによる生態系や人に対するリスクについても懸念するレベルにない、ことが結論づけられている。

 なお、塩ビ系壁紙の室内環境に対する配慮として、SV規格及びISM規格二つの自主管理規格があるほか、2004年の改正大気汚染防止法による排出規制対象の46物質について塩ビ系壁紙の製造段階では使用されていない、などの環境配慮もなされている。

塩ビ系壁紙のリサイクル

 図1に塩ビ系壁紙のリサイクルプロセスを示した。図中①の原料は、塩ビ樹脂をはじめ可塑剤、炭酸カルシウム、安定剤、そして紙から成る。すなわち紙以外の4種類の材料が紙にコーティングされるが、それの年間重量は189881tとなっている。そのうち②製造には180387t使われ、この段階で5%の9494tが⑤廃材となる。そして180026tが③流通にまわされるが、ここでも0.2%の361tが⑥端材として生ずる。また180026tがそのまま住宅等の④施工に使われるが、やはり15%の27004tが⑦端材として発生する。一方、図1右のリフォームでは⑧廃材47410tが発生し、解体では⑨廃材15459tが発生、これら廃材を合わせて62869tが⑩ポストユース廃材となる。

図1 塩ビ系壁紙の排出及び処理フロー (2013年度実績)
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 そして図1⑤、⑥、⑦による未使用廃材・端材の小計36859tと⑩ポストユース廃材の小計62869tが⑪塩ビ系壁紙廃棄物の総排出量99728tとなる。このうち91628tは⑯焼却・埋立てとして処理されるが、残りが⑫MR~⑮中国・韓国までのリサイクル扱いになり、このリサイクル率が11.73%になっている。

塩ビ壁紙リサイクルの今後

 上記11.73%というリサイクル率も10年前の0.6%から比べれば、かなりの努力の結果実現させることができたものだ。しかし、リサイクル率向上の要因はまだある、と日本壁装協会ではみている。たとえば⑤廃材の9494tはほぼ100%リサイクル可能といっていい。しかし、問題は⑧廃材の47410tである(写真1)。これは、リフォームで剥がされた壁紙であるが、きれいに剥がされたものは折りたたまれてテープで括られている。しかし、大半がリフォーム作業時に伴う他廃棄物と混ざりあった状態であり、目下のところリサイクル率0に等しいという。

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写真1 リフォームで剥がされた壁紙
   (きれいに剥がされテープで括られたものもあるが
    大半はさまざまな廃棄物が混ざっている状況)

 そこで、日本壁装協会ではいま、この対策に取り組んでいるところだ。ポイントは、具体的にどう収集するかである。リフォームの職人たちが純正な壁紙とその他廃棄物を仕分けできればよいのであるが、現状はそれほど容易ではない。そこで協会は、職人を啓蒙することとした。具体的には、同協会100社強における職人が所属する組合に対して、協会側が壁紙を分別するようはたらきかける。このとき、分別した壁紙を無許可でトラック運搬すると法的に抵触してしまうので、協会はいま環境省に対して広域認定申請書を申請中だ。これが認定されると、分別壁紙のトラック運送も法的にはふれなくてすむ。そして、図1の⑧廃材のリサイクル率もゼロから向上し、ひいては全体的なリサイクル率も向上する。今後の展開が注目されるところだ。

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