環境ソリューション企業総覧2015Web
インタビュー アンカーネットワークサービス 碇隆司社長

インタビュー アンカーネットワークサービス 碇隆司社長

■特集 特集2 社会生活に恩恵をもたらす最新環境対策

IT/OA機器の
リユース・リサイクルと障害者支援


アンカーネットワークサービス 碇 隆司社長に聞く

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聞き手:環境ソリューション編集部


 

 限られた地球資源の中で環境保全を図りながら持続性ある社会を司るには、たとえばそこで利用するIT/OA機器等が必ずしも常時、いわゆる新品だけという状況がベストとはいえない。リユース・リサイクルに則った製品の導入も重要、という考え方が出てきたのである。

 とくにアンカーネットワークサービスではいま、「万人万物共存共生」の確固たる経営理念から、いわゆる中古品ではなく「社会循環品」という革新的コンセプトを打ち出し精力的な取組みを展開しているところだ。ここでは同社代表取締役社長兼CEOの碇隆司氏に、業界及び市場に提案するその情熱的な思いを聞いた。

中古品ではない、「社会循環品」だ

 碇氏は、このビジネスに本腰をあげた会社設立(1993年)当時は、オフコンや周辺機器を扱う中古市場で“安く仕入れて高く売る”利益追求のみのビジネススタイルが主流であったという。碇氏は、この風潮をどうにも許せなかった。アンカーネットワークサービスの経営理念は「万人万物共存共生」であり、この理念を追い求め喜び分かち合うことが使命であると碇氏は確信している。これは、同氏がかつて、松下電器産業(現パナソニック)の関連会社に勤めていた当時、勤め先の経営理念の中で“共栄”という言葉が使われていた。その深い精神に感銘を受け、それをDNAとして引きつぎ、“共生”という言葉を含む、この理念にたどり着いたそうだ。

 したがって、リユース及びリサイクルという同社の事業にあてはめれば、メーカとそして中古品を扱う同社との間において、コンプライアンスを遵守しつつ、高い技術と正しい心のもと、社会的ルールにも反せず事業展開していくことに精進することが肝要となる。

 そして、重要なことは単に中古品の取り扱いにとどまらず、同社では「社会循環品」として貢献することにある。一般に製品は、地球の鉱物資源をもとに様々な部品を組み立てて商品化される。もちろん市場への輸送も伴い、地球温暖化の原因になるCO2を排出することにもなる。

 中古品の世界では、リース満了や中途解約などした機器類を相手先の希望に沿い買取り、ECサイトの直販や専門業者への販売、さらには海外へも輸出する。中古品の場合、新品とは異なり、すでに出来上がったものを循環させるので、輸送に関していえば、移動する距離も新品よりも短く、CO2削減に大いに貢献してくれるのである。これは、まさに中古品というよりも「社会循環品」たるゆえんではないか。

具体的な社会循環品が生まれるしくみ

 図1は、社会循環品が誕生するまでの主な流れを示している。たとえばリース満了や中途解約等のPCなどがアンカーネットワークサービスに引き揚げられると、リユースやリサイクルのための処置が施されて販売ルートにのせられ、ユーザに届けられるというフローだ。図では、その主なフローが極めて理解しやすくまとめられているので参照されたい。

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1 リユース及びリサイクルの流れ

 

 ここで、アンカーネットワークサービスにおける主な作業例としてリサイクルPCができるまでを紹介しておこう。たとえば引き揚げられたPCは、まず本体やマザーボードに付着した汚れを丁寧に落とす。それから、ハードディスクを傷つけずに、専用ソフトウェアあるいはデータ上書きで完全にデータ消去する。このとき、再生しないPCでは磁気やドリル等で二重の物理破壊を行い二度とデータが読み取れないように処置し安全を期す。

 なお、筐体等に貼られたユーザの資産管理用ステッカーなど前ユーザを特定できる情報も手作業で除去され、データ消去作業証明書もきちんと発行される。そして、マザーボード上のコンデンサのチェックやストレステスト、埃を飛ばす作業等を経てOSやソフトをインストールする。このときOSは、マイクロソフトの正規WindowsOSのライセンス供与プログラムであるMARプログラム業者の製品であることはいうまでもない。最後に、緩衝材を入れてPCをセットし、1工程ごとに厳しいチェックを行い、さらに梱包後にも抜き取り検査を行う等、念には念を入れた後、出荷となる(図2)。

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図2 リサイクルPCができるまで

 こうして生まれたリサイクルPCであるが、ユーザからすればその品質が気になるところである。初期不良率をみると、新品では概ね4.5%程度という。しかし、アンカーネットワークサービスから提供される社会循環品は、それと同等あるいはそれ以下というデータがあるのだ。また、同社ではこれらPCに3年保障をつけている。もはや新品に引けをとらない機能が整備されているのである。

 なお、ここではPCを中心にリサイクル例を紹介したが、同社の取り扱い品目には、サーバやTFTモニタ、スイッチ、ルータ、計測器、プリンタ、プロジェクタほかのOA及び通信機器など豊富となっている。

 碇氏は、前述「万人万物共存共生」の経営理念のもと事業に取り組んでいるが、いかなる工程をとっても第三者が認めるものでなくてはならないという観点から、品質面ではマネジメントシステムISO9001を取得し、セキュリティ面でもISMSを取得、業界からの信頼も極めてあついものがある。

環境福祉事業への取組み

 IT/OA機器等のリサイクルには、該当機器を解体し素材ごとに分別することが必要だ。解体作業は、極めて細かい作業を要求されるので、人手が中心になる。そこで、アンカーネットワークサービスでは、日本各地の障害者支援団体と協業して、それらに作業を委託することによって、障害者への就労支援事業に協力すると同時に、リサイクル率向上をはかっている。

 委託を開始した2010年5月頃からみると、障害者の技量も着実に向上し、いまでは他従業員を教えられるほどまでに、成長している例もあるという(写真1)。障害者でも熟達者の場合、1日あたりの解体台数は、実に80台に及ぶほどだそうだ。当初、この熟達した人も慣れるまでが大変であったようで、とても今日の姿が想像できないほどだったという(写真2)。

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写真1 障害者支援への取組み 工場内の作業風景(1)

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写真1 工場内の作業風景(2)

 また、職場における他従業員とのコミュニケーションも普通で、健常者とかわらないほど成長している。それには解体に伴う指や手作業による細かい作業がそうした回復機能向上にも結び付くのではないか、との見方もあるようだ。

生活レベル差を縮小させ豊かな社会生活をもたらす社会循環品の普及

 ここでは、PCのリサイクル版について紹介したが、国内のPC年間出荷台数は2014年度約1260万台であり(MM総研)、うち社会循環品は、270万台程度という。そのうちアンカーネットワークサービスでは40万台余りを出荷している。

 とくに同社では、新たにリサイクル企業向けの新しい認証を取得すべく取り組んでいる。これは「R2」(Responsible Recycling)と呼ばれ、社会的責任をもったリサイクルを行うためのものである。米国の環境保護庁が推進しており、SERIと呼ばれる組織が運営・管理している。R2には、環境及び労働安全の二つに関わる認証が含まれる。たとえば、リサイクル材料や設備にかかわる労働者の安全及び健康が守られているか、またリサイクル品を出荷した先でどう使用され再生されているか、最後まで製品化しているのかなどをリサイクル業者の方で厳しく掌握することを義務づけるもので、調査すべき関連の内容も実に盛りだくさんであるという。

 しかし、こうした厳しい認証を得ることで、顧客もアンカーネットワークサービスを、一層信頼し、かつ安心して任せてくれるなど相乗効果も出てきている。これも、「共生」という経営理念を反映するものであろう。

 社会循環品は、一般人の生活レベルに収入格差が出てきたとしても、製品の機能自体を新品同等に充実させているので、たとえ高価な新品を購入できなくても、より安価な入手を実現させることができ、人々の生活格差を縮小させてくれる重要な役割もあるのだ。

 いま、碇氏のこうした事業にかける情熱は、必ずや業界及び市場における支持を加速させるにちがいない。

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