環境ソリューション企業総覧2014Web
日本製紙

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08_総合ソリューション 環境ソリューション企業編

“総合バイオマス企業”を標榜し、
新たな事業領域を開発


日本製紙

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「木」の利用で持続可能な社会の構築に寄与

 地球温暖化や化石資源の枯渇などに直面している現在、これらの課題克服に向けて再生可能な資源である「木」の利用に関心が高まっている。こうした状況下、日本製紙は、2012年からの「第4次中期経営計画」で「事業構造転換に向けた取り組み強化」を打ち出した。事業構造転換とは、紙製品事業以外にも「木」を余すところなく活用し、事業領域を拡大していくことに他ならない。

 同社はこれまでも洋紙に加えてパッケージ材料や木材成分を活用した化成品を供給してきている(図1参照)。しかし、この「取り組み強化」は、“総合バイオマス企業”としてこれまで蓄積されてきた技術、設備などの強みを生かしながら新たな事業領域を育成するというコミットメントである。

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図1 日本製紙グループ「総合バイオマス企業」としての取り組み

 この取り組み強化によって新たに拡大する各事業分野を概観する。

(1)産業用素材分野

 食品分野などに向けて、石油化学系フィルムを木質バイオマス由来の素材に代替することを提案している。原紙製造・塗工技術を応用して高いガスバリア性を付与した包装材料などを開発する。

(2)エネルギー分野

 電力会社以外では国内最大級の自家発電能力と多様な発電施設の操業ノウハウを有している。このような強みを生かし、既存設備の活用による電力の供給、販売を進めるとともに、バイオマス火力発電設備や太陽光発電設備の導入、新規バイオマス固形燃料の開発を促進する。

(3)バイオケミカル分野

 化石資源の代替をめざして「木」の高度利用を進める。この代表例が後述する「セルロースナノファイバー」。これはセルロースをナノ化処理したもので、紙のように軽くかつ金属並みの強度を持つ。複合化技術によって自動車の各種部材への活用や食品などのパッケージ材など多様な活用が期待されている。

(4)アグリ・食品分野

 植林事業の研究を通じて蓄積した発根技術(容器内挿し木技術)や育苗技術を農産物生産に応用し、アグリ・食品事業を展開する。育成困難な植物の短期大量生産や機能性食品など付加価値の高い農産物を産出する。

持続可能な森林経営

 バイオマスの活用を掲げる企業は多々あるが、“総合”という冠が付く企業は少ない。同社は、国内外で調達するすべての木質原材料に持続可能性を求めると同時に、国内外で管理するすべての森林で森林認証を取得し、持続可能な森林資源の造成を行っている。このように森林資源の造成の段階から、自社で責任を持って取り組み、造成によって増加した分を原材料として建材、紙・板紙、化成品、エネルギーなど「木の可能性」を最大限利用した製品・サービスを社会に提供しているところが「総合バイオマス企業」とする理由である。

 同社では、森林資源の造成のために「TreeFarm構想」を展開している。これは、畑で作物を育てて収穫するように、木を自ら育てて毎年生長した分だけを収穫・活用し、それを繰り返しながら持続可能な原材料調達を実現するためのプロジェクトだ。10年伐期サイクルの場合は図2のようになる。

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図2 植林のリサイクル:10年伐期のサイクル

 1992年にチリでスタートしたこのプロジェクトは、南アフリカ、オーストラリア、ブラジルへと拡大し、「2008年までに10万haの海外植林を行う」という当初の目標を2年早めて実現した。現在は約12万haまで拡大しているが、今後は拡大の余地の大きいブラジルなどでの植林を進め、環境行動計画「グリーンアクションプラン2015」で掲げる20万haを目指す。

 同社では、海外での活動に加え、国内においても適切な森林経営を実践している。同社は民間では全国2位、約9万haの社有林を保有しており、森林は重要な経営資源であるが、一方で森林とともに生きる企業として森林の公益的機能を認識しその維持に努めている。

 そのため、国内社有林の約80%は木材生産の場として活用する「経営林分」としつつも周辺環境や地域特性に配慮した森林経営を推進している。残りの約20%は「環境林分」として、生態系保全や水源涵養などの環境機能を保全するために、木材生産目的の伐採を禁止している。

国内外で森林認証の取得を完了

 森が森であり続ける持続可能性を評価する制度として森林認証制度がある。同社では2007年10月、国内すべての社有林でこの森林認証の取得を完了した。同社の取得した認証制度はSGEC森林認証というもので、日本独自の森林認証制度。日本独自の自然環境、社会慣習、文化を尊重した7基準35指標に基づいて審査している。

 また、海外の植林地においても、2003年に南アフリカでFSC森林認証を取得したことを皮切りに認証取得に動き、2008年にブラジルでのFSC森林認証の取得をもって、すべての自社林での森林認証の取得を完了している。

持続可能な原材料調達を実践

 製紙用の木材チップをはじめ木材を大量に調達する同社グループでは、環境と社会に配慮した持続可能な原材料調達を厳格に実施している。合法性が確保され「持続可能であること」(サステナビリティ)を基本とし、「木材の出所が明らかであること」(トレーサビリティ)、そしてそれらについて「きちんと説明できること」(アカウンタビリティ)を重視している。国内外の自社林からの木材調達は前述のように森林認証を取得し、持続可能な森林経営を行っており、これらを十分に満たしているが、外部からの購入に際しても同様の原材料調達を実践している。

 海外のサプライヤーからの調達では、船積み単位で「木材の伐採地域とサプライヤーが関連法規を遵守しており、違法伐採材が含まれていないこと」について、関連書類などによって確認している。また、サプライヤーに対してアンケートやヒアリング調査を実施し、トレーサビリティの充実や購入する原材料の合法性と持続可能性を確認している。

バリューチェーン全体を通しての環境負荷低減に注力

 「総合バイオマス企業」として森林資源の造成段階から自社で責任を持って取り組む同社であるが、製品の製造工程はもちろんバリューチェーン全体を通しての事業活動に伴う環境負荷の低減にも注力している。具体的な取り組みは同社グループの環境憲章に基づいた環境行動計画「グリーンアクションプラン2015」、グループ各社の環境行動計画に示されている。ここでは同社が取り組む資源の循環利用の例として廃棄物の有効利用と古紙の利用促進を概観する。

 同社が排出する廃棄物の約8割は燃焼灰(石炭灰とペーパースラッジを焼却した灰)であり、そのほかに汚泥や木屑、廃プラスチックなどが発生している。「グリーンアクションプラン2015」では、「廃棄物の再資源化率を97%以上とする」「廃棄物発生量の40%以上を事業所内で再資源化する」という目標を掲げて、資源の有効利用に取り組んでいる。

 発生量の構成から燃焼灰の再資源化が非常に重要であり、現在、粒状に固めて土木資材にするなど、燃焼灰の有効利用に取り組んでいる。具体的な事例としては、エコジャリ(土木資材や雑草抑制土)、エコドライボール(吸排水性や通気性が高い)、バイオアッシュストーン(砂利の代替や路盤材)などがある。

 また同社は資源の循環利用として古紙の利用拡大を進めることでも、循環型社会の構築に寄与している。日本国内の古紙回収率は77.9%、紙の原材料に占める古紙の割合である古紙利用率も63.0%を達成しており、世界的に見ても大変高い割合となっている。「グリーンアクションプラン2015」では「洋紙の古紙利用率を40%以上、板紙の古紙利用率を88%以上とする」という目標を掲げ、機密文書のリサイクルや未利用古紙の利用技術の向上にも注力している。

エネルギー事業展開でさまざまな“強み”

 同社グループは認可出力として約180万kW弱の発電規模を有している。これは電力会社を除く民間事業会社としては最大級で、沖縄電力の規模に匹敵するが、ほとんどは自工場の生産に使用している。一方、外部への電力供給としては、釧路工場でのIPP(卸電力事業)や、勿来工場、富士工場でのバイオマスボイラーによるFIT電力事業などがある。現時点で同社グループ全体で10万kW前後の競争力のある余剰電力をPPS、JEPX他へ販売しており、電力販売量としては、PPSの第2位グループに迫る位置にいる。

 エネルギー事業が順調に推移してきている同社ではあるが、同事業のさらなる可能性について検討を進めるために2011年12月にエネルギー事業推進室を設置した。そして、わが国のエネルギーを巡る環境の変化に対応し、2013年6月27日にエネルギー事業本部を新設し、陣容を大幅に拡大した。このことにより、事業機会をスピーディーに着実に獲得し、同事業のさらなる拡大を目指している。現在、供給能力を倍増するためのロードマップを作成中であるが、同社グループには、エネルギー事業を展開する上でさまざまな“強み”を持っている。

 第1は恵まれたロケーションにあることだ。製紙工場は広大な土地を持ち、港に隣接していることが多く、燃料の搬入や焼却灰の搬出が容易である。

 第2は人的資源を有していることだ。発電担当者にはさまざまな知見やノウハウが蓄積されていると同時に、全国に点在しているグループ企業の各発電所間での情報共有も行っている。

 他にもすでに大規模な発電を行っているために、電線路が既設であることや日本全体に工場が分散しており、地域の電力事情に対応できることなどがあげられる。

エネルギーをつくる製紙工場

 製紙工場では、パルプの製造工程で副生される液体=黒液を燃やすことで蒸気や電気などのエネルギーを生み出し、工場内で活用している。紙の原料であるパルプは木材チップを薬品で蒸煮し、木の繊維(セルロース)として取り出される。この時に副成する繊維の接着部分(リグニン)と薬品が混じった液体を濃縮したものが黒液である。

 製紙工場では、この黒液を専用の「回収ボイラー」で燃料として使用し、発電すると同時に薬品を回収し、リサイクルしている。ちなみに、同社では、黒液を燃料として使用することにより、年間113万キロリットルの原油相当分を削減している。

 また、こうした発電設備を持つ製紙工場では、黒液以外にも木くずや建物を解体する際に出る廃材などをバイオマス燃料として使用し、発電している。その他、RPF(古紙として利用できない紙ゴミと廃プラスチックでつくった燃料)や廃タイヤなどの廃棄物も燃料として有効に利用し、化石燃料の使用抑制に努めている。その結果、木質バイオマスおよび廃棄物エネルギーの使用は全エネルギー使用量の45%を占める。

四国最大のメガソーラープロジェクトを推進

 同社は、徳島県小松島市に所有する社有地の一部(約25万m2)において、三菱商事と共同で、四国最大規模となるメガソーラープロジェクト(発電規模モジュールベース約2.1万kW)を推進している。2013年末に設備建設に着工し、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」を活用して、2015年2月頃から電力を販売する。

 徳島県小松島市は国内でも年間を通じて日照量の多い地域であり、同社の資産と技術力に加えて、三菱商事がこれまでに蓄積してきた海外でのIPP(卸電力)事業のノウハウを生かす。なお、プロジェクトの運営は、同社と三菱商事の共同出資による特別目的会社(SPC)「日本製紙メガソーラー小松島合同会社」が行う。

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写真1 メガソーラー完成予想図

「未利用材100%によるバイオマス発電事業」を実施

 木は大気中のCO2を吸収して成長することから、木由来の燃料=バイオマス燃料を燃やした時に出るCO2は吸収・固定したものとみなすことができる(カーボンニュートラル)。従って、木は再生できるとともに燃やしても大気中のCO2を増加させないとみなされるため、化石燃料の枯渇対策や地球温暖化防止に寄与するクリーンで再生可能なエネルギーとして注目を浴びている。

 同社は、八代工場(熊本県八代市)に木質バイオマス発電設備を新設し、2015年の春から稼働させる。これは、全国で初めての「未利用材100%によるバイオマス発電事業」となる。

 八代工場に新設する木質バイオマス発電設備の最大の特徴は、燃料に九州地区の間伐材などの未利用材を100%使用することだ。未利用材のみを使用する発電設備は、日本では初めてで、年間約7.1万トンの木質チップを使用する予定になっている。

 九州地区では同社グループの南栄と日本製紙木材によってすでに製紙用チップの集荷網が整備されている。また、八代工場の半径50km以内には南栄の木質チップ工場が3か所ある。こうしたことから本発電設備は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」を利用したバイオマス発電を優位に行うことができると期待されている。

 また、この発電事業は、わが国の森林・林業を早急に再生していくための指針「森林・林業再生プラン」で示された、「木材自給率50%達成」のための国産材利用拡大に貢献する。

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写真2 トレファイドペレット

新規バイオマス固形燃料の開発

 東日本大震災以降、原子力発電所の稼働停止により石炭火力発電への依存率が高まっている。それに伴いCO2の発生量が増加し、その削減が大きな課題となっている。近年の石炭火力ボイラーは燃焼効率を高めた微粉炭ボイラーが主流であり、各社はCO2発生量低減のため、木質チップや木質ペレットなどの木質バイオマス燃料の混焼を進めてきた。しかし、これらの燃料は効率的に微粉砕できないことや、屋外保管時の耐水性などが課題となり、微粉炭ボイラーでの混焼率は2~3重量%程度にとどまっていた。

 同社は、この問題を解決するためにトレファクション(半炭化)技術を用いた新規バイオマス固形燃料を開発した。本技術は、比較的低温で木質バイオマスを炭化させ、通常の炭化では半分以下しか残らない熱量を約9割残すことができる。また、粉砕性や耐水性も向上し、混焼率を25重量%以上にすることが期待できる。

 同社では、今後も「木」の総合利用を進める総合バイオマス企業として、新規バイオマス固形燃料の製造プロセスの改良と実証を進め、さらに高効率な次世代バイオマス燃料へと開発を続けていくとしている。

実用化が目前に迫ったセルロースナノファイバー

 セルロースは木材などの植物の繊維の主成分で、植物を構成している物質の1/2を占め、再生可能で年間の生産量は100ギガトンにも及ぶ。高強度で比較的安定で、生体にも安全であり生分解性を持つため環境にもやさしい。紙の主原料として知られているが粉末化や溶解・再生による繊維化、化学変性などによってさまざまな工業製品に生まれ変わっている。

 セルロースナノファイバー(CNF)は、木を構成するセルロースをナノレベルまで細かくほぐすことによって生まれる新しい素材である。セルロース分子が40~50本束になったもので、幅3~4nm、長さは数μmの高結晶度(70~90%)の極細繊維である。CNFをつくるためには木材のセルロース繊維を細かくほぐすことが必要であるが、セルロース繊維は、CNF同士が強固に水素結合しているため効率良く均一にほぐすことは困難だった。東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明教授が、機能性触媒である「TEMPO(2,2,6,6―テトラメチル―1―ピペリジニルオキシラジカル)」を用いて酸化することにより,セルロース繊維が容易にほぐれて,均一なCNFになることを世界で初めて発見したことによりCNFの実用化が進む。TEMPO酸化と機械解繊によるCNFは他の製法(例えば機械解繊を主体としたミクロフィブリル化セルロース:MFCや機械解繊と酸加水分解ナノクリスタルセルロース:NCC)によるCNFと比較すると均一なナノ分散性、高アスペクト比(細くて長い繊維)であることが特長である。

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図3 セルロースナノファイバー

さまざまな用途展開に期待が集まる

 CNFにはさまざまな特徴があるが、最大の特徴は「強くて軽い」ことだ。分子が同じ方向に規則正しくまっすぐに並び、水素結合によって隣り合う分子同士がしっかりと結びついているため鋼の5分の1の重さしかないのに5倍以上の強度を持つ。樹脂に少量混ぜることで強度を高めることが可能になるので、結果として軽量化が実現できる。例えば、軽量化した樹脂を自動車の車体などに利用することによって、燃費の改善ひいてはCO2排出量の削減につながる。CNFの樹脂への分散技術の確立という課題はあるが、自動車への利用が開始されれば、CNFの需要は急速に拡大することが予想される。

 他にも「熱による寸法変化が小さい」「酸素バリア性が高い」「透明性が高い」「水中で独特の粘性(静止している時は粘度が高く、撹拌すると粘度が下がる)を示す」「比表面積が大きい(触媒や吸着剤として優れた効果を発揮)」などの特徴がある。これらの特徴を活かし、透明表示体(ガラスに代わるフレキシブル表示体)、食品包装材、高性能フィルター、医療用素材、増粘材(食品や化粧品)などさまざまな用途展開も期待されている。

 同社ではこれまで独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ナノテク・先端部材実用化研究開発プロジェクト」で基礎的な開発を行い、100L規模の製造装置を作成しビーカースケールと同等品質のCNFの製造に成功している。同社では、これらのCNFを樹脂、化学品、日用品メーカなどに用途開発向けのサンプルとして提供し、大きな関心を集めている。

 一方、同社は凸版印刷、花王とTEMPO酸化CNFを利用した包装材料の開発を共同で行っている。この共同開発は、NEDOの「ナノテク・先端部材実用化研究開発プロジェクト(ステージⅡ)」に採択された。このプロジェクトでは、各企業の持つ技術力を連携させることで、生分解性を持ち、耐熱性や酸素バリア性に優れる高機能性包装材料の開発と実用化を目指している。

2015年度の実用化を目指す

 同社はこうした取り組みに加え、CNFの実用化に向け積極的な動きを見せている。2013年4月1日には、CNFの早期事業化を目的として、専任組織である「CNF事業推進室」を新設した。新組織は、CNF量産化技術の確立と用途開発を推進するために、山口県にある岩国工場に実証設備を設置した。この実証生産設備は、化学処理によるCNFを生産する本格的な設備としては日本国内で初めてであり、本事業は、経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業『先端技術実証・評価設備整備費等補助金』の対象として採択されている。実証生産設備は、年間生産能力30トン以上で、2013年11月から稼働している。これにより、CNFの事業化に向けて本格的なサンプル供給が可能となったため、用途開発をさらにスピードアップさせ、2016年度には実用化することを目指している。

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