環境ソリューション企業総覧2014Web
沖電気工業

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08_総合ソリューション 環境ソリューション企業編

環境経営を高度化
環境ビジョン達成に向けて目標値を設定、
商品でも環境負荷低減に貢献


沖電気工業

www.oki.com/jp/


 沖電気工業(OKI)は2014年4月、環境経営の推進体制を強化した。OKIグループの「環境ビジョン2020」に定量目標を設定し、到達点を明確にした。ビジョンにある1つ目のテーマである「低炭素社会の実現」に向けては事業活動におけるエネルギー使用量を2012年度比売上高原単位8%低減する目標を定めた。毎年約1%ずつの改善で達成できるように思われるが、実は厳しい目標となっている。8%は物価変動を考慮しない「名目売上高」での目標だからだ。実質売上高にすると12%の低減に相当する。エネルギーをはじめとする原材料コストは上昇し、逆に製品の販売価格はアップしづらい経済環境のもと、まさに全社一丸となった努力で名目売上高原単位8%低減の達成を目指す。

 ビジョンの2つ目「汚染の予防」については、化学物質の排出量を2012年度比名目売上高原単位8%低減する数値目標を設定。この目標値も実質売上高にすると15.5%の低減に相当する厳しい目標だ。3つ目の「資源循環」について使用済み製品のリサイクル処理量を2012年度比25%増加させる。4つ目の「生物多様性保全」は省エネルギー化、化学物質の排出削減、リサイクルの拡大など、ビジョン1、2、3の具体的な活動により生物多様性保全に貢献していく。

ATM最新鋭機、待機電力最大75%減

 今回、「環境ビジョン2020」の4分野の取り組みを強化するため、数値目標を策定したわけだが、その目標は経営の中期計画とも連携する。地球環境への貢献を事業成長にも結びつけ、企業価値の向上を実現させる狙いがある。

 OKIグループにとって地球温暖化対策は重要テーマの一つ。2012年3月には経団連の「低炭素社会実行計画」への参加を表明。環境ビジョンの「低炭素社会の実現」に向けた具体的な活動として、事業活動ではもちろん商品の省エネルギー対策にも取り組んでいる。

 OKIの主力商品である現金自動預払機(ATM)は、省エネルギー化でもOKIグループのトップランナーと言える。2013年4月から出荷を始めた「ATM-BankIT Pro」は待機中の消費電力を従来機比75%も減らした(写真1、図1)。

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写真1 ATM-BankIT Pro

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図1 消費電力の削減比較(同社従来機比)

 実はATMは意外と多くの電力を使う。OKIの従来機「ATM-BankIT」では、入金や支払いなどの取引がない待機中でも340ワットの電力が消費されている。映像を映し出している液晶テレビ3台分(40インチ型を100ワット前後として)に相当する電力がATM1台で常に使われている。

 最新鋭機「ATM-BankIT Pro」の待機電力は190ワット(図2)。この段階ですでに従来機の340ワットよりも45%削減できている。さらに、待機状態が長く続くと移行する省エネルギーモードでは80ワットまで絞り込み、同75%の低減を実現した。

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図2 取引の流れに沿った消費電力比較(同社従来機比較)

エレクトロニクス、メカトロニクスの技術で省エネルギーと利便性・品質を両立

 そもそもATMが多くの待機電力を必要とする理由に利便性や品質の確保があげられる。現金の引き出しや預け入れをしようとする利用者が、ATMの前に立つとすぐに操作ができるようにATMの一部には待機中でも常に電力が供給されている。稼働データを保存する記録装置には信頼性が高いハードディスク駆動装置(HDD)が搭載されている。そのHDDは駆動にモーターを使うため電力削減のネックとなっていた。つまりATMの省エネルギー化は、利便性や品質確保との両立が求められていた。

 「ATM-BankIT Pro」は待機中に電力供給を停止する範囲を紙幣識別センサー類にも広げた。同時にセンサー類の新たな制御技術を開発し、待機から稼働への移行をスムーズにするなど、利便性を損なわずに省エネルギー化を実現。記録装置には半導体にデータを保存するソリッドステートドライブ(SSD)を採用。SSDは消費電力の少なさに加え、高速アクセス、耐衝撃性に優れるなど従来のHDDにない特徴を備える。しかしデータの書き換え寿命の短さが課題だった。OKIは書き込む場所を分散化して課題を解決し、保存の品質を高めた。

 他にも先進的な技術を搭載した。中央演算処理装置(CPU)も省電力型に更新し、表示部もLEDバッグライトを採用してATMの消費電力を削減した。

 こうしたエレクトロニクスによる改善に加え、OKIが得意のメカトロニクスも駆使した。ATMには紙幣の収納や排出のためにたくさんの駆動部がある。同社は紙幣の搬送経路を見直し、最短距離で紙幣を出し入れできるように改善。その分、駆動部を制御する電子部品の点数削減や電力制御などにより消費電力を抑えた。

 OKIのATMは全国で7万台稼働している。従来機がすべて「ATM-BankIT Pro」に置き換わると1万キロワットの待機電力を削減できる計算になる。これは風力発電5基(1基の出力を2000キロワットとして)の発電能力に相当する。現金を扱うためATMは品質や信頼性が優先されてきた。OKIはエレクトロニクスとメカトロニクスを盛り込んで業界最高水準の省エネルギーを実現した。省エネ型ATMは設置施設の省エネルギーに役立ち、社会全体の電力需給の平準化や二酸化炭素(CO2)排出削減にも貢献する。もちろんOKIも省エネ型ATMの供給で事業成長ができる。環境貢献と経営が一体化し、企業価値を高められる商品だ。

化学物質管理でも社会に貢献

 環境ビジョンの2つ目のテーマである「汚染の予防」についても、商品による社会への貢献と事業成長の両立を目指す。この分野では化学物質の排出低減の定量目標を定めた。これはあくまでもOKIグループの生産活動で排出される化学物質の削減目標であるが、グループで培った化学物質管理のノウハウを生かした商品を販売している。その代表の一つが化学物質管理システム「COINServ-COSMOS-R/R(コインサーブコスモスアールツー、以下コスモス)」だ(図3)。

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図3 製品含有率化学物質情報システム「COINServ-COSMOS-R/R」

 コスモスは欧州連合(EU)の化学物質規制「RoHS指令(以下RoHS)」「REACH規則(以下REACH)」への対応を支援し、取引先から求められる製品含有化学物質調査への回答業務にも利用できる。2009年に開発し、これまでも新機能を追加してユーザー企業に貢献してきた。

 2014年8月、コスモスに加わった新しい機能は1種類の調査票でREACH、RoHS、包装材指令の三つの欧州規制に対応できる。さらに、取引先の独自基準の調査依頼にも同じ調査票で対応できる。規制や取引先ごとに調査票を使い分けたり、書き換える手間を省け、化学物質管理業務を効率化できる。新機能は既存のコスモスのユーザーもバージョンアップによって新機能が利用可能となる。そもそも調査票には製品に含まれる化学物質の種類と量を記載する。産業界では取引先に製品含有化学物質の情報を伝える手段として調査票が使われており、取引先に製品を納入するときに調査票を渡している。新機能を備えたコスモスはアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が提供する調査票「AIS」を使い、3つの規制に対応できるようになった。

1種類の調査票で各法規制、取引先基準に対応

 AISは主にREACH対応として開発されている。07年に施行されたREACHは欧州当局が高懸念物質(SVHC)に指定した物質が製品に含まれていると、サプライチェーン上での確実な伝達を求める。現在、150以上の物質がSVHCになっているが、半年に1回のペースで追加され、最終的には1500物質がSVHCになると言われている。AISは増加後のSVHCの管理に対応するため、膨大な物質を書き込むことができるようになっている。

 一方で主にRoHS対応として開発されたグリーン調達(旧JGPSSI)調査回答ツール(以降、調査回答ツール)もある。06年施行のRoHSは鉛、水銀など有害6物質の電子機器への使用を大幅に制限した。このため取引先からは製品への6物質などの含有の有無を問われる。調査回答ツールは6物質などを使った数十の物質群の使用の有無を回答する調査票だ。

 このようにREACHとRoHSはともに製品含有化学物質の管理にかかわる法制度であっても内容が違う。そのため企業によってはAISで入手した情報をRoHSへの適合を判定するために調査回答ツールに書き換えて調査票を使い分けていた。

 従来からコスモスは取引先から入手したAISをシステムに取り込むとREACHの管理物質を集計できていた。追加した新機能は、AISに記載のある物質情報からRoHSで指定された有害6物質を抽出する。その後、6物質それぞれの量がRoHSで決められた製品への含有制限量(閾値)を超えているかどうかを自動集計。適用除外などのRoHS運用上の細かいルールも参照し、RoHSへの適合を自動判定する。段ボール、粘着テープ、インクへの有害物質の使用を制限する包装材指令に対してもAISの情報で管理・判定できる。

 さらに新機能は、大手電機メーカーが独自に決めた禁止物質や制限量も判定基準として設定できるので、従来のように手作業で計算する手間を省ける。

 化学物質規制が強まるに連れ、取引先からの調査依頼が殺到するサプライヤーの負担増加が課題として指摘されるようになった。1種類の調査票で3つの法規制と取引先別の調達基準に対応できるOKIのコスモスはサプライヤーの負担軽減に役立ち、社会全体の化学物質汚染リスクの低減にも貢献できる。

 OKIは環境ビジョン2020を実現するために定量目標を定めた。ATM-BankIT Pro、コスモスの他にも、社会の環境負荷低減に貢献する商品やソリューションサービスがある。自らの目標達成だけでなく、地球環境に貢献する商品・サービスを次々に市場投入し、OKIの企業価値向上を目指す。

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