環境ソリューション企業総覧2014Web
帝人

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03_リサイクル・廃棄物対策 環境ソリューション企業編

150社以上が参画する
ポリエステルリサイクル「エコサークル」


帝人

www.teijin.co.jp/


ポリエステルの循環型リサイクルシステム「エコサークル」

 帝人は2007年に「環境経営宣言」を発表し、「環境ビジネス」を推進している。石油資源の枯渇問題に対応するためポリエステルのリサイクル、カーボンニュートラルに貢献するバイオプラスチック、排水を循環・再利用する水処理技術などに注力している。その中で、ポリエステルの循環型リサイクルシステム「エコサークル」が、グローバルな展開を進めている。

 エコサークルは使用済みポリエステル製品を回収し、松山事業所(松山市)で原料にまで戻して再利用する一連のシステムのことで、石油資源の使用量を抑制でき、石油からポリエステル原料を作る場合に比べ二酸化炭素排出量を約80%削減(焼却分含む。出典:繊維製品のLCA調査報告書)することができる(図1)。エコサークルに賛同する企業は着実に増え、現在は国内外合わせて150社以上ある。対象製品には「エコサークル」のタグを付け、販売している(写真1)。2012年の世界のポリエステル生産量は約4,600万トンと合成繊維生産量の85%を占め、「繊維の王様」とも言われている。シャツやユニフォームなどの衣料をはじめ、カーテンやクッションといった日用品、産業資材など幅広い用途に用いられている。

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図1 「エコサークル」の流れ

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写真1 「エコサークル」のタグ例

 帝人はもともと工場内で発生した繊維・生地の端材のリサイクルは行っていた。だが市場に出回った最終製品には、ポリエステルに染料や加工剤など異素材が含まれているため、リサイクルすることが難しかった。そこで同社は、ポリエステルから異素材を効率的に除去し、化学的に分子レベルにまで分解して石油から製造するのと同品質の原料にまで戻すケミカルリサイクル技術を2000年に確立。2002年にエコサークル事業を本格的に開始した。

 ポリエステルは、原料が高純度テレフタル酸(PTA)からと、テレフタル酸ジメチル(DMT)からの二つの製造方法があり、帝人のみがDMT方式を採用している。店頭で回収されたポリエステル製品を松山事業所に運び、まずは2段階で砕いて米粒大の大きさにし、脱色をする。その後、エチレングリコールとDMTに分け、蒸留してより純度の高いDMTを取り出し再重合する。原料にまで戻すため、従来のリサイクルでは課題であった品質劣化を防ぐことが可能で、何度でも繰り返しリサイクルできる(図2)。

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図2 ケミカルリサイクルの特長

 回収対象はポリエステルの含有率が80%以上で、衣料の他にもポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルやフィルムなどポリエステル製品全般だ。エコサークルでリサイクル後は繊維として供給する。

エコサークルのポイント

 エコサークルのポイントはケミカルリサイクル技術の確立に加え、そのネットワークづくりにもある。この活動は帝人だけでできるものではなく、アパレルメーカーや小売り、さらには消費者の協力が欠かせない。国内に留まらず北米や欧州、中国などグローバルに展開しており、エコサークルに賛同する企業は国内外150社以上に達している。例えば、2005年には米パタゴニアと機能性下着でリサイクルを開始。同社とはその後、フリース製品や防水透湿性ジャケットなどリサイクル対象製品を拡大している。ほかにも、企業ユニフォームやスポーツウエアなど幅広く展開している。

 2012年には、エコサークルの仕組みを活用して旭化成せんいと共同で実施している体操服のリサイクル活動で、京都市とも連携を始めた。同市は身近な体操服を通じて子どもたちの環境意識を育み、リサイクル貢献できるとして活動に賛同。同市内の小・中学校におけるエコサークル対応素材を使用した体操服の導入を推奨している。帝人は企業だけでなく、自治体との協力関係も構築し始めている。

中国でのエコサークル事業

 帝人が今後、注力しようとしているのが中国でのエコサークル事業拡大だ。中国でのポリエステル生産量は年3,300万トン規模で、世界の約7割を占める。最近では生産拠点としてだけでなく巨大消費地にもなっており、今後も市場の拡大が見込まれている。さらに環境意識も高まっており、エコサークルを展開するのに有望な市場だ。まずは2009年にスポーツアパレル大手の李寧が参加し、中国で初めてエコサークルを開始した。2012年には、アサヒグループホールディングスの中国拠点2社と、ポリエステル製防寒ユニフォームのリサイクルも始めた。

 さらに、中国で繊維事業を拡大するため、帝人は中国化学繊維工業協会と相互連携の基本合意を2012年3月に結んだ。同協会が紹介する中国の有力企業と中国の繊維製品の高付加価値化や生産効率の向上などを推進するのに加え、エコサークルでも協力関係を築いた。まずは建築や繊維製造などを手がける精工控股集団有限公司と合弁会社「浙江佳人新材料有限公司」を設立し、2014年度中に現地でポリエステルのケミカルリサイクルの本格生産を開始する。ケミカルリサイクル設備の設置は松山事業所に続き2拠点目となる。

 約60億円を投じ工場を新設し、ポリエステル原料のDMTを年2万トン、リサイクルポリエステル繊維を年1万9,000トン生産する。需要拡大を見極めたうえでDMT生産能力を年7万トン体制にまで引き上げる計画だ。将来は、中国化学繊維工業協会などの公的機関を通じて中国政府に循環型リサイクルシステム構築のための制度設計や法制化の働きかけを試みながら、中国全土での展開を計画する。

 一方で、リサイクル原料となる回収品の受け入れ評価は、帝人が2014年に江蘇省南通市に開設した商品開発センターが担当する。どのような回収製品を受け入れるかは、リサイクル時の生産効率を大きく左右するため、合弁会社とは別の帝人グループが請け負うことでノウハウの漏えいにも気を配る。

エコサークルによるリサイクル繊維の品種や機能の拡大

 もう一つ強化を図っているのが、エコサークルによるリサイクル繊維の品種や機能の拡大だ。リサイクル製品で環境に配慮しているからというのみの理由で、最終消費者にリサイクル代を上乗せした価格で購入してもらうのは難しい。バイオ素材、機能素材、生産プロセスの革新などの取り組みとエコサークルの仕組みを組み合わせることにより、リサイクル繊維でありながら高い機能性を有する製品を提供し、リサイクル以外の切り口でも魅力を訴求する。

 例えば、エコサークルの仕組みを用いてリサイクル可能ながら、着用時の快適性を追求し節電にも対応できる企業ユニフォーム向け素材を「エネセーブ」ブランドとして立ち上げ、展開しており、富士フイルムグループなどに採用されている。夏服は通気性を高め衣服内の温度を下げ、冬服には保温性に優れたリサイクル可能なポリエステル素材を使用する。製造現場での節電環境に対応するのに加え、制電性能や耐熱性など製造現場ごとに求められる機能を付与し、企業に提供していく。

環境関連の取り組みに高い評価

 エコサークルは環境関連の取り組みとして国内外から高い評価を受けている。これまでに環境省の「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」の技術開発・製品化部門賞や、日刊工業新聞社が主催する「日本産業技術大賞」の内閣総理大臣賞、ICISによる「ICISイノベーション・アワード」の環境部門賞などを受賞した。

 リサイクルは1回で終わる物ではなく、長期的視点で取り組むことが求められる。そこで認知度向上や忘れられないためにも、店頭でPR活動も行っている。また野外音楽イベントなどでも、来場者にエコサークルの取り組みを実際に体感してもらう活動をしている。会場内で発生した使用済みPETボトルを回収し、それがリサイクル繊維に再生されることをアピールしている。イベントでの取り組みを通じて、多くの人にエコサークルを身近なものに感じてもらい、理解を深めてもらうことを狙った活動だ。

 ただし、回収を促進することで結果的に買い替えが進むのは本末転倒であり、これまで回収を促すキャンペーンは行ったことがない。衣料として長く着用してもらえるよう快適性を追求した高い機能性をリサイクル繊維に付与できることもエコサークルの特徴で、高次元で環境配慮の理念を追求する。

 環境問題といっても多様で、対応するためにはいろんな取り組み方がある。繊維のリサイクルに関しては、燃費の良い車に乗ればCO2排出量を削減できるだけでなくガソリン代を抑えられるといった、最終購入者が享受する直接的なメリットが無い。エコサークルは一人ひとりの環境に対する意識と倫理観のうえに成り立っていると言っても過言ではないだろう。帝人は参加企業・団体を増やすことで賛同の輪を広げていくと共に、品質劣化の無いリサイクルシステムとして高い機能性を有するリサイクルポリエステル繊維の提供を通じて、これまで以上にエコサークルの取り組みに力を注いでいく。

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