環境ソリューション企業総覧2014Web
島津製作所

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02_水質・土壌対策 環境ソリューション企業編

VOC土壌汚染に対する
新たな原位置浄化技術の誕生

~電気発熱法について~


島津製作所

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VOC土壌汚染とこれまでの原位置浄化

 テトラクロロエチレン(PCE)やトリクロロエチレン(TCE)などの揮発性有機化合物(VOC)は、製造業などで様々な用途に幅広く利用されてきたため、現状でも広範囲におよぶ土壌・地下水に対する相当数の汚染があるとされ、発がん性が疑われる物質であることからも、社会的に大きな問題である。

 その浄化対策には多大な費用が必要とされるものの、改正土壌汚染対策法の施行に加え、近年の企業活動における環境マネジメントシステムの視点からも、操業中の工場等でも実施可能な原位置浄化への期待が膨らんでいる。

 従来は、原位置浄化法として比較的安価な揚水法やバイオレメディエーション法が採用されてきたが、とりわけ粘性土壌におけるVOC汚染については、対策工事完了後のリバウンド現象の発生もみられ、原位置浄化そのものへの信頼性を低下させる一因となっていた。

 島津製作所では、オランダから導入した基礎技術をもとに研究開発を重ねて、昨年、電気発熱法として発表した。電気発熱法は、粘性土に吸着したVOCに対しても極めて有効な浄化技術であり、その原理と実施事例について紹介する。

電気発熱法の原理

 電気発熱法のシステムは、地盤に挿入する井戸電極(ガス吸引や揚水を兼ねる),電極ごとに出力調整した交流電流を与える電源,ガス吸引/処理設備から構成される(図1)。場合によっては、地下水揚水/処理設備を伴うこともある。電極を通して土壌に交流電気を与え、電気抵抗としての土壌を直接的に40℃~80℃に発熱させることで、土壌間隙水の流動性の促進を向上させ、かつ土壌に吸着したVOCを脱離・揮発させてガス(もしくは高濃度の地下水)として回収することにより浄化する。同時に、土壌の発熱は、VOC分解微生物の活性化を高めて、バイオレメディエーション法によるVOCの分解を促進させる。

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図1

電気発熱法の3つの特徴

 第一にして最大の特徴は、従来のどんな技術でも困難とされてきた粘性土に吸着したVOCの浄化に効力を発揮できる点である。これは、電気発熱法の原理に由来している。すなわち、与える交流電流の電圧が一定であれば、土壌の電気抵抗が小さいほど、土壌中を流れる電流値は大きくなり、それに伴って発生するジュール熱も大きくなる。一般的に、土壌の電気抵抗値は、構成する粒子径に比例して大きくなるので、細かい粒子で構成される粘性土は、他の成分の土壌に比べて電気抵抗値が小さく、電気が流れやすいので、発生するジュール熱も大きい。

 例えば、深度方向に異なる土質で構成されVOC汚染が層状に存在しているような汚染サイトがあるとしよう。VOCは、一般的に礫層や砂層を通り抜けて、各粘性土層に吸着され留まっていることが多い。この場合、電気発熱法を適用すると、前述したように、他の土壌層に比べて電気抵抗値のより小さい粘性土層に、最も多くの電流が流れるため、結果として粘性土層への発熱が集中することになる。すなわち、電気発熱法では、VOCが留まりやすい粘性土を狙い撃ちして、浄化を促すことが可能となるのである。

 第二の特徴は、数メートル間隔で土壌中に電極を設置するため、電極で囲まれたスペースに構築物(地上なら工場設備や荷物、地中ならコンクリート基礎など)があっても、土壌中に流れる電流を妨げない限り、対策が可能という点である。これは、稼働中の工場等の活動を損なうことなく、文字どおり原位置浄化の可能性を示している。

 第三の特徴は、すでに施工済みもしくは施工中の従来からの原位置浄化法と共存できる点である。電気発熱法は土壌中を流れる電流による単純な発熱現象であるため、バイオレメディエーション等の微生物分解法を妨げないばかりか、むしろ土壌発熱による反応速度の向上や薬剤等の拡散性の向上により、併用する原位置浄化法をアシストすることが期待できる。

実施事例

 島津製作所では、国際環境ソリューションズ(株)の協力を得ながら、実際の汚染サイトで試験検証を重ねてきた。

 ある汚染サイトでは、地下7m~9mに層状に存在する有機性粘土層中に吸着しているcis-DCEをはじめとしたVOCについて、通電開始から約70日で土壌温度を60℃まで発熱させ、その発熱による地下水への脱離と気化の促進によって、通電開始から115日間でcis-DCEガスとして約1.5kg、その分解生成物であるVCMガスとして約3kgを、それぞれ回収することに成功した。

 その後も通電発熱を継続した結果、通電開始から約6ヶ月後には、発熱エリア内の土壌のcis-DCE溶出量を大幅に低下させることができた。また、60℃まで発熱させて揚水した地下水に含まれるVOCの量は、単位地下水容積あたり常温時のおよそ10倍であった。また、他のサイトでは不飽和帯の土壌汚染に対して、効果的かつ均一に浄化できることも確認された。

 これらの結果からも、電気発熱法を利用すれば浄化期間を大きく短縮させる可能性があるものと考えている。

今後の展開

 電気発熱法の正式発表から一年を経過した現在、すでにいくつかの実汚染サイトで試験運転中であり、日々その効果を検証しながら、データの蓄積と技術の向上に努めている。とはいえ、まだまだ産声を上げたばかりの新技術であり、ぜひとも多くの事業者の方々に評価いただき、採用していただけるよう今後とも普及拡大に努力したい。

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