環境ソリューション企業総覧2014Web
インタビュー インテル 荒木義満氏

インタビュー インテル 荒木義満氏

特集 特集2 リスク社会の環境課題とソリューション

IoTによる環境監視・分析技術を読み解く


インテル

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荒木義満広報室長に聞く

聞き手:環境ソリューション編集部


 「IoT」は環境分野では余り聞き馴れない新しいIT(情報通信)用語になるが、果たして環境分野に適用される技術になるのであろうか。関連技術などを予め独自に調べてみると、とくに社会的に重要な役割を果たす環境監視・分析の分野では、IoTの役割が従来にも増して大きくなってきているようだ。
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*モノのインターネット(IoT、Internet of Things)のこと。今までパソコンやサーバ、プリンタなどを主に接続していたインターネットにそれ以外の様々なものを接続すること。

 ここでは、環境監視・分析の分野を足元から強力にバックアップするIoT技術について、インテル広報室室長 荒木義満氏に聞いた。

IoTの基本的な仕組み

 図1が、IoTの基本的な仕組みだ。図左側に数多く接続されている機器類がエッジデバイス(ネットワーク接続可能な機器)と呼ばれており、コンピュータ機能をもったお馴染みのパソコンやタブレット、スマートフォンのような端末機器類のことをいう。こうしたあらゆる端末機器類がネットワーク接続されて利活用する世界がまさにIoTだ。これからは風力発電や航空機、ウェアラブル(衣服のように身に着ける)機器など、さらに多彩な端末機器類がネットワーク接続されることになる。

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図1 IoTの基本的な仕組み

 ネットワーク接続された端末機器から大量のデータ(ビッグデータと呼ぶ)が、次々にIoTゲートウェイ(異なるネットワークとの間でもデータのやりとりをスムーズに行える変換器、写真1)に取り込まれてくる。そして有線や無線のネットワークを経由して、図右側のデータセンタ(大量のデータを保管することを目的とした専用の施設)に送り込まれ分析されるという仕組みだ。

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写真1 IoTゲートウェイ

 インテルは、こうしたIoTの仕組みの中で、高性能なプロセッサ(送り込まれてきたデータを計算して処理するコンピュータの心臓部ともいうべきもの。半導体技術で大規模集積回路化されている)によってエッジデバイスをはじめIoTゲートウェイ、そしてデータセンタ機能を構築し、重要な役割を果たしている(写真2)。

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写真2 IoTを支える「インテルQuark SoC」と「インテルAtomプロセッサ」

 後述のダブリン市で活躍中のIoTゲートウェイの心臓部には、インテルが2013年に市場投入した32ナノメートルという微細加工技術に基づいた「Quark」(クオーク)と呼ばれる最新鋭プロセッサが搭載されている。これは、それまでの「ATOM」(アトム)と呼ばれるプロセッサと比較して、コア(演算処理の機能を持ったいわゆるCPUの性能を向上させるために、そのCPUの中にさらに複数CPUを持たせる。このときCPUの中のCPUのことをいう)サイズが5分の1、消費電力は10分の1すなわち1ワット程度で稼働する低消費電力型を実現させている。

環境監視・分析の新しい方法

 環境監視・分析におけるインテルのIoT事例としては、すでに興味深いものがいくつか実現されている。まず米国フロリダでは、いつでも即時に、より精密な気象データを大量に生成させるセンサによるグリッド(ネットワーク接続された多数のセンサを、仮想的にあたかも一つの大きなセンサとして利活用できるようにしたもの)を実現、それらから収集されてくる大量のデータをサーバで解析、可視化してフレキシブルな災害対応を行っている。ここで取り扱われるデータも分刻みあるいは秒刻みで収集可能なので、例えば天気予報などでは、ハリケーンやゲリラ豪雨などの予測もたてやすくなる。また、人口が集中する個所を優先して監視対象とすることも可能だ。

 また、英国ダブリンでは、市と協力して市街の電柱など柱上に、センサやIoTゲートウェイの入ったボックス(写真3)を6万5000個設置し、大気成分の計測を行っている。スモッグや騒音、水質、土壌などの成分が計測対象になる。そして、センサ群から得られた大量のデータは、フィルタリングと呼ばれる機能により無駄なデータを、いわば篩にかけて、周波数2.4GHz~668MHzの電波にのせてデータセンタに伝送されている。データセンタでは受け取ったビッグデータをサーバで分析し、環境汚染の状況を掌握することで、未来的予見まで可能となってくるのである。こうしたフロリダやダブリンの事例は極めて先進的なもので、ロンドンでも同様な試みが行われているところだ。

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写真3 英ダブリンで柱上に設置されるセンサやIoTゲートウェイが同梱されたボックス

 米国では、大型トラックの運行に関する燃費効率向上やCO2削減に向けた取組みも注目される。これは、大型トラックに各種センサなどリッチなエッジデバイスを搭載、ロケーションや加速度、運転手法などに関するデータをリアルタイムに監視し分析している。この状況はドライバーにもフィードバックされており、これにより米国では大型トラックだけで年間1900億リットル消費しているガソリンのうち、136億リットル(約7%)節約でき、さらにCO2も3800万トン削減できたという。IoTを活用するだけで、これだけ歴然たる効果を生み出すことができる、という証になる。またインテルではサンノゼ市とも協力して、スマートシティ取組みの一環としてIoT技術の利用により、水質を始め騒音、大気の品質などを解析する取組みを開始した。

地球環境を考慮したIoT活用に期待

 IoTの活用範囲は急速に広がりつつある。例えば、石油パイプラインなどは、延々何万キロメートルにも及ぶこともあるので、その中でトラブルが発生した場合、どこで漏れているのかその掌握は容易ではない。そうした際、インテルはセンサによる音響データ解析からパイプのひびなどトラブル個所を突きとめる技術も確立させている。

 インターネット全盛時代と言われるが、実際は世界の既存システムにおいては、85%の機器がネットワークには未接続の状況であり、機器間相互またはクラウド(従来のようにデータやアプリケーション類を自分のパソコンやタブレット、スマートフォンなどにいつも保存しておくのではなく、インターネット上に預けた形で使いたいときに使えるだけ使う環境のこと)との間でデータを共有されていない状態という(2015年には150億台が、2020年には500億台ものデバイスがネットワーク接続されると予測されている)。

 インテルでは、昨今の傾向にみられるように、IoTという言葉だけを独り歩きさせるのではなく、ビジネス上極めて重要なIoTを導入しただけの投資効果がきちっと見出せなければならないとの信念から技術開発に取り組んでいる。その意味では、日本は“これから”という実感を否めないようだ。

 ここで紹介した地球環境を考慮したIoTの活用は、今後も伸長していくことが予想される。特に、都市に人口が集中していくと、都市運営の効率化がますます必要になってくる。東京はまだしも、例えばアジア地域などではIoTの果たす役割はますます重要性を帯びてくる。

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