環境ソリューション企業総覧2014Web
インタビュー サントリービジネスエキスパート岸重信氏 菊池大輔氏

インタビュー サントリービジネスエキスパート岸重信氏 菊池大輔氏

特集 特集2 リスク社会の環境課題とソリューション

ペットボトルからペットボトルに再生する
「メカニカルリサイクル」に挑む


サントリービジネスエキスパート

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岸重信部長/菊池大輔氏に聞く

聞き手:環境ソリューション編集部


 ペットボトルにおけるリサイクルの世界に、新たな技術革新が起こり、大きな変貌を遂げようとしている。これまでペットボトルの多くは、衣料や食品用パックとしてリサイクルされていた。サントリービジネスエキスパートでは、“ペットボトルをペットボトルへリサイクルしたい”という一念から、いわゆる“水平リサイクル”のコンセプトに基づいた「メカニカルリサイクル」技術を開発、従来の石油原材料を一切使用しないペットボトルを実用化した。

 ここでは、サントリービジネスエキスパート SCM本部 新包材技術開発推進部 部長 岸重信氏(左)及びSCM本部 新包材技術開発推進部 菊池大輔氏(右)にメカニカルリサイクル技術のキーポイントを聞いた。

ペットボトルにおけるリサイクルの実情

 PET(ペット)ボトルリサイクル推進協議会の2012年度ペットボトルリサイクル年次報告書によると、わが国のペットボトル回収率は世界的にみても極めて高水準であるという。図1からもうかがえるように、直近の2012年度の場合、指定ペットボトル販売量に対する回収率は90%を超えるほどだ。棒グラフで示された回収元の内訳では、スーパーやコンビニ、鉄道会社など事業者みずからが回収したものを指す事業系、市町村が各家庭から回収したものを指す自治体系のうち、約60%が自治体ルートといった現状だ。だが、見方によっては国内リサイクルシステムの危機ともいうべき事情がある。

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図1 PETボトルの回収状況(PETボトルリサイクル推進協議会)

 注目すべきは、費用の図式の変化だ。リサイクル事業者では、2005年までは回収されたペットボトルを費用とともに受け取り、その後のリサイクル処理を行っていたが、近年は新興国における資源としての使用済みペットボトルの需要増も影響して、海外にも流れていくようになり、回収ペットボトルを確保するために逆に費用を支払わなければならなくなってきた。

 また、危機というには極端かもしれないが、これまでは、回収されたペットボトルが、衣服や卵などの食品パックとして再利用されることが比較的多く、“ペットボトルをペットボトルへリサイクルする”ことをめざすには、かけ離れた状況もあるといわざるをえない。

めざすは“ペットボトルからペットボトル”

 そこで、サントリービジネスエキスパートではリサイクル事業者の協栄産業株式会社と協働で、ペットボトルをまたペットボトルに戻そうという、美しくピュアなリサイクルを実現させるための開発に取り組んだのである。これが、同社がめざす“水平リサイクル”の世界だ。

 実は、これまでにも、ペットボトルをペットボトルへもどすという技術自体はあった。図2がそうで、これはケミカルリサイクルと呼ばれている。飲み終わったペットボトルを粉砕洗浄後、解重合や精製を経てPET粗原料である分子状態にまで戻すというプロセスである。ペットボトルの原料であるPET分子の状態にまで分解できるので、除染能力が非常に高い手法だ。ただしこの手法は除染能力は高いが、実はかなりのコストとエネルギーを要する。2000年頃から存在し利用されているというが、やはりコスト高の壁は高く、それほどの普及がみられていないのが実情だ。

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図2 PETボトルのリサイクル手法

“水平リサイクル”思想に基づくメカニカルリサイクルPET

 サントリービジネスエキスパートが狙いを定めたのが、“水平リサイクル”のコンセプトに基づく「メカニカルリサイクル」である(図3)。

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図3 メカニカルリサイクルの処理フロー

 この仕組みは、まず回収されたベールを選別し、機械で約8mm角に粉砕、フレーク化する。その状態では未だラベルなどが付着しているので、風力あるいは水による比重分離により異物を除去する。その後アルカリ洗浄したPETフレークを、高温真空下で反応させることで除染し、押出し工程を経ることでペレットと呼ぶペットボトルの原料になる。

 前述のケミカルリサイクルが、化学分解によって高分子からさらにペットボトルの粗原料である分子状態にまで分解するのに対し、メカニカルリサイクルはそこまで細かく分解せずに、除染することで、リサイクルを行うのである。

 メカニカルリサイクル技術は2011年に開発されたが、そのキーポイントは、共同開発した協栄産業のリサイクル処理における高い技術力に基づいているのだ。

メカニカルリサイクルPETの課題

 メカニカルリサイクルPETには、いくつかのクリアすべき課題があった。例えば、汚染成分の除染だ。図4には、汚染成分あるいは不純物除去のための洗浄(除染)原理を示した。食品用ペットボトルを洗剤保管など二次使用すると、汚染物質がペットボトルの材料自体にまで染み込む場合がある。それが材料内に残ったままだと、リサイクル製品化しても、とても使いものにはならない。ところが今回のメカニカルリサイクルPETの技術を使えば、粉砕してフレークにした後、アルカリ洗浄工程でフレーク表面を削り取り、さらに高温・真空環境下でフレーク内に染み込んだ汚染物質が飛び出しやすい沸点にまで上げてやるので、完全に除去できる仕掛けだ。

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図4 メカニカルリサイクルの洗浄原理

 メカニカルリサイクル導入検討時に、故意に汚染させたペットボトルを実際の再生処理工程で処理し、汚染除去性能を評価する試験を数多くこなした実証に基づいてつくりあげられているのである。

 また、ペットボトルの外観も重要な課題だ。ボトルの黄色味は混合比率で異なるが、日本の回収ベールの品質やリサイクル事業者の洗浄・異物除去技術力から判断すると、50%以上でも十分使用に耐えうるという判断がなされている。また、回収ペットボトルの季節変動による物性や品質のバラツキなどといった課題のために、年間を通じて、粘性などのレジン物性や異物レベル、ユーザーの反応などをウオッチしてみても、上記関連の物性は季節の影響はなく非常に安定している、という結果が出されている。

再生PET樹脂100%の世界を実現

 2011年にサントリー食品インターナショナルが開発したメカニカルリサイクルによって、同年5月から、「サントリーウーロン茶」に再生PET樹脂を50%使ったペットボトルが採用された。

 その後約1年間、メカニカルリサイクルを運用していった結果、上記諸課題をクリア、さらに安定供給の可能性も確認できたとし、2012年1月までに約2500万本を製造した。2014年4月には国内飲料業界で初めてこのシステムで製造した再生PET樹脂の使用量を50%から100%にまで拡大した。この結果サントリーでは、石油に由来した原料を一切使用しないペットボトルの製造が可能になる、という快挙を成し遂げた。一方、ペットボトルに巻き付けられているロールラベルにも実は一工夫がある。業界初のメカニカルリサイクルPET樹脂を原料にした商品ラベルが採用されているのである。その商品ラベルの膜厚は国産最薄の12μmである。

 なお、メカニカルリサイクルPET樹脂の使用量は、2013年度10,000トンという実績であったが、2014年度は、15,000トンを予定している。このメカニカルリサイクルの技術は、前述した海外への資源輸出が懸念される中、新たな石油資源を消費することなく、国内での資源循環システムを確立できるようになる、というメリットを創出可能な要因も孕んでいるのだ。

 今後は、炭酸飲料向けにも、メカニカルリサイクルPETの採用を検討している。

 サントリービジネスエキスパートでは、ここの技術を自社内にクローズさせるのではなく、オープンにして可能な限り世の役に立たせたいという思いから、他大手飲料メーカー数社でも採用されている。

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