環境ソリューション企業総覧2014Web
インタビュー 全国廃棄物教育センター連合会 松岡力雄氏

インタビュー 全国廃棄物教育センター連合会 松岡力雄氏

特集 特集2 リスク社会の環境課題とソリューション

廃棄物処理実務資格者検定の取組み


全国廃棄物教育センター連合会

t2_04_01

松岡力雄理事長に聞く

聞き手:環境ソリューション編集部


 廃棄物処理業の社会的な評価向上をめざした処理業従事者向けの「リサイクルマスター3級」及び廃棄物ドライバー向けの「ECOドライブ安全認定3級」といった二つのNPO資格検定の地道な歩みが注目を集めている。

 言うまでもなく、廃棄物収集処理及びその運搬業務は、企業や家庭生活などにおいて極めて重要な役割を担うが、それにもかかわらず社会認識としてはいまだ不十分な点は否めないようだ。こうした趨勢を反映して、NPO法人全国廃棄物教育センター連合会では、廃棄物処理業の社会的な重要性や評価を向上させるために、上記二つの検定及び認定を精力的に啓蒙中だ。ここでは、NPO法人全国廃棄物教育センター連合会埼玉本部理事長松岡力雄氏に、それらの近況を聞いた。

NPO立上げと資格検定の遠因

 以前、松岡氏の知人で廃棄物を取り扱う某企業代表者の子息が、親の従事する仕事のことで、いじめにあっていた。その理由が、親が廃棄物処理業者ということで業種差別をされていたのだ。そこで、子供に自分の仕事をどう説明してやるといいのだろうか、と相談を受けた。この時代、廃棄物処理などは社会的に極めて重要なことは自明の理なので、そのようなことは思いも寄らぬことであった。

 確かに、自分の仕事は社会貢献にもなり、極めて意義深いことと自覚はしていても、世間ではそのまま理解を得られないことは多々ある。そこで、松岡氏は仲間うちで、どうしたものかと議論をした。そこで、出てきた結論が、廃棄物取扱いに関する資格が存在すれば、その資格のもとで親が立派に仕事をしている、という誇りの証になるのではないか、ということになった。実際、廃棄物関係の仕事は、トラック1台をもち関連団体で講習会を受講、修了証を受け取り、都道府県への申請により個人でも可能だ。やがて、人手が不足し雇用する段になると、まず大型車免許を所持する人たちが応募してくる。その人たちは廃棄物についての経験がなく、単に運搬するという仕事の範囲を出ない。しかし、廃棄物というものは、法律や分別自体も複雑で、一筋縄ではいかないものである。

 こうした仕事に就く人たちの養成等は、国としても手つかずになっているのが実情だ。そこで、志をもつ人たちが結集してNPOを立上げ、仕事に対するプロ意識あるいはプライドをもった人材育成をめざして資格検定を実現させる運びとなったのである。

「リサイクルマスター3級」「ECOドライブ安全認定3級」

 当初は、産業廃棄物や一般廃棄物など法律を中核にすえたテキストづくりを行った。

 しかし、処理業経営者にテキストを見せると、これだと従来の講習会での内容と大差ない理論尽くめのものになってしまうのではないか。例えば、廃棄物を運搬するトラック運転手は一日の仕事の流れや、報告・連絡・相談・安全第一をなかなか覚えてくれない。それよりもまず現場で重要なことは、客先では元気な笑顔で挨拶することから始まるのではなかろうか。

 そして決められた日に間違いなく客先を訪れて安全に廃棄物をトラックに積載、きちんと整理整頓する、そして客先からお礼を言っていただく、その基本的なことが最も重要なのではないか。そうすれば、今後も顧客としての贔屓が得られる。このことを学ぶ方が最優先ではないか、という基本中の基本へ、当初の法律学習的な指向から資格者としての心得、プロ意識醸成へ変化してきたのである。

 そこで、以下の2つの資格検定が誕生した。

(1)リサイクルマスター3級(初級)

 この資格検定は、リサイクルのプロとして廃棄物処理・リサイクルの基本を学ぶことであり、同時に礼儀や挨拶を始め協調、思いやり、体力錬成、健康管理、安全第一、コミュニケーション(会話)など人間力の向上に主眼をおいている。これを出社から帰宅までの間徹底させる。例えば、出社はギリギリではなくゆとりを持たせなければならない、そして従業員どうしで服装は大丈夫か、汚れはないかなどを点検しあう。

(2)ECOドライブ安全認定3級(初級)

 この検定の目的は、廃棄物車両の事故防止を始め安全確認、燃費向上、CO2削減になる。プロの廃棄物ドライバーとしての意識や動作、態度、運転理論などについての座学研修を行う。対象者は普通自動車運転免許所有以上で、イラストや動画などを用いた極めてわかりやすい教材に基づく研修内容となっている(写真1)。

t2_04_02
写真1 アクセル操作や車間距離測定などECOドライブ安全運転を学ぶ

(3)研修内容と検定方式

 上記の資格取得のための研修などは、いずれもNPO認定講師が研修希望する企業に出向く、いわゆる出張検定が前提だ。

 具体的な研修内容は、リサイクルマスターの心得や廃棄物処理・リサイクル業の基本を約40分程度学習する。出張検定は平日夜間でも、祝祭日でも相手先企業の都合に合わせられる。事前の勉強は一切不要で、配布テキストはなく、メモの必要もない。正面スクリーンに投影されるパワーポイントの教材に集中し、あくまで日頃の業務をおさらいする形式となっている。ただし居眠りは要注意だ。

 また検定は、NPOの講師が問題を1問ずつ読み上げ、全員で1問ずつ回答していく学習検定方式をとっている。すなわち講師とともに問題を解いていくもので、回答を考えることで心得を学習できるといった現場実践型となっている。検定問題は20問で所要時間約20分、3択の中から一つだけ○をつける。14問以上の正解で合格になる。合格率は95%以上だ(写真2)。

t2_04_03
写真2 リサイクルマスター3級検定試験問題の例

 なお、出張検定料金は、従業員1名につき8000円(消費税別)で、最低5名から受講でき他社との合同検定もかまわない。検定会場は依頼企業が、所定数の机や椅子、プロジェクタ投影用の白い壁やスクリーンを用意する。

 合格すると、NPO資格リサイクルマスター3級身分証及び登録証が付与される(写真3)。

t2_04_04
写真3
(a)合格時に付与される3級の身分証

t2_04_05
(b)登録証(リサイクルマスター3級)

2級・1級へのチャレンジ

 これまでに、二つの資格検定の受講者は、332社1043名(うちリサイクルマスター751名、ECOドライブ292名)を超えた(2014年7月現在)。中には外国人の受講者もいる。この結果は、スタート以来約4年という期間ではあるが予想以上のニーズがあったことを物語っている。受講者たちに検定時に起立させ、質疑応答する訓練がある。すると、最もつらいことについて、例えば寒さや暑さ、においなど、実作業に対する本音も出てくる。そこで、講師と受講者のやりとりを全員で聞くことで、仕事への共感やコミュニケーションも深まっていくそうだ。

(1)2級(中級)検討委員会

 NPO法人全国廃棄物教育センター連合会は今後の計画として、2級(中級)の検討委員会に鋭意取り組み始めた。年度末には、そのカリキュラムもできあがり、来年度より2級をスタートさせる予定だ。2級からは、プロ意識の醸成からいよいよ本格的に知識や技能などへのチャレンジが始まる。そうなると、受講に使用されるテキストの姿も変わってくる。

 例えば、廃棄物となったプラスティックなどもさまざまな種類があるが、それらが何にリサイクルされるかなど、目利きができなければならない。3級ではパワーポイントで作成した教材を講習会場の白壁などに投影して利用していたが、2級では現場で取材した動画を見て学んでもらう。

 これら新しい動画教材は全国廃棄物教育センター連合会のサーバに搭載し、受講者には、発行されたパスワードによりインターネット接続し、手元のPCや携帯端末により昼休みなどに、1日15分程度みてもらう形式だ。まさにeラーニング検定での対応が始まる。

(2)1級(上級)は管理者養成コース

 次の1級になると、いよいよ管理者養成コースになる。例えば、現3級におけるドライバーは、一ドライバーあるいは一作業員であり、2級は自らの仕事に関わる知識を身につけることであった。そして1級では、いよいよドライバーをとりまとめるドライバー管理者的なリーダーの役割が重要になる。

 実は、業界の現状からすると、こうした養成が容易ではないという。

 管理簿の付け方、配車計画、上司への報告、取引先への法律に基づいた収集・運搬実績への報告等々の諸実務が発生してくるのだ。

ゴールは業法制定と適正処理価格

 この資格検定の最大の特長は、従来のような国などの意向が反映しているのではなく、業界として自らの資格検定をつくる現場で業務に従事する人の声を反映したものであり、現場に根ざした実践型だ。一般的な試験のように、ふるい落とすのではなく、できるだけ多くの合格者を創出し、人材の質を向上するためのものになる。その意味で、この資格検定の取得者が会社で評価を受け、給与面等で優遇されることが理想の姿といえる。

 委託する排出事業者の処理費用から従業員の給料は支払われる。現に、これまでに企業から受講する人たちの費用は、そこの代表者(会社)が負担しているケースが多い。つまり、「会社単位」の受講体制ができあがっている。

 現在、一般廃棄物の収集・運搬は市町村などから受託する会社が多い。今後、予定していた2級及び1級まで完成した暁には、NPOとしては自治体に向けてこうした資格検定を保有する堅実な会社を委託先として評価してもらうよう、働きかけたい意向だ。さらに、これが現場ニーズから誕生した国家資格としての認定を得れば、そこで「廃棄物処理業法」という法律ができ、国全体としてもオーサライズされる位置づけになるはずである。そうなると、廃棄物に関する大学・専門学校等の教育機関なども増加してくる。世間の認知度も向上し不法投棄などにもセーブがかかる効用が考えられる。

« »