環境ソリューション企業総覧2014Web
インタビュー 林野庁 鈴木綾子氏

インタビュー 林野庁 鈴木綾子氏

特集 特集2 リスク社会の環境課題とソリューション

わが国の実情にマッチする
木質バイオマスへの期待

~国土70%が森林~


林野庁

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鈴木綾子課長補佐に聞く

聞き手:環境ソリューション編集部


 近年、再生可能エネルギーの一つとしてバイオマスに対する関心が高まっている。バイオマスは生物に由来する例えば農作物の残さや下水汚水処理による有機物、家畜の排泄物、家庭の生ごみほか様々なものがそのエネルギー源候補として挙げられている。中でも国土の約70%が森林という世界有数の森林国であるわが国の実情にフォーカスした木質バイオマスが、ここへきて急速に注目され始めた。いま発電を始め熱、その他物理的マテリアル分野等に活用して、林業の活性化をめざす取組みが展開されつつある。

 ここでは、その近況を林野庁林政部木材利用課課長補佐木質バイオマス推進班担当 鈴木綾子氏に聞いた。

わが国の森林が抱える課題

 わが国の森林面積は、近年2,500万ヘクタールと横ばいで推移しているが、蓄積は、2012年現在で約49億立方メートルとなっている。しかも、人工林を中心にその蓄積量は充実しつつあり、毎年約1億立方メートルずつ増大している。この人工林は、未だ間伐等の施業が必要な育成段階にあるが、伐採して住宅や家具などに使用可能となる概ね50年生以上の高齢級の人工林が年々増加しつつある。

 森林は、国土の安全、水源のかん養、地球温暖化の防止、災害の防止などの多面的な機能を有しているが、この機能を発揮させるためには、適切な森林整備が必要である。そこで、間伐により、林内に適度に光が差し込むようにして森林の下層にある植生を繁茂させたり、残った樹木の成長や根の発達を促したりすることが必要である。

 また、このように森林の適切な整備を進めていくためには、国産材を積極的に使用すること、山村を活性化すること、林業などで働く人材を育成していくこと、森林づくりを国民全体で支えていくことなどが肝要となる。その取組みの一つとして、住宅などの用途に国産材を使った後に残った木材や、林地に放置されて使われていない木材を燃焼させ、発電や熱に活用するという木質バイオマスによるエネルギーへの活用も、重要な役割を果たしているのだ。

木質バイオマスへの取組み

 わが国の木材自給率は、28.6%(平成25年)であり、国産の用材需要量は約2100万立方メートルである。年間の伐採量が約4000~5,000万立方メートルであることから、ほぼ同量の枝葉や梢の部分などが伐採現場に残されていることとなる。これが林地残材と呼ばれるものだ。製材所など木材の加工の工程でも端材は発生するが、それらはすでにほとんどが有効活用されている。しかし、林地残材は、現時点ではその多くが未利用のままだ。そこで林野庁では、この林地残材すなわち未利用材に注目し、これらを有効に使うことで、林業のさらなる活性化をめざしている。

 これまでも、木質バイオマスは、木質チップにより紙パルプや木質ボードあるいは家畜敷料など、いわゆるマテリアルを中心に利用がされてきた。また、木質チップや木質ペレットのボイラーとして、石炭火力発電所における木質バイオマス混合利用による発電として、あるいは温泉施設などにおける熱利用といったエネルギー利用もされていた。

 最近注目を集めているのは、未利用材の燃焼による木質バイオマスとしての利活用だ。確かに、燃やすという行為はCO2を排出することになるのではないか、という懸念を抱く人もいるかもしれない。しかしながら森林は、実は光合成により大気から吸収したCO2の塊りのようなものであり、これを伐採し、再びきちんと植えることを繰り返すことで、カーボンニュートラルということになる。

木質バイオマスによる発電利用

 いま、最も関心が集まっているのが発電だ。未利用材による発電の概念がクローズアップされてきたのが、2006年以降である。ただ当時は、前述のようにまだ石炭火力発電所で、化石燃料である石炭に木質チップを混合させて燃焼させるというものがほとんどであった。現在の、名実ともに木質バイオマス100%で燃焼させて発電するという段階に入ってきたキッカケは、2012年7月開始の固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)の影響が大きい。

 図1に木質バイオマス発電の仕組みを示した。これは、木材チップや木質ペレットなどバイオマスに由来した燃料をボイラーで燃焼して蒸気に転換して、タービンを駆動、そして電気エネルギーや熱を得るというものだ。また、わが国では、必ずしも浸透しているとはいえないが、蒸気ではなく高圧ガスによりタービンを駆動させる技術もある。いずれにしても、この木質バイオマス発電は、方式としては基本的には従来の化石燃料による発電方式と大きな違いはないものの、化石燃料による発電方式との大きな差異は、石炭や重油など化石燃料は海外から購入してくるので、そこでの原料代の支払いは海外に流れていくことになること、CO2排出による地球温暖化という深刻な問題を抱えること、である。


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図1 木質バイオマス発電とは(出典:林野庁業務資料)

 一方、木質バイオマスの場合は、地域の森林資源などから燃料を調達するので、地域の資源を使って発電することになり、その原料代は該当地域に入る。また、発電施設を運用したり、燃料を調達することが必要となるので雇用創出にもつながり、地域活性化のみならず、林業の成長産業化や森林整備の推進にも結び付く。加えて、なんといっても前述のように、カーボンニュートラルなので、地球温暖化を防ぐことになる点は大きい(図2)。


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図2 化石エネルギーとの比較からみた木質バイオマスエネルギーのメリット(出典:林野庁業務資料)

再生可能エネルギーにおける木質バイオマスの経済性

 前述したように、木質バイオマス発電が俄然注目を浴び始めたのは、FITによるものと言わざるを得ない。FITは、太陽光をはじめ風力、水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーによる電力を、電気事業者に、国が定めた調達価格・調達期間において調達することを義務付けたものだ。その基本的な仕組みを図3に示した。この図には、政府による買取り価格・買取り期間の決定方法をはじめ買取り義務の対象となる設備の認定、買取り費用に関する賦課金の徴収・調整、電力会社による契約・接続拒否事由なども、併せて規定してあるので参照されたい。


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図3 固定価格買取制度の基本的な仕組み(出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第1回配布資料)」)

 もちろんFITによる波及効果は、バイオマス以外の太陽光をはじめ風力、中小水力、地熱などの再生可能エネルギーの伸長にも寄与している。経済産業省・資源エネルギー庁によると、2003年から2008年にかけて再生可能エネルギーは年平均5%で伸長していた。ところがFIT開始の3年前、2009年には500キロワット未満の太陽光に関し、電気事業者に国が定めた調達価格・調達期間での再生可能エネルギー電力の調達を義務付けた“余剰買取り制度”が始まっており、2009年から2012年までの年間平均伸長率は9%に上昇した。そして2012年からはFITが開始され、年平均伸長率は2013年が前年度比32%と、従来にはみられない伸長ぶりをみせるなど、急速な成長を呈示し始めたのである。

 表1には、再生可能エネルギーによる電力の調達価格の概要を示した。ここでフォーカスしている未利用間伐材による発電に関する調達価格は32円(税抜き)、調達期間は20年間となっている。


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表1 調達価格のポイント(出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第1回配布資料)」)

わが国における未利用間伐材等による木質バイオマス発電

 世界をみたとき、2012年時点で、原子力や天然ガス、石油、石炭など全エネルギーによる発電電力量の中で、再生可能エネルギーが占める発電は、スペインが30%、ドイツが22%、フランス15%、アメリカ12%、イギリス11%といった順であるが、日本は2013年度においてイギリスと同じほぼ11%程度といわれる(経済産業省・資源エネルギー庁)。さらにこの中で、バイオマス発電の占める割合は上記各国ともに、まだ目を引くほどの数字にはなりきれてはいないのが実情で、日本の場合ひいき目に見ても2.5%程度といわれる。さらに木質バイオマス発電に絞れば、ドイツやオーストリアなど森林国が比較的その比率は高いとみられている。また、参考までに、経済産業省・資源エネルギー庁によるエネルギー基本計画における再生可能エネルギーの各エネルギーにおける2012年の発電電力量及び2020年、2030年の予測発電電力量等の割合を表2に掲げた。


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表2 エネルギー基本計画における再生可能エネルギー源ごとの発電電力量(出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第1回配布資料)」)

 そのような中、わが国で未利用間伐材を利用した木質バイオマス発電は、福島県・会津若松市における「グリーン発電会津」が送電出力5,000キロワット/hで稼働している。これが未利用間伐材を主に活用する木質バイオマス発電の歴史的にも記念すべき第1号だ。また、大分県・日田市の「グリーン発電大分」(5,000キロワット/h)や長野県・長野市の通称「いいづなおやまの発電所)」(2,800キロワット/h)、岩手県・宮古市の「ウッティかわい」(5,000キロワット/h)と呼ばれる施設などが、未利用材を主に活用する木質バイオマス発電施設として稼働中である。

 わが国の再生可能エネルギーは、2014年4月、これまでのエネルギー基本計画が示した電源構成比20%をさらに上回る水準を目指して導入を促進させる旨、閣議決定された。この閣議決定の内容をもとに、再生可能エネルギーの電源ごとの導入状況をふまえた、新しい水準を達成させることの可能性検証や想定される国民への負担等に関しシミュレーション等が行われることになった。これに先立って、買取り制度先進国である欧州の実情調査も行われる。そのうえで、エネルギー基本計画で明示されたように、再生可能エネルギー源の最大の利用促進と国民負担の抑制を最適な形で両立させうるような施策の組合わせ構築を軸として、法律に基づきエネルギー基本計画の改定に伴い総合的に検討、その結果に基づいて必要な措置を講ずることになっている。

 改めて木質バイオマスエネルギーの利活用をみたとき、先人たちの手によって、戦後植栽されたスギやヒノキなど人工林の恩恵を真摯に受け止めて、これからの取組みに精進することが肝要であろう。

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