環境ソリューション企業総覧2014Web
インタビュー エコビジネスネットワーク 安藤眞氏

インタビュー エコビジネスネットワーク 安藤眞氏

特集 特集1 地球温暖化(GLOBAL WARMING)対策の新事情

わが国の環境ビジネス
~全産業分野に裾野を広げる~


 

エコビジネスネットワーク

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安藤眞代表に聞く

聞き手:環境ソリューション編集部


 

 環境ビジネスに関わる市場規模は着実に成長し続けている。その規模、環境省の調査によると、すでに80兆円を超えている。一方で、雇用規模も増大する傾向を示している。その背景には、環境ビジネスがありとあらゆる産業に対して関わりをもつことと、中核をなすわが国の環境技術が、これからは海外、とくに発展途上国で顕著となりつつある公害問題の対処のために貢献でき、輸出面での伸長ぶりが予測されることなどがあるという。

 ここでは、エコビジネスネットワーク代表 安藤眞氏に、わが国の環境ビジネスに関する近況を聞いた。

成長し続ける環境産業における市場規模

 いま、環境ビジネス市場があついと言われる。確かに、あのリーマンショックでは、2009年に縮小傾向をみせた。しかしその後は、見事に伸長傾向を続けている。図1を参照されたい。

 

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図1 環境産業の市場規模と雇用規模の推移(出典:環境省)

 

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表1 技術系環境ビジネスとソフト・サービス系環境ビジネス(エコビジネスネットワーク作成)

 これは、2000年から2012年に至るわが国の環境産業における市場規模推移を示したものだ。図1左が市場規模であり、右が雇用規模である。左のグラフでは、2000年から2008年にかけて、対前年比100%超えを続け、着実な市場の成長ぶりをうかがわせている。しかし、さすがに2009年のリーマショックだけは回避できず、対前年比90%を下回ってしまった。しかし、2010年になると、みごとに回復をみせ、2011年にはついに80兆円を突破、2012年には86兆円と、いよいよ90兆円に迫る勢いをみせてきている。

 一方、市場の成長に関わる雇用規模も然りで、図1右にみるように、2008年に減少傾向はみせたものの、それ以外はいずれも対前年比100%クリアを継続してきている。

 市場規模及び雇用規模の、より具体的なデータは図1下の表に掲げたので参照されたい。

全産業に裾野を広げるわが国の環境産業

 例えば、常に注目を浴びるわが国自動車産業の市場規模は50兆円強といわれる。また建設産業は14兆円弱といったところが実情のようだ。その一方、環境産業はいよいよ80兆円を超えた。それでは、一見地味にも思える環境産業が着実あるいは堅実な伸長を遂げる背景には、何があるのであろうか。

 第一にあげられるのは、環境産業は、実は全産業をカバーするような形で成り立っているからだ。例えば、農業をはじめ林業、畜産、水産の第一次産業ではバイオマス資源の利活用に始まり、有機系廃棄物のリサイクル、有機農業を軸としたパーマネントアグリカルチャ、国内産材・間伐材を利用した建築資材等のほか、地の利をいかした太陽光、風力、小水力発電等があげられる。また製造業や建設業、鉱業といった第二次産業の製造業では、さまざまな再生可能エネルギー、省エネ、リサイクル環境装置、蓄電池、燃料電池等の機器開発・販売、建設業では環境配慮型のビル建設、建築廃棄物リサイクル等があり、鉱業では廃家電、廃自動車等のリサイクルのほかに、最近では電子・情報機器の希少金属の回収やリサイクル等の事業が拡大している。この第二次産業が現在、環境ビジネスの本流で売上げの60%以上あるのではないかと思われる。そして電気やガス、流通、金融等サービス業から成る第三次産業では、再生可能エネルギー、省エネ等の事業、環境配慮型製品の流通、環境広告等のほか、さまざまなグリーン・コンサルティング分野が広がっている。

 最近では、スマートグリッドにかかわるBEMS(Building Energy Management System)やHEMS(Home Energy Management System)の設計・導入等の事業が次第に拡大してきている。このように環境産業は全産業にわたり、全員参加型のビジネスに発展し、参入企業数は1万社を突破、その事業アイテムは900にのぼり、ここに揺るぎない成長要因が隠されているのだ。表1に、そうした環境産業の要素をわかりやすく、技術系環境ビジネスとソフト・サービス系環境ビジネスに整理した。

発展途上国を中心に期待される海外市場

 もう一つのわが国の環境産業成長の要因としては、今後ますますクローズアップされるであろう発展途上国を中心とした公害問題対処を目的とした海外市場があげられる。そうした国々では、わが国の公害に対処する技術を始め省エネルギー技術、またリサイクル技術など、実績ある環境技術の貢献が期待できるはずである。

 発展途上国では、これから大気や水質、土壌などの汚染といった公害問題が懸念される。こうした国々の改善対策に実体験豊富なわが国の公害対策技術が生かされてくるものと思われる。こうした分野の市場は十分開拓が進んでいないのが実情なので、ここでわが国の環境技術が市場のリーダシップをとっていくことは十分期待できそうだ。

 すなわち、前述の80兆円を突破した環境産業の市場規模に、例えば海外ビジネス分の20~30兆円が加わることは、まったく夢ではない。ただし、このときの課題は、大手自動車会社の場合は常に海外市場相手に慣れているのでグローバルな戦い方の術を知っているが、環境技術の場合は、期待される市場が十分見込まれるとはいっても、未経験に近い。すなわち、未知の部分が大きいので、決して予断は許さない。重要なことは、日本には環境に関わるビジネス性をもった技術がすでに数多く用意されているので、これら有利な条件を上手に生かすことだ。

公害やオイルショック等過酷な体験で培われてきたわが国の環境技術

 それでは、わが国の環境技術は、今日までどう醸成されてきたのであろうか。

 わが国は、忘れもしない深刻な公害、オイルショックなどを体験してきている。日本が経済成長を始めた1960年代における公害問題が表面化した頃は、あの水俣病を始めイタイイタイ病、四日市や川崎の大気汚染など、世界でも名だたる公害大国とまでいわれた時代であった。実はこのときわが国では、国と産業界が官民一体で約30兆円を投入、公害への対処技術開発に取り組んだのである。過酷な実体験に基づき、曲がりなりにも公害を克服した対策技術が現在、50年の歴史に根ざした日本が世界に誇る環境技術の「礎」になっているといっても、過言ではない。

 一方、1970年代は中東戦争が勃発、わが国もそれによる第一次オイルショックを体験した。すなわち、これまで不自由なく恩恵を受けてきた石油が海外から入ってこなくなったのだ。そこで当時、通商産業省(現・経済産業省)が取り組んだ対策が、第一に石油の備蓄、そして第二に省エネルギーである。実は、いまでこそ当たり前になったいわゆる「省エネ」という言葉は、この時点において誕生したのだ。だが当時の省エネは、例えば節電など、極力使わないようにしようという“節約”に等しいものであった。この省エネへの取組みが、「ムーンライト計画」(1978年~)と呼ばれた。そして、このとき通商産業省は、「サンシャイン計画」(1974年~)も開始した。主なものに太陽光発電開発への積極的な取組みがある。同時に、石油エネルギーの代替として燃料電池開発への取組みも行った。なお、省エネに関する技術は40年という歴史に根ざしている。

 このように、当時のエネルギー政策は、通商産業省が国の舵取りをしっかりと行っていた、といまでも業界の評価は高いものがあるようだ。

キーとなる環境ビジネスへの4つの参入形態

 環境ビジネスの形態は、かつてはB to G(Business to Government)すなわち公共事業が中心であった。現在、本流はB to B(Business to Business)だ。このB to Bにも二つのパターンがあって、第一が各企業における環境改善活動である。すなわち生産ラインのグリーン化あるいは自らが販売する製品のグリーン化などがあるが、このためにさまざまな関連装置が必要とされる。これは大きな市場として期待される。第二は、各企業が環境ビジネスに参入したい場合だ。たとえば、メガソーラの事業に取り組みたい場合、当然大量の太陽電池が必要になってくる。そこに環境ビジネス関連のベンダーにはビジネスチャンスが生まれてくる。

 さらに今後大いに期待される新しい市場はB to C(Business to Consumer)、すなわちコンシューマ(消費者)向けだ。食や毎日使用する生活用品などの安全性で、環境や健康によいもの、それほど資源を使用しないものなどである。こうしたものを使ういわゆるグリーンコンシューマは、都市部を中心に増大しつつある。もちろん、あの東日本大震災以降も影響はしている。まだ、未開拓分野ではあるが、拡大の兆候はみられる。

 環境ビジネスへの参入の形態は、図2のように、4つの形態に集約される。

 

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図2 環境ビジネスへの参入形態(エコビジネスネットワーク作成)

 

 第一が、「生産ラインのグリーン化」である。すなわち生産ラインを省エネ化したり、生産ラインから極力廃棄物を排出させない、またリサイクル化を図る、汚水を外部に出さないとともに水質汚濁を防止するなどである。もう一つ重要なことは、各企業では多く環境エンジニアリング部を設け、ゼロエミッション、省エネ、有害物質排出制御を行っており、そこを分社化する大手企業も珍しくはない。そしてここで創出したグリーン化技術やノウハウ・経験を他社に向けて外販するビジネスはいま始まったことではない。

 第二が、「既存製品のグリーン化」だ。現在世界で取引きされる製品は、急速にグリーン化が進められている。低公害自動車や省エネ家電製品はあたりまえ、という昨今である。すなわち従来製品の省エネ・省資源化、リサイクル素材の採用、有害物質の使用抑制など環境に配慮した製品づくりだ。これにより、環境に対する負荷はより低減できる。

 第三が、「コア技術(事業)の環境技術(事業)」への応用」だ。これは、中小事業者によくみられるケースであるが、自社に蓄積されたコアすなわち要素技術を環境技術へ応用していくスタンスである。その結果、例えばリサイクル装置を作る、といったことだ。半導体の主役であったSi(シリコン)で太陽電池を作ったケースは、このビッグな典型例としてあげられよう。

 そして第四が「M&A(Mergers and Acquisitions)、特許買収」だ。これはある企業が、環境技術が得意な別企業を買収するようなケースで、買収に伴い、関連特許の買収もビジネス参入上、強力な武器になってくる。最近では、省エネ家電等のメーカーであるパナソニックが三洋電機を買収した典型例があげられる。三洋電機はリチウムイオン電池など二次電池のメーカーとして知られる。例えば自然まかせで、電力の質が不安定な再生可能エネルギーを蓄電池に貯めて利活用することなどを考えると、大きな需要が期待され有意義なM&Aといえそうだ。

環境ビジネス創出に向けて吹く追い風要因

 環境ビジネス展開上においては、前述したように、関連技術及び製品が豊富かつ多彩で高嶺市況にあり、追い風状態といえる。一方、かつてB to G主流の頃と比べてキーとなる価格など関連情報が広く公開されるようになり、参入をめざす企業には条件がよくなってきた。加えて世界の経済市場ともリンクしてきている。

 国の環境政策もグリーン化に向けて邁進し続けている。21世紀は、環境条約の時代に入ってくるかもしれない。というのも、PM2.5の問題一つをとっても、とても一つの国だけで解決しうる問題ではない。悪化の一途をたどる地球環境は、例えば近隣数カ国が条約を締結して、問題解決に向けて対処していかなければとても解決しうる問題ではないのだ。国際間レベルで地球環境の悪化に対処するには、日本の50年にわたって培われてきた世界に誇る環境技術が強力な武器であり、そしてビジネスチャンスも潜んでいる。

 法的規制も見逃せない。これは、例えば食品廃棄物に関しリサイクル法制化された場合、これまで焼却していた食品廃棄物に対する対策が必要となる。そのためにはリサイクル装置が必要になり、そこに環境ビジネスが育つ芽が出てくる。一つの環境に関する法的規制がかかると、そこには確実に環境ビジネスが育ってくるのである。また、環境ビジネス立上げ時には、逆にこれに伴う規制が現存する。たとえば環境ビジネス参入に際して、ビルをリニューアルしたい場合、電気事業法や建築法が絡んできてこのハードルは意外に高い。そこでハードルを下げて参入しやすくする環境ビジネスは加速するであろう。

 また、企業や自治体、大学など各事業の環境マネジメントシステム、例えばISO14001やエコアクション21などの認証取得による継続的な環境へのダメージ改善を行うためには、さまざまな環境技術ソリューションが必要とされ、やはりビジネスチャンスが生まれやすくなろう。前述、B to B二つのパターンがここに相当する。

 さらに、環境配慮型製品を優先的に購入していくという、グリーン購入がある。例えば某文具メーカーの製品はすでにその大半がグリーン製品を生産しているほどで、やはりここにも環境ビジネス創出の芽は育っていくにちがいない。

 そして、環境配慮型商品への志向が高いグリーンコンシューマーの拡大が及ぼす影響も大きい。商品の購入や利用、廃棄にいたる生活全般に亘る商品の市場における台頭など、環境ビジネス創出の大きな要因となっている。

 このように、環境ビジネス創出のチャンスは追い風的に存在するが、ビジネスエリアはわが国の中だけにとどまらず絶えず世界に向けてビジネスチャンスの目利きを研ぎ澄ませておくことが肝要であろう。そうでないと、ガラケイならぬ“ガラエコ”への懸念が伴うからだ。わが国は、これほど豊富で多彩な環境技術ソリューションを保有しているので、世界への積極的な働きかけを行っても不思議ではない。わが国のこうした技術の海外における認知度はまだまだの部分が多いという。その点を充足させることがわが国の国益にもつながってくるし、世界からの信頼感を得ることにもなってくるはずだ。

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