ソリューション企業総覧 Web版
ササクラ

ササクラ

環境ソリューション企業編

“顧客とともに作り上げる”をポリシーに
「水」と「熱」と「音」の3分野で、環境に貢献


ササクラ

www.sasakura.co.jp/


 

   “顧客とともに作り上げる”。それが、ササクラのポリシーだ。同社は、船舶用の海水淡水化装置や熱交換器の製造会社として1949年に創業。1992年に創業時の「笹倉機械製作所」から「ササクラ」に社名変更した。船舶用造水装置(写真1)や海水淡水化プラント(写真2)をはじめ、蒸発濃縮装置、オゾン発生装置、空冷式熱交換器、水冷媒放射空調システム、騒音防止システムなど「水」と「熱」と「音」の3分野で、環境に貢献する製品を展開。「水を造り、熱を活かし、音を究め、よりよい環境をつくるササクラ」をテーマに、研究開発を推進し、顧客と社会のより良い環境づくりをサポートしてきた。

 「水」と「熱」については、2005年に総合研究所「テクノプラザ」を大阪市西淀川区の本社近隣に設立した。同研究所は、これまで分散していたそれぞれの研究施設を集約・統合するかたちで発足。顧客が持ち込んだ廃液を処理したり、処理水を顧客と一緒に分析したり、複数の顧客と共同テストを行える体制を整備した。また「音」に関しては1987年に、残響室2棟と音響風洞を備えた「音響ラボラトリー」を建設。装置メーカーで、自社内にこれだけ大規模な音響関連の実験設備を持っている企業は珍しい。このような充実した研究開発体制に、「顧客が抱えている課題を、製品や技術の開発段階から一緒に解決していこう」とするササクラの真摯な姿勢がにじみ出ている。

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写真1 ‌12,000台以上の納入実績を誇るチューブラー式フレッシュウォー ターゼネレータ

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写真2‌ 砂漠の‌国で飲み水を サウジアラビア王国海水淡水化公団向(アルジュベールフェーズⅡ)多段フラッシュ型海水淡水化プラント 日産23,500トン×20基

 

海水淡水化技術をベースに

 3R(リデュース・リユース・リサイクル)の観点から注目を集めているのが、同社の蒸発濃縮装置だ。長年培ってきた海水淡水化の技術をベースに開発し、1987年に製造を始めた。同装置は、廃液を真空状態の缶内に上部から散布し、缶内の加熱管表面で蒸発させて減容化するとともに、有価物と蒸留水に分離して回収する仕組みだ。水溶性切削油廃液、TMAH廃液、イオン交換樹脂再生廃液など工場から排出される、あらゆる廃液に対応可能。産業廃棄物の量を減らして産廃処理コストを削減できる上に、廃液から有価物と蒸留水の両方を回収して再利用できる、いわば“一石三鳥”の環境対応装置と言っても過言ではない。ササクラの試算によると、国内の導入事例において、1日10トンの産廃を同社の装置を使って10倍に濃縮処理する場合、年間5,000万円以上のコスト削減を達成することができた工場もあるという。

 大容量の濃縮処理に適したヒートポンプ式の「VVCC濃縮装置」(写真3)をはじめ、高濃度の廃液を処理できるエゼクター駆動型の「RHC濃縮装置」、余剰蒸気や廃熱を有効利用するスチーム型の「STC濃縮装置」をラインアップし、顧客の用途や予算に応じて、製品を供給している。60年超におよぶササクラの歴史の中では、比較的新しい蒸発濃縮装置だが、現在では「全社売上高の30〜40%を占める主力製品に成長した」(水処理事業部)。液晶パネルや半導体の製造工場を中心とした電子業界をはじめ、自動車や機械、食品、化学など幅広い業界に、600台以上の納入実績がある。2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに発生した、東京電力福島第1原子力発電所事故の復旧作業にも、同社の蒸発濃縮装置が貢献した。

 「逆浸透膜をはじめ、ろ過膜では処理しきれない廃液や汚染水も、わが社の蒸発濃縮装置なら対応できる。そのような処理の難しい排水の濃縮がわれわれのターゲット」(同)と技術力に自信をのぞかせる。その自信の裏にあるのは、「テクノプラザ」の存在だ。「ラボテストからスタートし、顧客と一緒に実証してから実機を受注するため、失敗が少ない」(同)と、顧客との共同開発体制に手応えを感じている。

 出荷台数が最も多い「VVCC濃縮装置」は、同社の製品群の中でも環境性能に優れている。蒸発させた蒸気をヒートポンプで圧縮し、加熱源として再利用することで、蒸気のリサイクル率はほぼ100%を達成。蒸気を再利用しない標準型の「STC濃縮装置」と比べると、大幅な省エネ性を実現している。従来のコンプレッサー式と比較しても基本システムがシンプルなため、メンテナンス性が高い。コンプレッサー式の場合は高速回転するため、軸受やインペラーなどの損傷が激しく部品交換の頻度が高い。それに対し、同社のヒートポンプ式は3〜5年に一度メカニカルシールと軸受部分を交換すれば済む程度。また、全電動の場合は蒸気ボイラーが不要となり、さらにメンテナンス性が高まる。

 2012年3月期は、工場排水の水質基準の規制強化や環境意識の高まりに加え、タブレット端末やスマートフォンをはじめとするIT関連業界の設備投資が活発に推移したため、蒸発濃縮装置の売上高は前期比2.7倍の39億円に伸長した。2013年3月期は、IT業界の業績低迷に伴い、IT関連の売上高減少を見込み、食品業界など新市場開拓に注力した。今後の成長が期待されるリチウムイオン二次電池や太陽電池などの電池業界向けは、「いくつか実績が出ており、追加発注も増えつつある」(笹倉社長)。また、2014年3月期は、前期に引き続き、欧州メーカーが強い食品プロセス向けに注目し、ササクラの技術力を武器に、蒸発濃縮装置をグローバルに販売展開する。

 海外市場の開拓にも余念がない。2011年4月には中国・上海に駐在員事務所「笹倉上海代表処」を開設。台湾と中国で蒸発濃縮装置の委託生産も始めた。中国のほか、タイやインドネシア、ベトナムなど東南アジアを開拓し、海水淡水化プラント関連をのぞく同社の海外販売比率を、現在の20〜30%から「(2012年度からスタートした3カ年の)中期経営計画の期間中に40%には持っていきたい」(笹倉社長)考えだ。

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写真3 VVCC濃縮装置で3R(リデュース・リユース・リサイクル)

 

騒音防止技術で生活しやすい環境を整備

 ササクラが展開している製品群で、異質に感じられるのが「消音空調事業」だ(写真4)。1971年に、音響工学や騒音制御について豊富なノウハウと技術力を持つ米IAC社と技術提携し、40年以上にわたって騒音防止システムの設計から製作、販売までを手がけてきた。

 1987年には大阪市西淀川区の本社隣接地に、音響試験設備「音響ラボラトリー」を独自に建設。残響室2棟と音響風洞を有する本格的な研究開発施設で、騒音防止装置の音響・気流特性試験をはじめ、パネルの吸音性能や遮音性能の評価・検証、発生する騒音の音響パワーレベルの計測などが実施できる。自社内で騒音防止装置の音響特性と気流特性を確認できるようになったほか、顧客と共同でテストすることも可能に。ここで得られた信頼性の高いデータをもとに、新しい騒音防止技術や装置の開発にも積極的に取り組んでいる。

 ササクラの騒音防止装置は音響ラボラトリーでの試験データに基づいて設計されているため、顧客からの信頼性は高い。空調・換気をはじめ、プラント施設や地下鉄・地下駐車場、宇宙・航空機、船舶分野など幅広い騒音に対応できるのが強みだ。これまで空調関連の騒音防止装置だけでも、マンションやオフィスビル、ホテル、コンサートホールなど8,000件以上の物件に納入した実績がある。

 2012年3月期は、火力発電所向けの騒音防止装置の受注が増加。かねて受注活動を行ってきた高速道路用騒音防止装置の受注にも成功し、騒音防止装置の売上高は約20%増加した。東日本大震災以降の電力不足対策で需要が伸びている自家発電設備分野や火力発電所向けのほか、ゴミ焼却施設向けでも更新や改修のニーズが増えており、顧客のすそ野は広がりつつある。一方、「設備投資の減退から、受注環境は総じて厳しい」(消音空調事業部)のが実情。2013年3月期は、自家発電設備向けの需要が一段落し、騒音防止装置の売上高は前期比19%減少した。「震災以降の節電対策ニーズを取り込み、非常用発電機やコージェネレーションシステム向け、都市ごみ焼却プラント向けの消音装置で受注を確保していく」(同)方針で、受注高は同20%増の年間15億円を見込む。40年以上にわたって蓄積してきた独自のノイズコントロール技術で、作業者が働きやすく、周辺住民が暮らしやすい環境の構築に貢献していく構えだ。

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写真4 ‌換気しながら、騒音をしっかりとキャッチ 工場建屋の吸・排気騒音対策

 

風の吹き出し口がない新型空調

 東日本大震災以降の節電対策や環境意識の高まりを背景に、ササクラが2005年から展開している「水冷媒放射空調システム」が注目を集めている(図1)。空気を対流させる従来の空調とは異なり、放射パネルで人体の熱を吸収し、体感温度を下げる仕組みだ。24時間稼働する場合のランニングコストと二酸化炭素(CO2)排出量を従来に比べて半減できるため、これまでの空調の常識を覆す可能性を秘める。ササクラでは同システムの推進を、2012年度から始まった3カ年の中期経営計画の重点施策の一つに上げており、2012年8月に完成した清水建設の京橋新本社(東京都中央区)向けに3万枚の放射パネルを供給した。今回の実績を武器に同システムの優位性を訴求し、病院やオフィスビルを中心に積極提案。早期の普及・拡大につなげる考えだ。

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図1 放射空調で省エネルギー快適冷暖房! 水冷媒放射空調システム図

 

 「放射空調」は天井に設置した放射パネルの裏側に冷媒を流すパイプを配置し、パネルと人体の間で直接熱交換する仕組み。ササクラが開発したシステムは、冷媒にノンフロンの「水」を採用している。冷房で20℃、暖房で26℃の「水」をパイプに供給し、流量を調節することによってパネル表面の温度を23℃に維持。これにより、部屋の中にいる人の熱を効率よく吸収し、「真夏、室温28℃の設定でも快適に過ごせる」(消音空調事業部)と胸を張る。

 ササクラは海水淡水化のベースとなる真空蒸発技術を、空調システムの中核となる冷凍機に活用。開発したノンフロン水冷媒ルーツ冷凍機は、フロンを冷媒とする一般的な空冷式チラーに比べ、熱源としての効率が高いのが特徴だ。また、同システムは空気を吹き出さないため、風によって身体が冷えすぎたり、不快になったり、騒音が気になったりということがない。フロンや代替フロンが不要な点からも、究極の環境対応型空調と言えるだろう。

 課題は導入コストだ。これまでは同社独自の水冷媒ルーツ冷凍機と放射パネルをセットで提案してきたが、「コスト競争力を向上する」(同)ため、一般的な空冷式チラーも選択できるようにした。構成や部材の見直しなどでコスト低減を急ぐとともに、病院を中心にシステムを提案し、受注増につなげる。人体への影響が少なく、環境にやさしい空調として、まずは病院を開拓する。中期経営計画が終了する2014年度までには年間3億円の事業に育てる考えだ。

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