ソリューション企業総覧 Web版
島津製作所

島津製作所

環境ソリューション企業編

総合分析機器メーカーの基盤技術に加えて
新たなフィールドで積極的に事業を展開


島津製作所

www.shimadzu.co.jp


 

 島津製作所では社是に「科学技術で社会に貢献する」ことを謳い、経営理念に「『人と地球の健康』への願いを実現する」を掲げている。そして、こうした社是、経営理念を具体化するために持続的な環境負荷の低減と社会の環境改善への積極的貢献を目指し、先進的な機器を開発し続けている。そして今、こうした基盤技術に加えて新たなフィールドでの事業展開を積極的に開始している。

廃液を減容化し廃棄物量を削減する減圧蒸留システム

 BODやCOD、浮遊物質量などの数値が著しく高い廃液は自社内での処理は難しく、高額の費用を支払って外部の処理業者に委託せざるを得ない。グループ会社の島津システムソリューションズでは、水処理の基礎技術に減圧蒸留技術を組み合わせた“廃液濃縮システム”による廃液の削減を提案している(写真1)。

 本システムの基本原理は、「蒸留」によって廃液から水分だけを抜き出し減容させるシンプルな方式である。廃液原水はpH調整剤によってpH5以上に調整する。その後、廃液を減圧蒸留装置に送り込む。減圧することによって沸点が下がり効率よく蒸留が行われる。蒸発した水分はコンデンサーで冷却され、回収水となる。例えば、原水のCOD31,000 mg/ℓ、BOD22,000mg/ℓのメッキ廃液(無電解ニッケル)の場合、回収水はそれぞれCOD10mg/ℓ、BOD17mg/ℓとなり、下水道放流、河川放流なども可能となる。回収水の2次処理が必要な場合には、同社には水処理設備に関する技術が蓄積されていることからローコストで目的にあった2次処理を提案することができる。

 本システムの大きな特色は蒸留釜に攪拌機能が付いていることだ。こうした蒸留に際しては、固形物が発生し詰まりを引き起こすケースがよくあるが、攪拌機能によって釜に付く固形物をはがして、詰まりを防ぎ、限界まで蒸留することができる。そのため、最大で80%まで濃縮することができ、発生する産廃廃液を大幅に削減することができる。

 産廃発生量の削減は、大きなメリットをもたらす。その第1は、産廃処理費の削減というコストメリットである。そのため、多くの導入事例では3年以内の減価償却が可能である。第2は、環境経営としての評価向上である。廃棄物発生量の削減は、ISO14001の取得や維持に貢献するとともに、対外的にも環境経営を実行しているとの評価に結び着く。

 同社では、化学工場をはじめ金属加工、機械加工の工場への導入を強く勧めている。導入に当たっては、まず、処理対象廃液情報や現在の産廃量、産廃費、排出状況を把握し、経済性プランを提示する。コストメリットがあれば、次に廃液サンプルで技術的に可能か実証試験を行う。その後、2次処理の必要性や顧客の要望を元に最終プランを提示する。 システムは処理能力20〜25L/hから400〜500L/hまで5システムを揃えている。20〜25L/hの小型システムは同社の特色の一つで、ボイラー式のほか電気ヒーター式もある。

 

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写真1 減圧蒸留システム

 

薬品管理を簡単・正確にできるシステム「CRIS」

 ここ数年、毒劇物を巡る事件や事故が頻発し、薬品類の適切な管理が強く求められている。大学や研究機関では使用する試薬も多く、これらを効率的に管理するシステムの必要性が高まってきている。こうした声に対応しグループ会社の島津エス・ディーと京都大学で、薬品管理システム「CRIS(Chemical Registra­tion Information System)」を完成させた(図1)。

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図1 薬品登録画面(入庫)

 

 このシステムの基本操作は、次の通り。
 入庫の段階では、薬品ビンのバーコードをバーコードリーダーで読み込み、保管場所、開封・未開封、仕入先、他部署への提供などの情報を入れて管理用バーコードを発行し薬品ビンに貼り付ける。そして、出庫の段階では管理用バーコードを読み取り使用目的や使用登録、廃棄登録、使用量登録を行う。

 これらの基本操作を行い、情報が薬品管理サーバに集約されることによって様々な機能が提供される。
 薬品ビンに貼付されたバーコードを読み込むことで、GHSマークや構造式、MSDSが参照できる。また、CASNo.による横断的な検索も可能である。本システムには30社以上のメーカーの薬品データが蓄積できる。

 また、条件や出力項目を選択するだけで、簡単に検索、集計ができる。検索では使用履歴や在庫一覧などがあげられる。在庫量はグラフ表示されるので、在庫の減り具合が一目で分かり、また、グラフをクリックすると使用履歴が表示される。集計では消防法や労働安全衛生法で要求される集計を自動的に行うことができる。
 さらに、発注処理にも対応することができる。まず、発注する薬品を検索し、選択する。そして、在庫状況の確認や契約額を入力し発注を確定して発注票を発行する。

 このように「CRIS」は、薬品を「いつ」「誰が」「どれだけ」「何に」使用したかを簡単に、正確に履歴として記録できるユースフルなシステムである。また、前述の2法をはじめ、PRTR法、高圧ガス保安法、毒劇物取締法などにも対応でき、化学物質を扱う部署の報告書や管理業務の効率化に寄与する。
 また、年間メンテナンス契約を結ぶと更なるサービスが付加される。その代表例が「薬品データベースの更新」である。メーカーでは新しい試薬を出すので薬品データを1年〜2年毎に更新する。メンテナンスでは、この更新に合わせてシステムの薬品データを更新するので、ユーザーは常に最新の情報を活用できる。また、法規の対応、新機能などを盛り込んだ新バージョンはより導入メリットの高いシステムへと進化することができる。

 「CRIS」は2002年に京都大学で導入されたことを契機に現在まで25以上の大学、25の企業・研究機関に導入されている。

作業環境の有機溶剤ガスを浄化する『VOC処理装置』

 揮発性有機化合物(VOC)は、塗装体・印刷物・接着剤やドライクリーニングに至るまで、私達の生活に必要な製品・サービスに欠かせない物質となっている。VOCという呼称は聞き慣れないかもしれないが、有機溶剤、あるいは溶剤と置き換えれば、その存在の身近さに気付かれる方も多いかもしれない。『大気中に気体で存在する有機化合物のうち沸点が50℃〜260℃の物質』として定義されるVOCは、その揮発性の高さから、容易にガス化してしまう特性がある。高濃度のVOCガス、あるいは有機溶剤ガスは、使用者の健康被害や大気汚染を招くとされており、昨今、その削減が切望されている。

 上記の化学物質を使用する事業所は、その含有量の少ない原材料への切替えや、使用量を減らす生産手法の開発等、近年、多角的な削減対策に取組む事例が定着しつつある。生産工程上発生するVOCガスや有機溶剤ガスを適切に処理・浄化する装置の設置も一般的な対策の一つである。グループ会社の島津システムソリューションズは、独自に光触媒応用素材を開発、作業環境中で発生する汚染ガスを浄化する装置(写真2)に搭載し、VOCや有機溶剤ガスの削減を提案している。現在、印刷会社に於ける洗浄溶剤ガス処理や、化学プラントでの小規模ガス処理などを中心とした案件対応、装置導入を進めている。

 本製品の特徴は、フィルター部分に独自素材である酸化チタン―ゼオライト複合体を配している点にある。この素材を用いることで、VOC吸着と紫外線照射下でのVOC分解をオンサイトで行う事を可能とした。また、本装置は、屋内での使用を想定し、燃焼式装置に見られる高温燃焼部位を必要としないことも特徴である。

 装置の使用方法にも因るが、400ppmC〜1000ppmC程度のガスを処理可能である。一見、低い濃度域と捉えられがちだが、屋内の作業空間においては有機溶剤中毒のリスク軽減や悪臭低減など、メリットは多い。同社は、本装置の導入検討に際し、試験機を用いた現地確認試験の実施を推奨している。この試験結果に基づき、同製品が導入目的を満たすかどうかを確認するだけでなく、装置導入後に必要と見込まれる条件確認や附帯設備の検討など、実運用面を想定した提案を行っている。

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写真2 VOC処理装置NI005 外観

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