ソリューション企業総覧 Web版
旭化成ホームズ

旭化成ホームズ

環境ソリューション企業編

創エネでエネルギーをシェアしながら、
光熱費ゼロと年間CO2排出量ネットゼロを実現する
二世帯住宅「&NICO」


旭化成ホームズ

www.asahi-kasei.co.jp/hebel/


 

 我が国に二世帯同居という住まい方を定着させてきた旭化成ホームズは、家族間の繋がりや絆を深めながら、住宅内での消費エネルギーを減らす商品開発と展開を積極化している。その代表が昨年4月、事業開始40周年を記念して発売した二世帯住宅「へーベルハウス &NICO(アンド ニコ)」である(図1、2)。創エネによって発生させた熱と電気を二世帯でシェアしあいながら活用し、光熱費ゼロと年間のCO2排出量ネットゼロを実現できる、一戸建て住宅では業界初となる独自の「新エネルギーシェアシステム」を搭載した。

 全国地球温暖化防止活動推進センターによると、2010年に家庭部門から排出されたCO2は全体(11億9200万トン)の約14%を占めている。しかも、産業部門などからの排出量が1990年比で減少している中で、家庭部門の排出量は年々増加し、家庭での節電や省エネが急がれている。

 「へーベルハウス &NICO」は、お財布に優しいだけでなく、地球環境保全に向けた“切り札”として注目される商品のひとつといえる。加えて旭化成ホームズでは、静岡県富士市の総合技術研究所で新しい省エネ技術などの早期実現に向けた基礎研究を行っており、近い将来に実用化することを目指している。

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図1 &NICOの外観

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図2 &NICOの外観

 

二世帯同居で消費エネルギーを2割削減

 「へーベルハウス &NICO」は、独自の空間提案と新エネルギーシェアシステムの採用、新しい建物外観の提案―の3つが特徴。

 このうち空間提案では、①二世帯がお互いを尊重しながら交流を深められる「フラワーリビング」、②ダイニングの一角に設置された母親の「書斎コーナー」、③二世帯の共有本棚「家族図書館」、④カウンターを囲んで大勢で楽しみながら調理のできる「ペニュンシュラキッチン」、⑤光と風を取り込める半屋外空間「そらのま」―などを取り入れ、二世帯がそれぞれに快適にすごすと同時に、世帯を超えた交流を深める仕掛けづくりが採用されている(図3)。

 採用された「新エネルギーシェアシステム」は、二世帯住宅向けに大阪ガス(株)、東京ガス(株)との3社で共同開発で実現したシステム。旭化成ホームズの「くらしノベーション研究所」の調査によると、家族4人世帯のエネルギー消費量を1.0とすると、家族2人世帯の消費量は約0.9となる。それぞれの世帯が別々の家で暮らしている場合の消費量は、単純に合計して1.9となる。

一方、この二世帯の6人が同居して独立二世帯タイプ(すべての居住空間を分け、各世帯が独立して暮らす二世帯住宅)で暮らすと、2家族の「生活の場」が重なることから、エネルギー消費量は約1.5に削減されると試算されている。言い換えると、親世帯と子世帯が単世帯で別々に暮らす場合と比べ、生活エネルギー消費量は約2割少なくなる。

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図3 &NICOの2階平面図(上)・1階平面図(下)

 

太陽光と燃料電池、蓄電池、高効率給湯器をフル活用

 共同開発した新エネルギーシェアシステムは、家庭用燃料電池「エネファーム」で創った電気と熱に、太陽光発電システム(7.49kWh)による電気を加え、さらに省エネ型高効率給湯器「エコジョーズ」を介して、二世帯住宅に同居する2つの世帯間で融通することによって、年間の光熱費ゼロと年間のCO2排出量ネットゼロを実現するもの。

 各世帯のエネルギー需要に対して、エネファームが運転して創った電気と熱を効率的に2つの世帯に供給する。太陽光システムによって発電された電気も使われ、余剰分は電力会社に売電する。熱の融通については、1世帯目にはエネファームから直接お湯を供給して、2世帯目はエネファームからのお湯をエコジョーズを通して給湯余熱方式で供給する。このため、湯切れの心配もなく、2つの世帯の熱需要に対して十分なお湯を供給することができることになる。

 二世帯住宅の形態によってエネルギー消費量はさらに削減される。独立二世帯タイプでは約1.5に削減されるが、共用二世帯タイプ(それぞれの食事空間を独立させ、玄関・浴室などを共有して効率良く使う二世帯住宅)は約1.4に削減される。

 また、融合二世帯タイプ(食事空間を共用しながら、サブキッチンなどの世帯別空間を設けた二世帯住宅)では約1.3に削減できるなど、家族の「生活の場」が重なる暮らし方になるほど、エネルギー消費量が大きく削減されることになる。この融合二世帯タイプの生活エネルギー消費量は、親世帯と子世帯が別々に暮らす場合と比べ約3割も少なくなることが分かった。

 二世帯住宅に搭載した「新エネルギーシェアシステム」によって、1+1は2ではなく1.5にも1.3にも削減される。二世帯住宅の普及は、家庭部門からのCO2排出量を大きく減らせる可能性を持っていることになる。

電気自動車と電気を融通しあい、万一の場合も通常の生活を

 旭化成ホームズでは、電気自動車(EV)と住宅の間で電気エネルギーを融通するV2H(ビークル・トゥ・ホーム)と、家庭内のエネルギー管理の全般を行うHEMS機器を供給する住宅に導入している(図4)。既に導入している太陽光発電システムと燃料電池、定置型リチウムイオン蓄電池と合わせ、これで5つのエネルギー対応アイテムがラインアップされたことになる。

 導入したV2Hは、料金の安い深夜電力でEVに充電しておき、日中は電力会社からの電気を使用しないでEVからの電力を住まいに戻して電力料金を大幅に削減できる。電力のピークカットに対応できるだけでなく、停電など災害によって電力会社からの電力が途絶えた場合でも、EVの電力によって約2日間は通常の生活が送れ、CO2排出量の削減などさまざまな面で効果が期待されている。

 HEMS機器も、これまで搭載していた機能に加え太陽光発電や定置型蓄電池、燃料電池の状況や家庭内の電力消費状況を「見える化」し、その上で今後の通信規格や機能の拡張にも対応できる新たな機器も導入した。表示方法もパソコンのほかブラウザ対応テレビ、タブレットPC、スマートフォンなどによって見ることができ、外出時でも簡単に確認することを可能とした。

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図4 V2H搭載のヘーベルハウス

 

さまざまな新技術開発や機器検証を実証する「HH2015」

 JR東海道新幹線の新富士駅から車で約10分。国道1号線に沿って広がる旭化成富士支社内の一角に、旭化成ホームズ住宅総合技術研究所がある。ここが新エネルギーシェアシステムなどの基礎研究を行った同社の開発拠点である。 住宅総合技術研究所の敷地内には、3階建ての実証棟「HH2015」が建っており、近未来に搭載されるさまざまな技術や機器・サービスなどが検証されている。この実証棟の特徴は、旭化成ホームズだけでなく旭化成グループ各社の組織を横断する形で研究・開発・実証が行われていること。今年4月にリニューアルされたばかりで、現在、①エクステリアガーデン②在宅医療③緑育④スマートシングル⑤新技術展示―の5つのテーマゾーンに分け、さまざまなアイテムを搭載した。

 エクステリアガーデンゾーンでは、住宅メーカー6社による雨水利用システムや蒸散ルーバー、ソーラーカーポートといった地球環境に優しいエクステリアが検証されている。在宅医療ゾーンには旭化成グループの技術や知見を生かし、自宅で快適な透析ができる家造りや在宅酸素療法、着衣一体型心音センサーなどが、緑育ゾーンでは土を使わずにハーブや野菜を手軽に育てられるLEDライト付き水耕栽培装置などが展示されている。

 また、スマートシングルゾーンでは洗面化粧台の鏡に健康管理や生活情報の収集ができる「ミラーモニター」、電波センシング技術を活用した「おうち見張りシステム」など、単身女性が快適・便利・安全に暮らせる技術提案が行われている。 新技術展示ゾーンではベランダや屋上を簡単に緑化できる「システムプランター」、建築現場への入退出を遠隔操作・管理できるITドア、急速充放電の可能な蓄電デバイスといった機器類を検証。さらに実証棟内の階段には歩行時に床にかかる人体の圧力を電力に変換する階段床発電が設置され、防汚コート技術をベースに開発したコーティング窓、小型風力発電機、ベランダの擁壁にもなるシースルー型の太陽光集光板なども実証されている。

 基礎研究や搭載される機器の技術・機器・サービスといった検証が行われている実証棟「HH2015」から、地球環境保全に貢献する新技術や機器がぞくぞくと生まれてくることはそう遠い先ではないようだ。

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