ソリューション企業総覧 Web版
東芝

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環境ソリューション企業編

2020年モジュール変換効率目標20%を達成
〜世界最高レベルの発電力の住宅用太陽光発電システム〜


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 住宅用太陽光発電システムで、パナソニックやシャープ、京セラなどの大手を向こうに回し存在感を発揮する東芝。なぜか。まずは世界最高レベルの発電力を誇る太陽電池モジュールの存在がある。米国サンパワー社の単結晶太陽電池セルを採用し、最大250ワットの出力を実現した。太陽光発電にとって「発電力」がいかに大切か説明しよう。一般的な170ワット程度のモジュールと比較すると、同じ面積の屋根に東芝製を載せた場合、約1.5倍も多く発電量を得られる計算になる。家庭にとっては非常に大きなメリットだ。例えば、東芝の250ワットモジュールを設置すると、一般的なモジュールを設置した場合とくらべて、10年間で約2万キロワット時も多く発電が可能で、電力会社への売電量にも大きなひらきが生まれるということだ。

 東芝はもともと太陽電池(モジュール)を生産していない。太陽光発電の発展期にはモジュールを自社で持つことは有利に働いた。しかしある程度市場が成熟してくると、技術の差別化が難しくなり誰でも参入しやすくなる。ここ最近は中国企業などが太陽電池に相次ぎ参入、供給過剰で価格が急激に下がり、大手の太陽電池メーカーでも倒産するケースが相次いでいる。汎用化した半導体や薄型テレビなどと同じ構図だ。東芝は液晶テレビ事業でも自社で液晶パネルなどの生産をしていないが、基幹部品を調達し独自の画像処理技術を組み合わせシェアを拡大してきた。システムインテグレター(SI)としての能力、実績はテレビなどのデジタル機器、火力・水力などの社会インフラ、そして太陽光発電システムでもその片りんを見せつけている。

世界No.1のモジュール変換効率 20.1%

 SIはその都度、最高性能の太陽電池を調達できる点も強みだ。東芝は太陽光発電事業に参入した当初からサンパワーと強固な協力関係を築いている。サンパワーの太陽電池は「バックコンタクト方式」と呼ばれる先端技術。一般的には表面にある電極をすべて裏面に設けて、太陽の光を遮る障害物をなくし、受光部の面積を最大化している。250ワットのモジュールは、反射防止膜に加えて表面の反射をこれまで以上に軽減させる反射低減コート付き強化ガラスを採用し、変換効率で業界最高の20.1%(通常の単結晶は約13?16%)を達成した。同時に見た目も美しい。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「太陽光発電ロードマップ(PV2030+)」(2009年6月時点)で定める2020年の実用モジュール変換効率の技術達成目標(20%)をすでにクリアしてしいる。「7年先取り」という言葉がキャッチフレーズになるほど。

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写真1 SPR-250NE-WHT-J

 

屋根が発電する建材モジュールを開発

 また屋根建材型を商品化できたのも、東芝の技術力とSI力の基盤があるからだ。一般住宅に設置する太陽光パネルの重量は多くの場合屋根置き型といわれ、瓦やスレートに架台を施工し、太陽光モジュールを設置するが、屋根建材型は、発電する屋根建材として「住宅の一部」となっている。910×1009ミリメートルで125ワットを出力する東芝のモジュールは、ミサワホームの太陽光発電システム付き戸建住宅「ソーラーマックスシリーズ」に採用された。延べ床面積が30坪台の家なら、太陽光発電システムの出力を10キロワット以上の発電システムとなる。20年の固定価格買い取り制度を利用する場合、10キロワット以上の出力が必要。太陽光発電普及拡大センターの調査によると、全国新築住宅の平均値で4.21キロワット。10キロワット以上を設置しようとすると初期投資が増えるのは当然だが、そもそも設置する屋根の面積が足りないという問題に直面する。ミサワホームの住宅と東芝の発電技術はそれを解決するソリューションだ。設計プランにもよるが、同じ新築設計の一戸建て住宅に比べて300万円台の追加費用で建築できるという。例えば、名古屋市の場合、全量買い取りで月平均約3万円の売電収入で、20年間では約750万円という試算になる。

 現在、東芝の住宅用太陽光発電システムのうち、既築が約9割を占める。業界平均は既築が約75%、新築が25%という数字からも、東芝は新築での市場開拓余地は大きいとみている。既築の顧客は太陽光発電システムを買おうと決めていることが多く、営業マンが性能の良さをきっちり説明すればかなりの確率で売れる。しかし新築の場合、営業マンは家を売ることが使命で、太陽光発電は価格勝負になるケースが多い。日本の新築住宅戸数は年40万件あり、ここ数年、住宅メーカーは競い合うようにスマートハウス(次世代住宅)を投入、太陽光発電はその目玉になっている。引き続き住宅メーカーを引きつける商品の開発を目指していく方針だ。

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図 太陽電池モジュールの変換効率の技術達成目標

 

販売店との信頼関係が好循環を生む

 「性能が良ければ必ず売れる」ー。日本企業が陥りがちな発想だが、デジタル家電で世界を席巻する韓国サムスン電子などをみても、マーケティング力、販売力などいかに『売る力』を身につけるかが事業を成功させるカギになる。東芝の太陽光発電システム事業の強みは、高性能製品と同時に、販売店との間に築いた信頼関係も見逃すわけにはいかない。現在、東芝の販売店は他社に比べて2ケタ、1ケタ少ない。太陽光発電システムは、ほおって置いて勝手に売れる商材ではなく、日本独特の商習慣も存在する。そのため取扱店数と販売量は必ずしも一致しないのが面白いところ。東芝の事業責任者はまず、販売店の不満を直接聞いて回って、本音を伺い、在庫確保や、販売店が、お客様に売りやすいカタログ販促類等を充実させたという。

 特に、製品の品不足を絶対に起こさないこと。販売店は売るものがないと、キャッシュフロー(現金)が枯渇したら窮地に陥る。特に最近は産業用は買い取り制度によりバブル状態。太陽電池をはじめとする部材を住宅用ではなく、供給責任の発生する産業用に回すケースも増えている。太陽光発電システムは太陽電池、パワーコンディショナー、ケーブルなど数多くの部材をシステム化しているため、1つが欠けても製品に仕上がらない。住宅用の顧客も納期が後れて時間が経過するほど不安になり、最悪キャンセルに至ってしまう。東芝は在庫を確保し、欠品には細心の注意を払っている。

 保証期間も業界最長で、顧客だけでなく販売店にとっても営業がしやすい。無償保証は他社も10年と横並びだが、有償の「パワフル保証」に申し込むと、モジュール出力で20年。システムで15年。モジュールが1枚でも壊れたら同じモジュールと取り換えなければ、システムそのものの形が変わってしまう。単純に言えば、20年保証の場合、20年間同じモジュールを供給する義務があり、太陽電池の工場を保有し続けなければいけない。その点、東芝は太陽電池はサンパワーと長期の供給契約を結び外部調達しているため、事業の固定費が軽くてすむ。販売量が増えれば収益が上がるビジネスモデルで、稼いだ資金を新たな開発に回すという好循環が生まれている。現在、国内住宅用のシェアは後発ながら10%程度にまで上昇、2015年度には15%以上を目指しており、十分に狙える目標だろう。ただしシェア拡大には、比較的低価格の汎用タイプにも力を入れる必要がある。現在の販売は8割が最高効率の高機能モデル。20年以上使うため、発電力の高い高機能モデルを選ぶ顧客も多いが、国内の住宅用太陽光発電システムの価格は下落しており、それに伴い流通体制の低コスト化も迫られている。今後、日本での普及がさらに進めば、当然、コスト優先の市場も軽視できない。中期的に、高機能と汎用タイプを半々程度にする意向も持っている。

住宅からスマートコミュニティーへ

 東芝は今年度の経営方針説明会で、クリーンエネルギー事業で2015年度に2000億円の売上高を目指す計画を打ち出した。その中で太陽光発電は中核事業になる。そしてSIの本領をさらに深化させていく領域が、スマートグリッド(次世代電力網)やスマートコミュニティー(次世代環境都市)。自社では太陽光のほかに蓄電池「SCiB」搭載の「エネグーン」、省エネ家電、スマートメーター(次世代電力計)、家庭内の電力を管理する「HEMS」の「フェミニティ」などの製品を持つ。今後は太陽光発電単体のビジネスだけではなく、太陽光発電を起点にし、エネルギーマネジメントを提案する企業としても存在感を発揮するだろう。

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