ソリューション企業総覧 Web版
トップ

トップ

環境ソリューション企業編

廃プラを油に変えるリサイクル技術


トップ

www2.tky.3web.ne.jp/~topinc/


 

 (株)トップは廃タイヤや廃プラスチックなどから燃料油を抽出する油化装置の事業に力を入れている。毎日5トンの廃棄物を処理できる電熱式熱分解油化装置を販売している。樹脂を500℃程度に熱しガス化させ、その後冷やすことで液体の油を回収する仕組みだ。投入した廃棄物の重量の80%の油を回収できる。現在、油化装置は同社の売り上げのおよそ半分を占めている。油化装置のメーン顧客は廃棄物処理業者で、アイルランドへの納入を皮切りに岩手、新潟、茨城に納入。2011年の東日本大震災で被害を受けた宮城県釜石市に2012年に納入している。黒岩昭雄社長は「放置されている廃棄物を処理し資源を有効利用することで震災復興につなげたい」としている。

廃プラスチックなどの廃棄物を油として回収

 同社は産業用電熱応用機器メーカー。マイナス170℃から1700℃までの広範囲で温度を調節できる電気炉の製造で23年の歴史を持つ。金属溶解用の電気炉や乾燥機などを製造しており、最近ではこれらの技術を廃プラスチックなどの廃棄物の油化技術に転用するなど環境分野への取り組みを強化している。

 廃棄物の油化事業を始めたきっかけは大手企業の海外シフトだ。同社は大手企業の工場設備に使う装置の製造や修理を行っていたが、大手企業が海外へ生産拠点を移すことで国内での設備投資が減少。黒岩社長は「今後は既存の事業を残しつつ、油化事業に力を入れる」と決意。2008年から油化や水処理などの環境に関する装置の開発に力を注ぎ始めた。

 油化装置の研究は1998年にブームが到来。約70社が油化装置の製造に参入し、30社以上の導入先があった。だが技術的な問題に加え、石油価格が安価だったことから、利益が出にくく事業の撤退が相次いだ。だが近年、石油の値段が上昇し油化装置が再び脚光を浴びるようになってきている。

19_01

写真1 油化装置例

 

 同社の油化装置は10メートル×10メートルの敷地内に収まる大きさ(写真1)。電気炉、冷却部、直径2メートル程度の釜で構成されている。同装置は1回ごとに釜に廃棄物を入れ処理する「バッチ式」。2個の釜を使い、片方の釜に入った廃棄物を電気炉で処理している間、もう一方の釜に廃棄物を入れ準備しておく。片方の釜で油化処理後の残さを回収する間に、あらかじめ廃棄物を入れておいた釜をセットする仕組み。2個の釜を交換しながら使うことで運転効率を上げる仕組みだ。釜を交換する方式なので装置のサイズを小さくできる。さらに釜は密閉構造を保っているため、臭いが外に漏れず下水汚泥の処理にも利用できる。

 さらにバッチ式の油化装置は前処理が不要で、廃棄物を釜に投入するだけで油化できるというメリットがある。廃棄物を連続して投入し処理できる「連続式」の従来装置では、廃プラスチックの表面の汚れを落としたり、小さく砕いたりする前処理が必要で、手間とコストがかかった。同社の油化装置は釜1個の廃棄物を5時間で処理でき、毎日の処理量が5トン程度であれば連続式の油化装置と処理時間はほとんど変わらない。

 同社の装置の特徴は釜を加熱するために電気炉を使うところにある。廃プラスチックの油化には500℃付近まで加熱する必要がある。この釜は家庭用の電気釜を1000倍程度に大きくしたもので、廃棄物を釜に入れスイッチを押せば油化が完了するという手軽さがある。

19_02

図1 油化装置加熱方式の比較

 

 さらに電気炉のメリットは釜全体を均一に熱せられることだ(図1)。増井哲夫営業技術部長は「電気炉は運転の操作性が良くさまざまな場面で使える。釜全体を均一に熱することで樹脂から油がきれいに抜け、残さに油が残らない」と電気炉によるメリットを強調する。

 釜を加熱する際にバーナーを使う装置の場合、火炎の近くは高温になり火炎から遠くなるほど温度が下がる。釜の場所により温度のムラが生じると樹脂にかける熱が不均一になり、油を含む残さがヘドロ状になって残る。このヘドロは油を含むため釜にへばりつき釜から取り出す作業が大変だった。

 また電気炉は安全性の問題でも優位性を持つ。バーナー式油化装置は釜の中で発火し火炎の熱で瞬間的に空気が膨張し圧力が高まることで、釜のふたが飛び事故を起こす可能性がある。このような爆発の原因は釜の局部過熱。その点でも同社の油化装置は電気炉で釜を均一に加熱するため事故の心配はない。こうした事故への対策としてバーナーを利用した油化装置では、バーナーで熱風を発生させその熱風で釜全体を加熱するなどの工夫を行っているが効率が悪く設備費が高価になるという。

19_03

図2 油化装置の冷却方式の比較

 

 また廃棄物中の樹脂を熱して作られたガスを冷やし液体の油に戻す際の冷却に使う熱交換器にも工夫が凝らされている。従来の油化装置では直径8ミリメートル程度の細い管の中にガスを通し周りから水で冷やすという方式を採っている(図2)。樹脂のガスの成分の中には粘性が高い物質も含まれており、配管が詰まる事故を起こすことがある。またガスに直接水をかけて冷やすという方式もあるが、この場合冷却水が汚れ排水処理に困るという欠点がある。同社はこれらの欠点を解決するため、直径250ミリメートルもある太い配管の中にガスを入れ、周囲から冷やす方式を採用した。冷却部分が大きくなるが、装置全体の大きさは従来装置とほぼ変わらないという。

カーボンやレアメタルの回収にも貢献

 同社は処理する廃棄物に応じ適切な温度や処理時間を設定するノウハウを持ち、さまざまな材料の油化に取り組んでいる。一般にレジ袋などの単純な樹脂製品であれば500℃付近で油化できる。だが最近ではエンジニアリングプラスチックなどの耐熱性が高い樹脂が開発されており、500℃付近の処理が限度だった従来の油化装置では処理できない。同社の油化装置では800℃まで温度を上げられるため、耐熱性を持つ樹脂の油化にも対応できる。また携帯電話のように電子部品が組み込まれている製品は500℃付近では樹脂と金属部分が分離しない。だが800℃で処理すれば有機成分が蒸発して金属と樹脂が分離しICなどのモールド材がなくなるため内部の銅線を回収できる。電子部品内のレアメタルを回収する方法としても期待される。

 また油化装置の油の回収工程で発生した残さから良質の炭素粉末が得られることがわかった。同社はこれらの炭素を有効利用する方法を探っている。増井営業技術部長は「今後、廃プラスチックや廃タイヤなどから抽出される油だけでなく、炭素やレアメタルなどを再利用する取り組みを進めていく。廃棄物をエネルギーに変えるお手伝いをしたい」と未来の技術に大いに意気込んでいる。

 同社は2013年8月から顧客から提供された廃棄物から燃料油や炭化物を取り出すサービスを始めた。実際の油化装置の100分の1サイズの大きさの実験機(写真2)を使い、5キログラム程度の廃棄物を油や炭に変え、油化装置のコスト計算を行う。価格は1検体につき5万円程度で、実験機を伴った出張サービスも受け付けている。実験機で作ったサンプルを顧客に確認してもらうことで、油化装置の良さを知ってもらい販売につなげたい考えだ。

19_04

写真2 実際の油化製品の100分の1サイズの実験機

« »