ソリューション企業総覧 Web版
日東電工

日東電工

環境ソリューション企業編

RO膜技術で水処理問題に挑む


日東電工

www.nitto.co.jp/


 

 世界的に深刻化する水不足、水質汚染。人口増と都市化の進展により水を取り巻く環境は厳しさを増している。そうした水問題の解決に逆浸透(RO)膜を中心として貢献しているのが日東電工。需要が増加している海水淡水化、排水リサイクルでは世界市場でトップクラスのシェアを持ち、さらなる事業拡大に取り組んでいる。水問題の深刻化、広がりに疑問を抱く人はいないだろう。連日のように報道される世界各国での干ばつや水源の枯渇、水質汚染といった水問題の解決は待ったなしの状況にある。日東電工がメンブレン事業部で展開しているRO膜をはじめとする膜関連製品・サービスはこうした問題解決のキーとなる技術の一つだ。

 半透膜で仕切られた容器に濃厚溶液と希薄溶液を入れると、浸透圧の差によって希薄溶液側の溶媒が濃厚溶液側に半透膜を通って移行し、両溶液の濃度が一定になろうとする。この現象を「浸透」と言うが、逆浸透とは濃厚溶液側に浸透圧より大きな圧力を加えることによって、半透膜を通して溶媒を濃厚溶液側から希薄溶液側に移行させることを言う。この逆浸透の原理を膜分離に利用した製品がRO膜である。日東電工のRO膜は芳香族系ポリアミドやポリビニルアルコール、スルホン化ポリエーテルスルホンなどの材料でつくった平膜をスパイラル状に加工。加工したエレメントを耐圧容器に入れたモジュール内に原水を通し、ろ過された透過水と除去する物質が含まれた濃縮水に分離する仕組みだ。

 日東電工はシートやフィルムのトップメーカーとして培った高分子合成・加工技術やコーティング技術、界面重合技術などを複合させることにより1973年に水処理用の膜研究を開始。1986年には世界初の膜専門工場を滋賀県で稼働した。

他社の追随を許さない技術を有し業界をリード

 1987年には事業拡大のうえで転機となる米膜メーカーのハイドロノーティクス社買収を実施。製品・技術の面でも1995年には低圧でも作動するため大幅な省エネルギーが図れる「超低圧RO膜」、1997年には汚染に強い「耐汚染性RO膜」など世界に先駆けた技術開発を行い、業界をリードしてきた。 最新の海水淡水化向けRO膜である「SWC 5?MAX(写真1)」は世界最高の塩除去率99.8%と、高い透水性を両立した製品で、従来のSWC5の塩分除去率を維持しつつ、透過水量を約10%増加させることに成功した。塩の除去と高い透水性という相反する性能を高次元でバランスさせた他社の追随を許さないレベルを実現している。

13_01

写真1 海水淡水化用RO 膜「SWC5-MAX」

 

シンガポールの水処理に貢献

 また水処理分野で世界的に注目されているシンガポールのNEWaterプロジェクトにも、日東電工の技術は欠かせない要素。NEWaterは下水処理施設から排水された処理水を前処理膜、RO膜、紫外線殺菌の3段階の処理で飲料用途に適するレベルまで処理するプロセスだ。シンガポールの公益事業庁(PUB)は同プロジェクトを積極的に推進しており、日東電工のRO膜は2000年の同国ペドックのデモンストレーションプラント稼働を皮切りに、2002年に同じくペドックで造水規模日量3万2,000トン、クランジの第一期分同4万トンのプラントに採用。さらに2006年に同国最大規模のウルパンダンで同16万6,000トンのプラントに採用された。ROエレメントの納入本数も約2万本に達している。すでに日東電工はNEWaterプロジェクトに無くてはならない存在。同社はシンガポールに各種水処理技術の実証試験が可能なR&D設備を稼働するなど、水問題で世界的に先端を走る同国での活動を強化していく方針だ。

 こうした市場シェア、大型かつ重要なプロジェクトでの採用を支えている力の一つが、他を圧倒するグローバルレベルのインフラ。1987年の米ハイドロノーティクス社買収によって得た海外拠点を基盤に、日東電工は膜製造で日本、米国に、モジュール組み立てで中国に合計3拠点の生産工場を運用。同時に販売と技術サポートを行うセールス・テクニカルサービス拠点を日本、欧米や中国、インド、中東など世界20数カ所に展開している。同業他社に比べて充実した拠点網は市場における情報収集で優位にたつポイント。他社の海外拠点の機能が販売に留まっているのに対し、日東電工は拠点を通じて国内外のユーザーに技術サポートを提供することで、高い信頼感を得ている。

米国に本部機能を移し一貫体制で競争力強化

 組織面では2006年からはメンブレン事業部の本部機能を米国に移し、グローバルマネージメントチームとする体制に変更。上から下までの一貫体制にして効率化を図った。膜処理、水関連の世界中の情報をグローバルレベルでマネジメントする体制を整えていることで、トップ企業であるダウ・ケミカルに負けない競争力を獲得している。

 日東電工では今後の事業展開について、RO膜を核にUF、MF、メンブレン・バイオ・リアクター(MBR)などにも事業領域を拡大。水処理分野におけるユーザーへのトータルソリューション提供を目指している。ゼネラル・エレクトリック(GE)やシーメンスがM&Aを積極化して膜からプラント設備までの垂直統合を進める一方、日東電工は自社の強みと外部の強力なパートナーとのシナジーを目指す方針。

他社との連携

 2011年にはシンガポールの中空糸膜の製造販売会社メムスター社と、委託生産および製品供給における業務提携契約を締結。これまで、RO膜を中心に水処理膜事業を展開してきたが、シンガポールに本部・開発拠点、中国に生産拠点を置くメムスター社と提携し、中空糸膜のラインナップを強化するとともに技術の融合を図り、中国をはじめグローバルに排水処理や工業用途に向けた水処理膜事業の拡大を図っている。

 

 

green_s

拡大続けるメンブレン事業

世界初の浸透膜発電でクリーンな再生可能エネルギーを創出 ノルウェー「スタットクラフト社」と浸透膜発電の共同技術開発契約を締結

 ノルウェー国営の大手電力会社スタットクラフト社と、浸透膜発電のパイロット機を2015 年に稼働させることを目指し、新規浸透膜発電の共同技術開発を締結。 再生可能エネルギーの分野で世界をリードするスタットクラフト社と、膜処理技術で世界トップレベルの技術を有する日東電工グループの提携により、天候に左右されることなく、クリーンで環境負荷の少ない次世代の再生可能エネルギーを作り出せる浸透膜発電の実用化を目指す。

共同開発の背景

 浸透膜発電とは、濃度差がある溶液を半透膜で仕切った際に生じる浸透現象から得られるエネルギーを利用する新しいタイプの発電方式。本共同技術開発では、海水と淡水の濃度の差を利用し、正浸透膜を通して得られた海水側の圧力でタービンを回転させ発電させる。高効率の発電を行うためには、いかに正浸透膜の透水性を高めるかが重要。現在、脱塩用途に一般的に用いられる逆浸透膜では、透水性が低く浸透膜発電の効率を高める事ができないため、新たに浸透膜発電に必要な高い透水性を有する正浸透膜を開発することとなった。

 浸透膜発電を行うためには、濃度差の大きい水源の安定的な確保が必要となり、ノルウェーをはじめ、海水と河川が交わる河口付近や海に囲まれ大きな河川を有する日本など、世界で30 カ所以上が候補地として期待されている。

浸透膜発電の特長

 ・ 有害物質やCO2 を排出せず、環境負荷が少ない再生可能エネルギー
 ・ 天候、日照時間、昼夜を問わず安定供給することが可能
 ・ 設置面積が小さく、広大な土地を必要としない

スタットクラフト社の概要

 スタットクラフト社は、ノルウェーのオスロに本社を置く国営電力会社で世界20カ国以上で約3,200 人の従業員が活躍している。

水力発電から風力発電、ガス発電、地域暖房などの事業展開を図るとともに、ヨーロッパ域内でのエネルギー交換を実施している。2009 年には世界初の浸透膜発電の実証プラントを稼働させるなど、再生可能エネルギーの分野におけるヨーロッパのリーディングカンパニー。

13_02

正浸透圧発電のイメージ図

« »