ソリューション企業総覧 Web版
東レ

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環境ソリューション企業編

世界の“水環境”の課題解決に貢献する東レの水処理膜技術


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地球温暖化が水不足をさらに加速

 地球温暖化に関する議論が世界中で繰り広げられる中、温暖化の影響の一つとして大規模な水不足、それによる農業への打撃。安全な飲料水確保の難しさが引き起こす感染症増加への対策が急務となっている。今すでに世界で8億人が飲料水すら手に入らない状態であり、今後も極めて深刻な水不足に陥るとの見方もある。そうした中、東レ株式会社(以下、東レ)の水処理膜技術が、“水環境”の課題解決への一助として脚光を浴びている。

すべての種類の水処理膜を自社開発し製品化する総合膜メーカー

 東レの水処理膜事業は1968年に研究開発を始めた。80年代の半導体事業の活性化に併せて開発した超純水製造用の逆浸透(RO)膜の供給を皮切りに、RO膜の高性能化にもとづき海水やかん水淡水化のほか、各種工業プロセスで使う水の製造、廃水再利用分野へと対象領域を拡大してきた。同社はイオンなどの水中溶存物質すべてを除去できるRO膜のほか、中・高分子量溶存物質を除去するナノろ過(NF)膜、高分子物質やウイルスを除去する限外ろ過(UF)膜、微粒子や細菌を取り除く精密ろ過(MF)膜など、全4種類の膜を手がける総合膜メーカーとして世界中で事業を展開する。また下廃水を処理する膜分離活性汚泥法(MBR、メンブレン・バイオリアクター)向けに浸漬膜モジュールを開発するなど、膜以外の水処理領域も手がけている。

RO膜の全出荷量が生活水換算で1.2億人分を突破

 海水淡水化プラント向けRO膜の全出荷量は水量換算で日糧720万立方メートル。2,900万人の生活水をまかなう量に相当する。従来からもっとも難易度が高いといわれていた中近東アラビア湾での海水淡水化に成功したほか、アルジェリア(マグタ)で13年に稼働する世界最大の海水淡水化プラント(日量50万立方メートル)にも採用された。またシンガポールのチュアスで13年に稼働するアジア最大の海水淡水化プラント・チュアスⅡ(日量31万8,500立方メートル)で使われるのも東レのRO膜。世界中の大規模海水淡水化プラントで豊富な納入実績を重ねており、世界シェアトップの地位を築いている。

 かん水淡水化プラント向けRO膜でも、米国や中東、東南アジアを中心に豊富な実績を持つ。同膜の出荷量は水量換算で日量1,660万立方メートル。納入実績では最大規模の韓国(牙山、日量12万8,000立方メートル)を筆頭に、サウジアラビア(サルボク&ボワイブ、日量12万立方メートル)や、イラン(ファールス、日量10万立方メートル)などに納めている。また世界で需要が急増する下廃水再利用プラント向けには、耐汚染性に優れた低ファウリングRO膜を市場に投入する。出荷量は水量換算で日量250万立方メートルで、世界シェアでもトップを誇る。具体的には世界最大の膜法下廃水再利用プラントのクウェート(スレビヤ、日量32万立方メートル)や、同第2位の規模を誇るシンガポール(チャンギ、日量22万8,000立方メートル)などに納めている。

 世界中から水処理技術が集まるシンガポールでは、チュアス(海水淡水化プラント)、チャンギ(下水再利用プラント)などの大型プラント向けにRO膜を納めており、同国でのRO膜シェアは約6割にのぼる
 また海水やかん水淡水化、下廃水再利用などの各プラント向けに出荷したRO膜は、水量換算で合計日量3,070万立方メートル。1.2億人分強の生活水に相当し、世界人口の約1.7%をまかなう規にまで拡大した。

 世界的な水不足の深刻化や環境に配慮した水資源確保の要請などから、RO膜の需要は今後も拡大傾向が続く。東レは07年、日本と米国のRO膜とエレメント製造設備を倍増した。またRO膜だけでも年率20%超の成長が見込まれる中国では、同国最大の水処理エンジニアリンク企業の藍星集団と09年に合弁会社を設立。北京市にRO膜の製造・組立を行う生産拠点を開設し、日米を含む東レグループ全体で生産能力を1.5倍に引き上げた。

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写真1  トリニダード・トバゴ(ポイントリサ)海水淡水化プラント(東レRO 膜使用)

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写真2  韓国水資源公社 公州浄水場(東レMF膜モジュール使用)

 

RO膜に続き、MF膜、UF膜、MBR用膜を世界で展開

 中空糸を活用したUF膜やMF膜は、飲料水(上水)製造用途でグローバルに需要が拡大している。東レは大型浄水場向けに高い耐久性や透水性を持つポリフッ化ビニルデン(PVDF)製の大型中空糸膜モジュールを開発し、販売を始めた。国内では最大級の浄水設備、東京都水道局砧浄水場・砧下浄水所(日量8万8,000立方メートル)を始めとする大型案件を受注し、海外では韓国で初の日量1万立方メートル以上規模になったコンジュ浄水場(日量3万立方メートル)に続き、最大級の浄水設備、ソンナム浄水場(日量5万立方メートル)にも採用が決まった。これまでの同膜累計出荷量は水量換算で日量82万3,000立方メートルに達する。今後は北米での浄水処理用途、中東や中国での海水淡水化前処理用途、下水再利用用途への事業展開を進めていく。

 下廃水処理分野では、微生物などを含む活性汚泥と膜を活用した膜分離活性汚泥法(MBR)が世界中で注目を集めている。処理水の水質が高く、設備の設置面積を縮小できることから、設備更新や処理能力の増強などでも需要が拡大している。東レはMBRに適したPVDF製の浸漬型平膜モジュールを開発し、本格的な販売を始めている。同モジュールは独自の製造技術により高い透水性を維持しながら、汚れに強いなど耐久性も両立。欧州でのパイロット実験でも、高い性能を示した。欧州や中国、中東、アジアなどの海外を中心に事業展開を進めており、サウジアラビア(ナジュラン、日量6万立方メートル)やUAE(アル・アイン、日量1万5,000立方メートル)などに納める。これまでの同膜累計出荷量は水量換算で日量54万9,000立方メートルに拡大した。

水処理事業のグローバル展開

 東レは日米欧3拠点体制でグローバル展開を推進してきたが、急増する中国やそのほかのアジア、太平洋地区での需要を取り込むため、09年に製販一体の合弁会社藍星東麗膜科技(北京)有限公司(TBMC)を設立し、営業拠点を集約した。またシンガポールにも販売拠点を構築し、グローバル体制を強化している。米国では米州地域向けにRO膜モジュールの製造や販売、UFやMF、MBR向け膜販売のToray Membrane USA, Inc.(TMUS)社を06年に設立した。

 欧州ではスイスにあるToray Membrane Europe AG (TMEu)社を設立したほか、UAEにも同社の事務所を構え、欧州・中東地域への膜販売を積極展開する。さらに2013年にはToray Membrane Spain S.L.(TMSP)社を設立し、この地域での活動を強化した。

膜売りと水処理システム事業

 東レは世界トップレベルの「膜技術」をコアに、国内外の東レグループ水処理関連会社(国内:水道機工、海外:TMEu社、TMUS社、TBMC社、東麗先端材料研究開発(中国)有限公司(TARC)など)と連携しながら、膜売り事業を中心に水処理システムを含めた事業を推進する。

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図1  東レRO膜を採用している水処理プラントの代表例(2013年3月現在)

 

膜技術の弛まぬ研究開発

 東レは生産関係部署の他に地球環境研究所、各種技術部署を組織する。また分析や評価を行う東レリサーチセンターや関連会社とも連携して研究開発事業を展開する。

 地球環境研究所では有機合成や高分子化学、化学工学、生物工学などの研究者が融合し、新たな水処理膜や微生物処理、先端プロセスなどの研究を進めている。各種高性能な超純水用RO膜や海水淡水化用RO膜、下廃水再利用低ファウリングRO膜、PVDF中空糸MF膜およびUF膜、MBR用PVDF浸漬型平膜などの新製品を開発した。また難分解性成分処理や余剰汚泥減容化、生物汚染抑制、微生物学的水質評価、先端的促進酸化などで微生物やプロセス研究を進め、実績を上げている。同社は膜技術が水処理事業の基盤であると位置づけており、経営トップも「膜の研究を止める時は、水処理事業を辞める時」と断言する。

 メンブレン技術部では水処理膜関連の生産技術や品質改善のほか、研究で生み出した新規膜の商品化(モジュール化)や、上水、下廃水、海水淡水化の水処理プロセス開発などの商品・技術開発を進める。ここには化学や化工、機械、衛生工学、生物系の各技術者を投入し、実用化に直結した技術開発を推進する。

 海外では中国・上海にTARC水処理研究所を設置し、中国の水事情に合わせた水処理技術や製品の研究開発を進める。水処理に関する研究や情報が集積するシンガポールには、水処理の研究開発拠点Toray Singapore Water Research Center(TSWRC)を09年に設立。12年には同国で環境関連の研究や実証実験拠点が集積する「クリーン・テック・パーク」内に移転し、研究体制を強化した。従来の膜技術中心の研究開発から、水処理プロセスの管理など、周辺技術や管理ノウハウへと研究対象を拡充した。また同社愛媛工場内の海水淡水化実験施設、滋賀事業場内の浄水実験施設、三島工場での廃水処理実証設備では、十分な実液原水のある実験設備も確保する。

社外活動を積極化業界の活性化にも貢献

 東レは水処理関連機関とも連携し、水処理膜市場の活性化や同業界の繁栄に向けた社外活動にも取り組む。具体的には世界脱塩協会(IDA)やアジア・太平洋脱塩協会(APDA)、日本脱塩協会(JDA)、米国膜技術協会(AMTA)、国際水協会(IWA)、米国水道協会(AWWA)、(社)日本水道協会(JWWA)、(社)膜分離技術振興協会、日本膜学会、(財)造水促進センター、(財)水道技術研究センター、(社)海外水循環システム協議会(GWRA)、海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)などがある。IDAやAPDA、JDAには同社のメンバーを役員として派遣し、膜・水処理市場の拡大と日本企業のプレゼンス向上に向けた取り組みを推進する。

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