ソリューション企業総覧 Web版
富士通クオリティ・ラボ

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環境ソリューション企業編

環境汚染をみはる計測・分析の最新技術


富士通クオリティ・ラボ

jp.fujitsu.com/fql/

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富士通クオリティ・ラボ 山岸執行役員/木谷執行役員/福島ディレクターに聞く


 

 環境対策における改善提案や支援のためには、大気質はじめ水質、土壌あるいは具体的な塵埃、腐食、悪臭、騒音、振動などを対象に、さまざまな調査や監視、分析などの技術が欠かせない。いまPM2.5(微小粒子状物質)の測定・分析・発生源推定をはじめ腐食・悪臭の調査や対策などの関連技術は着実に進みつつある。ここでは、そうした最近の環境計測や分析そして対策に関わる技術ソリューションの一端をご紹介したい。

品質最重視で挑む環境計測

 いま、富士通クオリティ・ラボ(株)の技術ソリューションが、環境計測ソリューションの分野で注目されている。同社 執行役員 グループビジネス開発室長 木谷晃久氏(写真中央)は「私たちは、富士通の製品開発で培われてきたナレッジをベースにビジネス展開しています。なかでも部品やモジュールの信頼性評価・評価コンサルティングをはじめ材料・デバイスの分析、サプライヤ監査・開発プロセス審査などの受託により、お客様の製品開発・品質管理、故障解析・再発防止の立案支援など商品の品質を高めるお手伝いを行っていますが、最近重要視しているのが環境の品質なのです」と、基本戦略をアピールする。

 また「たとえば自然環境が工場や車などの排気ガスで汚染されていると、その主要成分であるSOXやNOXあるいはPM2.5などを、オンラインによる環境監視やオフラインでのサンプリング捕集による分析、それら関連データを情報センタに送って処理し、住民に対し“見える化”するといったフローが重要となってきます」と木谷氏は環境対策のキーポイントを説明する。

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図1 PM2.5における分析

 

PM2.5の測定

 昨今注目されるのはPM2.5であろう。PM2.5とは、大気中を浮遊する粒子状の物質で、粒径が2.5μm(毛髪の太さの約1/30)以下と極めて小さく肺の奥まで入りやすく、呼吸系や循環系への影響が懸念される粒子だ。同社 執行役員 山岸康男氏(写真左)は「PM2.5は国や自治体などで常時監視されており、その計測はベータ線を照射しその吸収量をもとに行われています。しかしその方法だけですと、砂や煤煙など、種類まではわかりません」と課題を指摘する。

 そこで重要なことが捕集そして分析だ。捕集は、分粒装置により大きい粒子を除去し、粒径が2.5μmの粒子を概ね50%の割合で捕集する。図1を参照されたい。ここでは粒子の発生源まで推定可能になる成分を分析する。まず、大気中から粒子をフィルタにサンプル捕集して秤量する。このときの捕集期間は1回24時間を概ね2週間行う(写真1)。その後、無機イオンや無機元素、炭素などの成分分析を行う。課題はサンプルが微量という点。少ないときは0.1?mg程度であり、捕集するのは容易ではない。「あえていうと、6畳一間の埃を捕集してもPM2.5相当の粒子は米粒(約24?mg)の1/100以下の重さ分しか集められません」と山岸氏はいう。しかも木谷氏は「周囲の環境が測定値に影響するため、温度(21.5±1.5℃)、湿度を厳しく管理しなければなりませんので、専用のクリーンルームを用意しました。また、環境省ではPM2.5向けの秤の精度は1μgを測定できるもの、と定めています。しかし当社の技術は、さらにそれを上回ります」と、その優れた精度を強調する。

 加えて、図1でフィルタ秤量から各成分分析を行う際にも工夫がみられる。木谷氏は「実は、サンプル捕集後フィルタに付着したものを分析するには、従来の手法ではフィルタを複数に分割し複数の手法で分析する必要がありました。ところが、当社技術ではPTFEフィルタを2分離するだけで、1手法で分析可能としています。これにより、微量なサンプルの取り扱いに伴うリスク軽減、精度向上を図っています」と強みを語る。

 分析結果が図1下のグラフだ。山岸氏は「たとえばEC(無機炭素)成分量が多いと石油などの燃焼で排出されたかもしれません。さらにその時の気象状況も加味すると、遠方からの飛来粒子という可能性もあるかもしれません」と発生源の特定に期待をよせる。

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写真1 PM2.5におけるフィルタの活用法

 

腐食性物質の計測

 温泉や火山、ゴミ置場、ヘドロなどからは、硫化水素など腐食性ガスが発生し、悪臭を生み出しやすい。これは人にとって”臭い”ということに加えて、電子機器にとっては大きなトラブルの原因ともなりかねないのである。

 同社マテリアル事業部 プロジェクトディレクター 福島茂氏(写真右)は「硫化水素ガスが電子機器に侵入するとプリント板の配線やコネクタなどの接点が腐食し導通不良などの不具合を起こしやすくなります」という。電子機器には電気的特性がよい銅や銀が多用されているが、反面腐食性ガスの影響を受けやすい。

 「図2はきれいな花が咲いたように見えますが、実は電極の銀が錆びて下部の方から上部にはみだし、そのように見えているだけです。その分、配線が細くなり導通不良を発生します」と、表向きとはかけ離れたリアルな原因を説明する。

 同社は、こうした腐食調査やその対策にも取り組んでいるが、その調査手法の一つが、「エコチェッカ」と呼ばれるものだ。これは、5種類の金属片の腐食から、硫化水素や亜硫酸ガス、塩素など腐食ガスによる金属の腐食性を、ガスの種類や濃度に換算する。実際の測定にはエコチェッカを、対象とする環境に2週間から1カ月程度、条件に応じて暴露させておく。そうすると金属片に錆びが生じ、腐食ガスの種類とその影響度がわかる。具体的には、暴露されたエコチェッカを波長分散型蛍光X線装置などで分析して、あらかじめ作成している検量線からガス濃度値を推定する。

 「図3は、東京都のある河川で悪臭が漂うという住民の訴えにより約1カ月間暴露した例です(平成5年測定)。その結果、悪臭源は川底の汚泥から発する硫化水素であることが判明しました」と、福島氏は実例を説明する。すなわち、図3の地図で示された黒丸個所が高濃度で、ここには上流から排水が流れてきて海側の海水と出会い澱みが生じ、ヘドロが蓄積したということがわかった。そして該当地区では酸素を送り込む浄化装置の設置などで対処した。

 またエコチェッカと並んで「QCM腐食センサー」と呼ばれるものがある。これは、クオーツ時計でおなじみの水晶振動子を用いた微小天秤ともいえるものだ。山岸氏は「水晶振動子は微々たる重量変化で共振周波数が低下します。これを逆手にとって水晶振動子の上に金属膜を形成し、金属に錆びなど腐食生成物ができることによる周波数変化をとらえて腐食量を測定します」とその原理を語る。このとき、0.7?ng/cm2の腐食物吸着が1?Hzの変化に対応するという。エコチェッカとは、目的や期間、コストによって互いに補完しあうものだ。

 ここで紹介した測定・分析・対策技術以外にも、富士通クオリティ・ラボでは環境条件に応じて多彩なソリューションを用意している。こうした環境汚染の分析に関しては、大気汚染防止法や土壌汚染対策法、悪臭防止法、騒音規制法、振動規制法、水質汚濁防止法などに基づいて測定や分析を行っており、労働安全衛生法に基づく作業環境測定などにも対応している。

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図2 腐食がもたらす電子機器のトラブル   図3 河川における悪臭源の調査

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