ソリューション企業総覧 Web版
日本ヒューレット・パッカード

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環境ソリューション企業編

公民学で築く「柏の葉スマートシティ」


 

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日本HP 高見栄造本部長/長田英知シニア・コンサルタントに聞く


 

柏の葉スマートシティ

 世界的に、また国内においても、スマートシティ構築の取組みが活発化している。国内における最近の代表例が、千葉県柏市で着々と進む「柏の葉スマートシティ」だ。これは、三井不動産を中心に、柏市、スマートシティ企画、日本HP等が主導している取組みであり、公民学連携の自律した都市経営と共通プラットフォームの構築により“エネルギー”、“健康長寿”、“新産業創造”という都市が抱える3つの課題を解決しようとしている点で注目を浴びている。

 スマートシティの舞台、柏の葉キャンパスは、都心から25 km離れ、人口40万の中核都市である千葉県柏市の北西部に位置する。いまここで、従来にはない形でスマートシティの構築が進められている。そのキーワードは”公民学連携による自律した都市経営である。

これからのスマートシティは公民学で

 スマートシティ企画(株)の参加企業の一つでもある日本ヒューレット・パッカード(以降日本HP)(株) 次世代・社会システム事業推進本部 シニア・コンサルタント 長田英知氏(写真右)は「柏の葉では、“環境エネルギー・防災問題”(スマートシティ)をはじめ、超高齢化社会に向けた“健康長寿”および日本経済再生を担う“新産業創造”という3つの課題を解決するための取組みを行っています」という。

 この3つの課題を解決するため、柏の葉では、これまでに例を見ない新しい形態で街づくりが行われている。同事業推進本部 シニア・ソリューション・アーキテクトの小野泰司氏は「柏の葉スマートシティは“産官学”連携ではなく“公民学”連携という言葉を使っています。ここで特に重要なのが「民」の考え方です。民とは住民と民間企業の双方を意味しており、民間企業と地域住民が一体となり主体的な街づくりめざしています」という。さらに小野氏は「この主体的な街づくりを支えるものの一つが、共通プラットフォームであると私たちは考えています」と述べる。長田氏は「日本HPは総務省や内閣府の事業予算を活用して柏の葉における共通プラットフォームの設計・構築を進めています」と、柏の葉スマートシティにおける同社の重要な役割を説明する。

共通プラットフォームであらゆるサービスが受けられる

 図1は、柏の葉スマートシティの全体構想モデルである。前述3つの課題のうち、“スマートシティ”の分野では、地域のエネルギーを一元管理して、省エネ・創エネ・蓄エネの推進を行うほか、エネルギーと食の地産地消、低炭素型の新都市交通、災害時のライフライン確保などを行う。HEMS(Home Energy Management System)は既築のマンションで導入済みであり、また車や自転車のマルチシェアリングも進められている。

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図1 柏の葉スマートシティの全体構想モデル

 “新産業創造”の分野では、日本が誇る技術力を活かすためのベンチャー支援組織(TXアントレプレナーパートナーズ)の形成や、国際的なベンチャー育成ネットワークの形成(アジア・アントレプレナーシップ・アワード)を行っている。同事業推進本部 本部長 高見栄造氏(写真左)は「アジア・アントレプレナーシップ・アワードは、アジア地域のベンチャーや大学などを対象としたビジネスモデルのコンテストであり、参加者は自らの新しいビジネスモデルを持ち寄り競い合っています」とグローバルな取組みをアピールする。すでに2回目のコンテストが開催されたそうだ。

 “健康長寿”の課題においては、ICTを活用した健康情報の見える化やトータルヘルスケアステーションの創設により、地域を構成する公民学の連携による疾病予防・介護予防を目指している。

 そして、これら3つの課題領域を横串で管理する機能を果たしているのが共通プラットフォームである。長田氏は「エネルギーや健康、新産業創造における課題を解決するための地域サービスを、自治体、住民、民間企業、大学等に対してスムーズに、一体的に、そして効果的に提供するのが共通プラットフォームです。共通プラットフォームは平成24年度の総務省「ICT街づくり推進事業」の予算を活用して構築されたもので、高い評価をいただいております」という。

共通プラットフォームの構築

 平成24年度の総務省の「ICT街づくり推進事業」は千葉県柏市、三井不動産(株)、イーソリューションズ(株)、エーイーエムシージャパン(株)、(株)国際情報ネット、ストリートメディア(株)、(株)メディアシンク、ユーシーテクノロジ(株)、日本HPの9者で共同提案、採択された事業である。日本HPは同事業の中で共通プラットフォームの設計・開発を担当した。

 ここで共通プラットフォームの役割を具体的に見てみよう。図2は、共通プラットフォーム上で提供されるサービスを住民が利用する場合の、機能と仕組みを示したものだ。共通ID(国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU―T)において2012年6月に成立したITU―T勧告H.642.1(Multimedia information access trig­gered by tag―based identification―Identification scheme)*1)*2)を利用)とシングルサインオン(標準化団体(OASIS)において採択されたSAMLv 2.0(Security Assertion Markup Language v 2.0)*3)を利用)により、利用者は複数の事業者が提供するエネルギーや健康、行政サービスをワンストップでスムーズに利用することができる。

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図2 共通プラットフォームの機能

 長田氏は「共通ログイン画面にIDとパスワードを入力しますと、認証が行われ、柏の葉マイポータルに入ることができます。このポータル画面では利用者が利用している複数事業者のサービスが提供する情報の主要部分を一覧で見ることができます。またワンクリックで、再度IDやパスワードを入力することなく、事業者のサービスを呼び出すことが可能です。たとえば、柏の葉マイポータルには直近のエネルギー使用量がリアルタイムで表示されていますが、より詳細に時系列で確認したいと思ったときは、ワンクリックすることで“eTrias”と呼ばれる外部のエネルギー見える化システムにアクセスでき、情報を瞬時に確認することができます」と、その利便性を説明する。

 もちろん他のサービスを利用したい場合も同様で、健康見える化システム“柏の葉スマートヘルス”にアクセスすれば歩数や消費カロリー、ランキングなど健康関連情報を入手できるし、いま流行のSNSとの連携(図2左下の内容欄⑥や⑨)も容易だ。このように、共通プラットフォームを導入することで、一度のログインで自分が加入している複数のサービスからすべての情報を得ることができるようになるのである。

 また共通プラットフォームはAPIを介して利用することが可能となっており、これにより民間企業や住民は、様々な地域サービスを自分たちで開発することが可能である。小野氏は「共通プラットフォームを利用することで、住民はサービスの受益者となるだけでなく自らサービスを創出する提供者となることが可能になります。このようなサービスの循環により今までの街づくりでは見られなかった新しい交流と発展が可能になると考えています」という。

 高見氏は「地域住民が主体となるサービス循環の仕組みこそが、柏の葉スマートシティの一番の強みであり、また日本HPが大きく共感している部分でもあります。共通プラットフォームは、この仕組みを支援する黒子のような存在としてさらに発展させていきたいと考えています」と、これまでには見られない、スマートシティのあり方に確信と大きな手応えを感じている。

*1)〈 http://www.itu.int/rec/T-REC-H.642.1/en〉

*2) YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所により策定された技術規格ucode をベースとしている〈http://www.ubin.jp/press/pdf/UNL120725-01.pdf〉

*3) https://www.oasis-open.org/standards#sam|v2.0

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