ソリューション企業総覧 Web版
昭和電線ケーブルシステム

昭和電線ケーブルシステム

環境ソリューション企業編

排熱から蘇る電力の開発に取り組む
〜熱電発電技術の魅力〜


昭和電線ケーブルシステム(SWCC)

www.swcc.co.jp/cs/

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昭和電線ケーブルシステム箕輪昌啓グループ長に聞く


 

  日本での全消費エネルギーを石油に換算すれば、4億㎘になるという。だが、このエネルギーのおよそ70%が有効利用されず排熱として捨てられている、というのだ。いかにも、もったいない話ではあるが、実はこの排熱から電気を取り出そうとする熱電発電技術が、関心を呼んでいる。

2006年から開発に着手

 昭和電線ケーブルシステム(以降、昭和電線)(株)では、2006年から再生可能エネルギー技術として、熱から直接、電気を取り出す熱電発電を実現するため、高温域対応における酸化物熱電変換素子の開発に着手、自社の工業炉で長期実証試験を行っている。

 いま全一次エネルギーが、火力・原子力発電所や自動車、焼却場、工場、天然ガス(冷熱)などで使用されると、30%が有用エネルギーとして使われるが、残りのおよそ70%が損失/排熱エネルギーとして捨てられている。実は、ここに熱電変換素子を介在させて電力を取り出そうとする技術が熱電発電だ。

熱電発電のしくみ

 熱電発電に精力的に取り組む昭和電線ケーブルシステム(株) 技術開発センター 新デバイス技術開発グループ グループ長 箕輪昌啓氏は「基本原理は、ゼーベック効果と呼ばれる物理現象に基づいたもので、100年以上も前に発見されています。具体的には、金属系化合物で作られた熱電変換素子の両端に温度差があると、荷電子が高温側から低温側に移動し、この温度差に応じた電力が発生します」と、意外にシンプルなしくみを説明する(図1)。すなわち下の図で、電子が流れるN型半導体とホールが流れるP型半導体を並べて、片側を高温、もう一方を低温にすると、電気が発生するのである。

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図1 熱電発電のしくみ

 

排熱利用技術における熱電発電の優位性

 排熱利用で電気を取り出す方法はいくつかある。たとえば技術も成熟し普及しているものに、熱で蒸気を発生させ駆動するガスタービンがある。また、まだ研究段階だが、熱から直接エネルギーを取り出すスターリングエンジンもある。そうした中でも「熱電変換は、メンテナンス性及びスケーラビリティに優れています」と箕輪氏はいう。

 つまり「ガスタービンは、回転する可動部が介在しかつ摩擦部もあるので定期的なメンテナンスが必要です。また、タービンの回転には大きな力が必要だからある程度大規模な施設での熱が必要ですし、効率確保も大変です。これに対し熱電発電は、可動部はなくメンテナンスフリーの可能性があります。また素子ベースでの発電が可能ですから規模に応じて、少ない個数で小さな電力や、数多く集めて大きな電力も取り出せるなどスケーラビリティに富んでいます」と、説明する。

熱電発電を実現するプロセス

 熱電発電向け材料の候補には、ビスマス・テルル系をはじめシリサイド系、亜鉛・アンチモン系、鉛・テルル系、スクッテルダイト系などがあるが、昭和電線では酸化物系(セラミックス)を採用している。その理由として箕輪氏は「1980年代から永く、当社は高温超電導体の研究に取り組んでいます。その材料が金属酸化物なのです。この技術を他にも利用したいと考えていました。そうした矢先2005年頃、産業技術総合研究所で変換性能のよい金属酸化物が開発され、当社は量産技術を開発すべく同所と共同研究することになりました」と採用の経緯を語る。

 そこで昭和電線では、熱電変換素子の量産化対応として押出成型技術に取り組んだ。というのも、周知のようにセラミックスは堅くてもろい性質なので、極力容易に量産可能とするため押出成型の技術を採用した。図2左の写真が押出成型後に焼結されたもので、1本の断面サイズは約5×5 mmである。これら1本1本をカットして、前述のN型やP型素子にする。その後、モジュール化のプロセスを経て熱電変換モジュールに仕上げる(参照図2右、写真1)。モジュールのサイズは約5×5×0.6 cmである。このモジュールでいえば下側が高温で上側が冷却して低温にする側になる。こうしたセラミックのような酸化物系の特性によって、600〜800℃の高温での熱電発電を可能とした。このモジュール1個で1〜2Wの電力が得られる。

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図2 押出成型で作る熱電変換モジュール

 

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写真1 パッケージングされた熱電発電モジュール

 

熱電発電の実証実験

 図3は、昭和電線の三重事業所で銅を溶解し電線をつくる工程であるが、予熱炉に熱電変換モジュールを設置し800℃以上の排熱を利用して、熱電発電の実証を行っている例である。図左の写真が、取り付けられたモジュールで下部のチューブ2本が、温度差を得るために冷却水を導くもので、これで発電効率が向上する。実験は2009年から取り組んでおり当初は酸化物系のみの材料であったが、さらに出力向上を得るため、最近では低温用のビスマス・テルル系デバイスも合わせたカスケード構造にし、さらにフィンも取り付けて最大出力48Wまで可能としている。

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図3 昭和電線・三重事業所における発電実証試験

 

熱電発電の経済性と今後

 熱電発電の経済性をどう考えればよいのであろうか。モジュール出力あたり単価(円/W)及び導入費用回収に必要な期間(年)の関係でみよう。箕輪氏は「太陽光発電の場合、700円/Wで稼働率12%の場合、およそ17年程度でしょう。一方、熱電発電の場合は、お客様の事情にもよりますが、稼働率90%の場合、3000円/Wで10年、また1000円/Wで3年であればよろしいのではないでしょうか」と当面の目標を語る。

 今後の技術的な展望を行うと「まずは、より完成度の高い熱電発電デバイスを実現することですね。つまり無駄なく排熱を吸収して発電に活かすことです。また当社は現在600℃以上で利用できる素子が開発の柱になっていますが、それより低い温度でも効率よく発電可能な素子もめざしています。これは、東京理科大学との間で共同開発しており、材料はシリサイド系で300〜600℃の温度領域で特性を発揮できることをめざしています」と、今後の開発計画を語る。

 このように、昭和電線では今後、適用可能な温度領域の幅を拡大させ、高出力の熱電発電の実用化をめざし、発電効率や生産効率の向上、素子構造の検討による信頼性や耐久性の向上を果たし、工業炉や焼却炉への排熱発電や、さらに将来には自動車や太陽熱発電の応用にも応えていく。

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