ソリューション企業総覧 Web版
日立製作所

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環境ソリューション企業編

日米共同によるハワイでのスマートグリッド実証事業


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日立製作所 江村文敏室長/平岡貢一主任技師に聞く


 

ハワイの実情と取組み

 ハワイ州は離島という地理的条件もあって、米国50州の中でも原油依存度が群を抜いて高い。石油火力発電の比率は70%を超え、米国で2番目に高いアラスカ州と比較しても約6倍だ。さらに、自動車や飛行機などの燃料を加えると、消費エネルギーの90%を化石燃料に頼り続けてきている。原油高騰の煽りで電気料金が米国平均の3倍以上になったこともあるという。こうした課題を解決すべくハワイ州では、2030年までに州全体の電力需要のうち40%を再生可能エネルギーでまかなう目標を掲げ取組みを展開している。

 ハワイ在住のある方にきくと、「1ヶ月に車のガソリン代で3万円、自宅の電力料金で3万円、あわせて6万円もかかります。ですからスマートコミュニティ、スマートグリッドはぜひ進めてほしいです」と現状を語る。

 こうしたハワイの実情と取組みにあわせ、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「島嶼(とうしょ)域スマートグリッド実証事業」(Japan U.S. Island Grid Project)を公募、日立製作所は応募し受託、ハワイ州はじめマウイ郡、ハワイ電力/マウイ電力、ハワイ大学、米国国立研究所などと共同でマウイ島を中心に事業実証を行っている。表1には、マウイ島における今後の、再生可能エネルギーの導入比率を示す。

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地元との親和性をベースに推進

 日立製作所では、プロジェクト展開の上で、次の4つをキーファクタとしている。既存サービスを維持したまま段階的にシステム拡張・更新可能な「持続可能性」はじめ様々なシステムとの接続性や連携を可能とする「相互運用性」、ミッションクリティカルなシステム提供など「信頼性」、そしてシステム全体の情報資産保護など「セキュリティ」、そしてこれらを基軸に、まずは小規模な実証を通して基本モデルを構築し、地元既存の大規模システムとの親和性を維持しながら進めている。

 日立製作所 インフラシステム社 社会情報システム部 グループリーダー主任技師 平岡貢一氏(写真右)は「地元にはハワイ電力、マウイ電力があり、既にシステム構築されています。そのような環境に、上記ファクタに基づく当社ソリューションを組み込んでいくには、そうした既存システムと連携しながら拡張を考える必要があります」という。

EV大量普及、電力の安定供給、再生可能エネルギーが基本方針の実証事業

 実証の基本方針は、「再生可能エネルギーの最大利用」をはじめ「電力の安定供給」、「EV(Electric Vehicle:電気自動車)・PV(Photo–voltaics:太陽光発電)の大量普及対応」だ。

 この基本方針のもと具体的な取組みは、第一に、大量導入された再生可能エネルギーの効率的な利用があげられる。これは、アドバンスド・ロードシフトと呼ばれる技術を活用し、従来からある電力の需要予測に、再生可能エネルギーの発電予測を加えることで、エネルギーの高効率利用を実現させるというものである。第二が、再生可能エネルギー特有の急激な需給変動への対応である。例えば急に風が止んだ場合に、風力発電における生活の影響が出ないよう配慮しながら、各家庭の機器や、EV充電を直接制御し、電力の使用量を制御するのである。

 こうした第一の「効率」及び第二の「安定化・バランス」の取組みに、さらに次の4つを加え、全体で6つの取組みにより実証が行われることになる。

(1)「EV向け充電設備」。実証当初のEVは200 台であるが、将来のさらなる大量普及時にも対応可能な設備やシステムを確立する。(2)「サイバーセキュリティ」はM2Mと(Machine to Machine)ネットワーク・セキュリティ技術によりシステムの安全性を確保する。(3)「自律分散システム」は、全島一挙に大規模システムを構築するのではなく、後々の設備拡充時におけるスケーラビリティや投資回収を考慮すると、クラスタのような分散型で臨む方がリーズナブルな展開が可能となってくる。さらにμDMS(Distribution Management System)と呼ぶ装置(後述)により分散制御によるきめ細かいエネルギー制御を行うことができる。そして(4)「コミュニティとインフラの革新」では、ICT技術を駆使した情報制御基盤を導入すると、さまざまなデータを共有でき各種インタフェースによる接続性もよくなる。こうした基盤はエネルギー以外のサービスプラットフォームでの適用も考えられ、QOL(Quality of Life)向上を図ることができる。

具体的な実証規模及び実証場所

 実証の対象は、ボランティアによるマウイ全島におけるEV200台を対象とするEVECC(EV Energy Control Center)による管理と、加えて、リゾート地であるキヘイ地区の実際の居住者40軒も対象とする、送配電網と需要家への制御を主としている。

 図1に、具体的な実証システムの構成を示した。図から明らかなようにボランティアの各家庭ではHGW(ホーム・ゲート・ウェイ)を介して様々な装置が接続されている。ここでは、データセンタに設置されたサーバ・システムから各家庭のEV向けノーマルチャージャ(Normal Charger)とウオータヒータ(Water Heater)及びスマートPCS(Power Conditioning System)に対する制御が行われる。また、各家庭から収集したデータは、データセンタに集約する。そして、再生可能エネルギーの最大限利用をはじめ天候急変に伴う周波数変動の軽減、多数のPVやEVが接続された低圧系統の監視・制御が行われる。各家庭における実際の設置状況イメージを図2に示した。図3には、マウイ島内の要所に設置される充電ステーションのイメージを示した。これまでに5ステーションが設置済みで、次いで15ステーションが導入される。これら充電ステーションはEVECC管理下におかれている。利用者は、ICカードによりKIOSK(キオスク)端末からタッチ操作で容易に急速充電可能だ。

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図1 実証システムの構成

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図2 キヘイ地区の需要家ボランティアの設置状況

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図3 急速充電ステーションの構成

 

μDMSなど新技術が活躍

 こうした具体例に関して、日立製作所 社会イノベーション・プロジェクト本部 スマートシティプロジェクト本部 NBPD 室長 江村文敏氏(写真左)は次のように説明する。「ハワイではEVに加えてPVの導入も活発化、表1のように、2015年で30 MWが2020年には42 MWに、さらに2030年には112 MWと予想されます。この背景にはメガソーラよりもむしろ家庭における普及加速があげられます。PVが家庭に普及すると余った電力を売電したい要求が出てきますが、無造作に電力系統に連係することはできません。そこでエリアごとに、μDMSと呼ぶ新しい技術が有効になってきています」。これは、低圧変圧器の電圧や電力量モニタ及び家庭内の機器制御を行うための双方向通信機能をもち、家庭内のスマートPCSやホームゲートウェイと連携することで、PV出力やEV充電負荷制御が行えるというものだ(図1参照)。

 もう一方の、家庭に大量(200台)に入るであろうEV(24 kWh)は、バッテリがあるので余れば蓄電して家屋に供給可能となる(図2参照)。さらにバッテリは車用のみならず定置型として、複数台接続したシステム構成(24 kWh×n)も可能だ。ハワイでは風力発電で72 MW得られるが(表1)、夜間の余剰分は有効に使われていない。そこで、このバッテリ・システムで有効利用できる。

 江村氏は「数年前までスマートグリッドの議論は技術志向でしたが需要家サイドの許容性を考えました。Non–Technology分野の議論が重要となってきています。つまり、サプライチェーン・コントロールやバリュー・マネジメント、消費者行動分析による満足度向上などを前提に、地元の政府はじめ電力会社住民の理解を得ながらの取組みが大切です」と、プロジェクトへのステークホルダ寄与の重要性を強調する。「需要家にシステムやソリューションを使っていただく必要があり、行動形態やお金の流れ、もたらされるメリットが明確でなければ、スマートコミュニティの導入はないでしょう。その明確な雛形を作るのが実証の目的です」と、ますます社会に実践的に根付いてきたステージをアピールする。  

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